夜、野鳥たちはどこでどのように眠っているのだろう?ニワトリを飼い始めてから頻繁に想像を巡らすようになった。被食者にとって、天敵に狙われやすい闇夜を生き抜くのは大変なことだろうと思う。
我が家の11羽のチャボのメスたちは、夕刻、次々と鶏小屋に入り、一番高い場所にある部屋に飛び込む。夏に、アオダイショウが鶏小屋に侵入して止まり木で眠っていたトリを丸呑みにして以来、彼女たちは止まり木を避けるようになってしまった。床面積35×45㎝の箱は満員電車状態である。
ところが面白いことに、どんな世界にも自由を愛する者がいる。ある日、2羽のメスが鶏小屋の横のクワの木を寝ぐらにしていることに気づいた。「あんな狭いところ、ごめんだわ」という表情で澄ましているカップルの平和はしばらく続いたが、夜間にアライグマか何かに襲われたような物音がして、それ以来カップルの片割れは怖気付いて鶏小屋に戻った。
ひとりぼっちになってもクワの木で眠ることをやめないチャボを、私は『クワ子』と名付けた。こんな風に生きていけたらいいな、とクワ子を眺めているだけでワクワクし、なんとなくホッとするのだった(残念ながら、寒さが本格化する頃クワ子は満員電車の仲間入りをしてしまいました)。


服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 失踪事件から1年、おかげさまで今日も元気に出猟しています。
「ヤマト」 ♀ 猫ドアを新調、出入りを練習中。
「チャボたち」 チャボは増え過ぎ注意です!
服部家の人々
「ブンショウ」 娘の成人式イベントで結婚式の時作ったスーツを着ました。
「コユキ」 家族を美化して描く悪いクセがあります。
「シュウ」 外岩で遊ぶのが楽しい!
「ショウタロウ」 通勤用自転車を新調したいが、金がない。
「ゲンジロウ」 父とナツと、初めての雪山に行きました。
服部小雪
イラストレーター。登山家・服部文祥と3人の子供たちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの野性な毎日』(河出文庫)が発売中。