【vol.34】ウチダザリガニをいただきま~す

今回のテーマ:ウチダザリガニをいただきま~す

栃木県にあるサーキット場・ツインリンクもてぎというところで、昨年から働いている。54歳にして初めての会社員! 驚かれると思うが、自分が一番驚いている。そのサーキット場の中に、森で遊べるエリアがある。そこで、森のガイド的なことをやらせてもらっている。周辺は小さな山がいくつもあり、田んぼと雑木林の多い里山といったところである。高い山があるわけでもないが、とにかく生き物が豊富。中でも虫は様々な種類がいる。虫好きには素晴らしいところだ。休みの日には、当然散策に出かけるのだが、全く飽きる気がしない。

5月の後半に休みができたので、たまには川遊びでもしようと、すぐそばを流れる那珂川の上流へと出かけてみた。釣り具を持っていたが、川の感じでガサガサをして遊んだ。何種類もの魚が採れて、川もなかなか豊富だなと感心していた。何度か網を入れ、夢中になっていると、ちょっと変なザリガニの赤ちゃんが採れた。むむっ! これはどこかで見たザリガニだ。ウチダザリガニの赤ちゃんだ! ウチダザリガニはかなり昔に、食用にしようと摩周湖で繁殖させた北アメリカのザリガニ。その後、北海道の湖や川などで増え、今現在は本州の何ヶ所かの川で確認されている。特定外来生物に指定されているザリガニだ。20年くらい前に、このザリガニが福島の湖にいるという情報を入手し、探しに行ったことがある。当時、北海道にしかいないと思っていたので、情報を頼りに夢中で探した。小野川湖というところで50匹以上捕まえることができ、家でザリガニパーティーをした記憶がある。日本でのウチダザリガニの分布はよくわからんが、こんなところにいるとは……。赤ちゃんがいるということは、この川で繁殖しているに違いない。でかいのを捕まえて退治じゃないが、食ってやろう。

ガサガサを始めて30分。草の根元や石の隙間など、隠れていそうな場所に網を入れているが、小さいのが2匹。思ったほどいないのかな?と、川を遡りながら探っていると、小さな川が現れた。草はぼうぼう、いかにも怪しそうな川だ。

2、3回網を入れたところで、ついに大きなのが入った。20年前に手にして以来のウチダザリガニだ。俄然やる気が出て夢中で網を入れた。採れるは採れるはで、たった3、40分で食べごろサイズを20匹捕まえた。

さて、特定外来生物は移動させてはいけないので、食べるならここで食うか、殺して持ち帰るかだ。カニ・エビ類は殺すと鮮度が落ちる。それは避けたいので、ここで食べることにした。塩と水をコンビニで買い、河原で塩茹でにした。しっぽ以外はほとんど食べるところがないので、大きなザリガニでも一口サイズになる。小さいザリガニは唐揚げで丸ごといくのが美味しいのだが、今回は面倒なので、小さいのは申し訳ないが河原で死んでもらった。今回は、急な出来事だったので、用意をしていなかったのだが、事前に調べて道具や材料を持って行けば、もっと美味しく食べることができるだろう。アメリカザリガニもほぼ日本中に分布し、ものすごく増えていて、田んぼや生態系にも害が出ているのだが、特定外来種に指定されていないのは何故なんだろう? アメリカザリガニも美味しいので、両者をどんどん食べてもらいたい。

今回は、アメリカザリガニではない。ウチダザリガニだ。食用にアメリカから日本の北海道に持ち込まれ、繁殖に成功したザリガニ。今では本州でも自然繁殖している特定外来種。

川の中に入り込むので、バカ長を履く。草の茂ったところでも容赦無く探れる。バケツは水なしでもOK。生きたままでの移動は禁止だ。

共にアメリカから来た ザリガニ

ウチダザリガニ

アメリカ北西部原産。赤茶色の体に丸みのある赤いハサミ。腹部が広いのが特徴。腹側は青みを帯びる。

アメリカザリガニ

その昔、食用用にウシガエルをアメリカから入れてその餌として北アメリカから日本に入れたザリガニ。

オス・メスはここで見分ける

ザリガニは腹部でオス・メスがわかる。4番目の足下に頭の方に向かって硬い足のようなものが出ている。これがザリガニの生殖器。オスだ。

ガサガサ開始!

ザリガニは夜行性なので、日中は隠れている。隠れそうな場所・日の当たらないようなところを狙う。大小、次々と網に入りあっという間にバケツはいっぱい。

料理

1.沸騰させたお湯にひと握りの塩を入れ、ザリガニを次々に放り込む。10分も茹でればできあがり。赤くきれいに色づく。

2.川の生き物には寄生虫が付いていることもあるので、必ず沸騰させること。お湯を切り冷ましたらザリガニの塩ゆでの完成。

食べ方

1.食べる部分はシッポのみ。胴体とシッポを引っ張ってバラす。

2.シッポの殻を丁寧にむく。シッポのサイドからはがすと簡単にむける。

3.シッポ中央に、腸が一筋あるので、身を縦に割いてきれいに取り除いて完成。

4.大きなハサミは身が詰まっているので、面倒でなければバラして身を出す。硬いので、奥歯でかじり、少し砕くとバラしやすい。

5.ジャ~ン!きれいに爪の形をした身が取れた。ハサミの部分の身とシッポの身と食べ比べればわかるが、甘く美味しい。違う料理にも使える。

20匹を完食。おやつ代わりにはちょうどいい。持ち帰りじっくりと料理したいところだが移動は禁止。今度は凝った料理で食べたい。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。