サバイバルナイフ技法に欠かせないナイフは、野生派アウトドアマンのこだわりどころ。今回は世界中のカスタムナイフシーンで盛り上がりを見せる“ボウイナイフ”について、ブームの裏側に迫ってみることにしよう。
Photo/Toshiaki Furihata Text/Fielder
映画「クロコダイルダンディー」で主人公が愛用するボウイナイフ。これにまつわる話として、カスタムナイフ界の神と呼ばれる故R・W・ラブレスが映画製作陣から依頼を受け、ボウイナイフを作ったはいいものの結局使われることなくお蔵入りした……という噂があった。これまで彼が残した作品にボウイナイフは少なく、世間的には噂止まりだったのだが、実は日本にことの真相を知る人物がいた。ラブレスの真の後継者と言われる相田義人である。
ある時、彼が米リバーサイドにある師の工房を訪れた際、見慣れないボウイナイフのマスター(型)が置かれているのに気づいた。これについて師に聞いてみると、まさに冒頭の話が出てきたのである。師は終わった出来事に執着がなく、「いらないなら持って帰りたい」という弟子の申し出を許可。こうして今、相田義人の手元には師が手掛けたボウイナイフのマスターがあるのだ。
さて、相田氏はこれまでもこの一件について周囲に話していたものの、公的な証拠がなかったために話題にならなかったという。が、昨今米国で出版されたナイフ写真集「R・W・ラブレス ア・コレクターズ・ドリーム」にて件のボウイナイフが公表されたことにより、一気に相田氏が持つマスターに注目が集まったというのである。ここで紹介する1本は、ラブレスのマスターを基に相田氏がカスタムしたモデルだが、現在、御年70歳の老体にオリジナルモデルのバックオーダーがのしかかっているという。
※商品情報は本誌発売当時(2018年6月)のものです
YOSHIHITO AIDA BOWIE KNIFE
[相田義人・ボウイナイフ]
ボウイナイフの真骨頂と言えば、ブレード先端が鋭角に収束するクリップポイント。対象へ差し込み性が良く、獲物の止め刺しをはじめ、時に木材への穴あけなどにも有効である。
一般的にダブルヒルトを備えるボウイナイフだが、同モデルには深く切れ込んだシングルヒルトを採用。突き刺す際の安全性はそのまま、親指がブレードバックに当てやすく工作性が良い。
自身でもボウイナイフこそ最高のアウトドアナイフと唱っている相田氏は、現在、完全オリジナルとなるボウイナイフを構想中だ。写真の通り、デザインはもう仕上がっているので近々本誌でも完成品を報告できるだろう。