【vol.46】にわとりのいる暮らし No.25

以前にも書いたが、我が家のニワトリたちは年老いて卵を産まない。飼いはじめる前に購入したハウツー本『ニワトリの絵本』には、卵を産まなくなっても、生ゴミの処理をさせたり、肥料(鶏糞)を得たりできるので、死ぬまで飼いましょう、と書いてあった。

それを読んだときは「卵を産まなくなったら食うに決まってるじゃん」と思っていたのだが、いざニワトリが年老いてくると、〆る踏ん切りがつかなかった。

一、時々は卵を産むから。

二、けっこう元気に歩き回っているから。

三、〆て食べても、旨くなかったから。

四、端的に情が移っているから。

以上が主な理由である。簡単にいえば、情を越えて食べたいと思うほど旨くない。

ヨリメンがほとんど歩かなくなって、傍目にも、痛みに耐えているようだったので、いっそのことひと思いに決着をつけてやろうと、何度か考えた。

野生環境であれば、飛ぶことも歩くこともできない(死臭も発している)鳥は、他の生き物のエサとして消えていく。だが人間社会に保護されたニワトリは、在宅医療老人と同じで消えられない。明日死ぬと思ってから一〇日、立たなくなってからも二日、生きていた。

元気に卵を産んでいた頃に比べれば、生命活動は一割以下かもしれない。そんな姿を見ていると、自分自身の生命活動が、もっとも元気だった頃の何割なのだろうかと考えさせられる。

別の群れに替えて、卵を産ませたいのだが、まだ生き残っているメス二羽と、キングを殺す踏ん切りがつかない。現代人の延びた寿命は、その何割かが介護に消える。そんな時代である。

服部家の鶏
「キング」 ♂ まだ元気に鳴いています。
「チビ」 ♀ ちょっと怖いお局様。

「プープ」 ♀ 人間を攻撃してくる&産んだ卵を喰う問題児。
「よりめん」 ♀ この世界から消えました。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ トレと柔軟で膝の痛みがぬけているような。
「コユキ」 ♀ 本連載を大幅に描きかえたエッセイ本が好評です。

「ショウタロウ」♂ 志が早くも折れ、ぐうたら大学生邁進中。
「ゲンジロウ」♂ 『プロメア』リアルにしびれました。
「シュウ」♀ いよいよ高校受験に突入。

「ナツ」♀ 山に行けず退屈しています。
「ヤマト」♀ 夏毛になって、見た目やせました。