ジビエ肉の保存調理術
捕った獲物を保存する。山で作る保存食は塩分を保ち水分をいかに抜くかがポイントになる。
干し肉よりも香り豊かに旨味を閉じ込める方法が燻し干しだ。
方法は燻製と変わらないが水分を抜ききるまで燻すことで保存性が上がる。
保存のみならず食料としても最高だ。
旨味を増やす保存食は 焚火で作る
ブッシュクラフターなら焚火を操ることが多いはずだ。調理や暖房はもちろん、保存食を作るのにも欠かせない。キャンプ中に必ず焚火をするのであれば、その熱を余すことなく利用したいものだ。狩猟山行なら獲物は全て食料になるが、長期に渡る場合は焚火の熱を利用して肉をその場で加工して保存したい。僕は四肢全てを山中で燻製にすることもある。およそ3日間漬け込んで7日ほど燻し、それを食べながら自宅に持ち帰る。その肉を薄切りにして干すと、旨味と香りの強いジャーキーになる。常温で保存が効くのでとても便利だ。山の食料にもなるし、ピザやパスタの材料として自宅での調理にも使える。
肉の保存は冷凍すれば早いが、旨味は落ちていくだけだ。塩漬けや干し肉、燻製生ハムは、旨味を増幅させる保存方法なのだ。先人たちの知恵はいかに長く美味く保存するかを大切にしている。インフラが止まっても安定して食料が得られる。それはまさに知恵のなせる技だ。
ただ、イノシシやシカはいいのだが、クマの肉は脂の融点が低くこの方法には適していない。もちろん塩分を強くすれば問題ないが、そのままでは食べられないので別の保存法の方が有効だ。ちなみに、市販の肉でも同じように作ることができるので、自作の保存食に挑戦してもらいたい。無駄にすることなく食材を使いきることができるはずだ。焚火の香りと肉の豊かな香り、ハーブの爽やかな後味がやみつきになるだろう。
鹿肉のスモークジャキーの作り方
長期保存するなら塩は肉の重量の20%加える。すぐに消費するなら5%で十分だ。保存目的に応じて塩を加減する。焚火の熱で水分が飛ぶまで燻せば、出汁、主食と様々な使い方ができる究極の保存食ができあがる。もちろん調理中に吊るしながら食すこともできる。
今回の部位と調味料
鹿のもも肉400gと塩、胡椒、バジル、オレガノ、ローズマリー、ローリエ、ガーリック、ウィスキーが今回の材料だ。もも肉を選ぶ理由は脂身が少なく他の部位よりも保存性がいいからだ。脂身は水分が抜けるのに時間がかかる。
STEP.01
鹿肉にフォークで穴を開ける。穴を開けることでピックル液の浸透が早くなる。またできあがったジャーキーの歯切れも良くなる。
STEP.02
もも肉をチャック付きポリ袋に移し調味料を加える。長期保存用は肉の重量の20%塩を加える。1週間ほどで消費するなら5%から好みで調整する。塩の量で保存性は変わる。20%以上は塩辛くなるだけで保存性には影響しない。ハーブ類は好みでいい。ウィスキーは必須だ。
STEP.03
ピックル液が肉に馴染むようによく揉む。3時間ほど漬け置きするのだが、1時間に1度よく馴染むように揉むのがポイント。
STEP.04
3時間ほど漬けむと肉の色が少し変わる。これはアルコールによるもので傷んでいるわけではない。時間があれば一晩ほど漬け込む。
STEP.05
焚火の燃焼具合で高さを細かく調整できるように焚火燻製には自在鉤を使う。燻しが進むと肉が縮むので、その際に焚火との距離を保つのにも便利だ。フックやチェーンを持参しなくても森にあるもので燻製はできる。何ならトライポッドを作らなくても自在鉤があれば十分だ。
STEP.06
自在鉤に吊るす。鉤の部分は細身の枝を鋭く尖らせ肉に刺す。肉が縮むと穴が大きくなるので、ゆとりをもたせるために肉の端を残して刺すのがポイントだ。
STEP.07
3時間ほど燻して肉がかなり縮んできたら、肉を少し削いで熱の加わり方を確認する。初期段階ではドリップが出るが、ここではドリップも止まる。
STEP.08
5時間燻すと肉はかなり小さくなる。これでかなり水分が抜けるが完全に水分を抜くには2晩ほど吊るして燻す必要がある。
STEP.09
6時間ほどでほぼ半分が完成した状態になる。肉は吊るされた形に固まり表面は触ってもべたつかない。移動するならこのまま持ち歩いても雑菌の繁殖はしないので山行を続けられる。
完成!
焼くのではなく熱で調理し旨味を閉じ込める
時間をかけて熱を加えると肉の旨味が凝縮される。このように時間をかけるとアミノ酸量も増えるので旨味が強くなる。保存するのが目的だが、旨味も増やし栄養価が高くなるのは嬉しい。手間は掛かるが効率の良い保存方法といえるだろう。