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よい暮らしは金ではなく知恵と発想で手に入る
人間活動の初歩的道具だけで自然環境へ対応する術を学ぶ
サバイバルテクニックとしての焚火や寝床は、それ自体が目的なのではなく、あくまで目的を達成するための補助的な要素だ。ゆえに、寸分の狂いもなく大昔をトレースするような懐古主義的技法にこだわる必要もなく、オシャレキャンプの延長のような見栄えの良いブッシュクラフト風サイトを作る必要もない。つまるところ、サバイバルに必要なのは様々な環境に対応する知恵と発想だ。これさえ備わっていれば、最新のテントがあったらあったで、何もなかったらなかったで、その場に応じた最善策が見つかるはずなのだ。そして、当然この思考法は日々の暮らしにも役に立つ。ないものねだりをする前に、今あるもので最前を目指すようになる。
写真/降旗俊明
難しい工作やノットは一切ナシ! 誰でもできる寝床サンプル
美しく飾るより手速く作るがサバイバルのキーワード
例えば山間部で突然の悪天に見舞われ、緊急ビバークを強いられたとしよう。携行しているのは獲物系野遊びのための刃物一式にコッヘル、細引きの切れ端にライター、あとは上野の軍モノ屋で買った厚手のブランケットがザックに詰まっているくらいだ。が、幸運にも林道脇にはブルーシートが打ち捨てられていた。さて、そんな環境下で早急に身体を温めて、一夜を切り抜けるためにはどうすればよいか? 以下はその一案である。
ブルーシートと落ち枝さえあればできる超簡易的リーン・トゥ・シェルター
[ 超簡易野営地のキーポイント ]
焚火と差掛けシェルターの相性は緊急避難に最適
稜線上などの暴風地帯なら焚火を諦めてボディバック式を構築する案もあるが、平地なら最も簡単にできる差掛け式シェルターと焚火が最善のコンビ。差掛け式は熱を抱き込んでくれるので暖かい。
ポールもロープも必要のない超簡単工法
良い位置に木の幹の股や枝があれば、それに天部の骨組みとなる枝をかける。なければY字の枝を用意し、その股に骨組みを乗せて立木に立てかける。骨組みに重みがかかるほど、Y字の枝と骨組みが立木に食い込み、屈強になる。
ロープワークは最小限としてスピーディにシェルターを作る
シェルタールーフ部を張る細引きは、立木にはクローブヒッチ、石にはボウラインノットで結ぶ。どちらも大定番かつ簡単な結びなので。これをマスターしておくと大抵のシェルターは作れる。
緊急時のポッドハンガーはツタや笹などでも十分務まる
今回のようなビバーク時に複雑なポットハンガーを作るのは効率が悪い。シェルターの骨組みと同様の方法で固定した枝に、ツタや笹を巻きつければコッヘルを吊るすことができる。
雨天時の焚火は熱を溜め込むことに注力する
薪となる木枝が濡れている場合、焚火を熾す際は火口の熱を逃さないように木っ端で火口を覆うとよい。焚火を熾せたら周辺に濡れた薪を置き、乾かしておく。
細引きの切れ端があれば雨水もライフラインになる
差掛け式シェルター・ルーフ部に傾斜をつけて角に雨水を誘導し、ブルーシートに密着するよう工夫して結びつけた細引きを垂らせば、それを伝った雨水をコッヘルなどに貯めることができる。
※この記事は2017年10月発売『Fielder vol.36』に掲載されたものです。