【vol.43】森も冬支度 ツリーハウスも仕上げだ

山の天気は安定しない。自然と共に生きるにはそれに従うしかない。雨、寒冷前線、それらの影響をまともにくらう。粉雪が山から舞い降りる冬の森で“生きる”を作る。僕一人の山暮らしは日進月歩。あと少しでツリーハウスが出来上がる。そしてこの森で生活を作る。
写真・文/荒井裕介

冬が目の前に来た! ラストスパートだ

前号で次回は生活編をお送りすると書いたのに、連日の天候不順に振り回されここまでしかできなかった。

屋根を張り、窓を作り、間柱を入れる。これだけ聞くと簡単だが、屋根張りに落とし穴があった。ポリカのトタンが滑る。釘打ちで滑り台に乗っている状態になり釘が打てない。一旦下山してロープとハーネスを取りに行くと山は雨。もちろんツルツル地獄では撮影はできず、地味に屋根張りをする羽目に。なんとか屋根張りを終えて間柱、窓枠作りに漕ぎつけると、粉雪が舞い降りてきた。まだ落葉が残るままでは落ち葉がデッキに降り積もり、都度落ち葉掃きが必要になる。足場のない場所に透湿防水素材を張るのは一苦労だ。そんなこんなでなんとか外壁の鎧張りまで進んだ。外壁張りは単純だが、いかに材料を余らせないように張るかが難しい。しかしどんどん味のある仕上がりになるので楽しい作業だ。

連載の撮影中に進んだのはここまでだが、この原稿を書いている今は外壁も完成している。外壁に使う釘はパレットを分解した際に出た釘を再利用している。曲がった釘を叩いて伸ばし使うので外壁張りは時間が掛かったが、これも資源を余すことなく利用するための大事な仕事なのだ。本格的な冬将軍が来る前に、外壁と屋根が完成して一安心だ。

次回こそ生活編をお届けしたい。内装には色々なギミックを盛り込もうと企んでいるのでご期待いただければ幸いだ。原稿が終わったらまた山に向かう。

節約か?再利用か? 僕にとっては大切な資源

今回は“資源は無駄なく”をテーマにアイテムを紹介しよう。落ち葉に埋もれた道を掘り出す。廃材利用はきっちり無駄なく。落ち葉は土作りには欠かせない。釘は小屋作りには欠かせない。

折りたたむとコンパクトになる熊手。軽く丈夫で機能的。ザックに取り付けても邪魔にならない。男のアイテム的な熊手にちょっと興奮!

パレットをバラした際に出た釘の曲がりを修正しながら再利用。これだって立派な資源。大切に利用したい。安いけど無駄にしない。

森に棲むならアウトドアマンの夢を実現したい!?
ツリーハウスを作る[その3]

風と太陽、自然を感じるツリーハウスを作る。窓は北以外全ての方角に配置した南抜きの小屋だ。太陽で時間を知る。屋根にはポリカトタンを使った秘密がある。廃材とストック素材の活用で、ほぼタダでも快適な秘密基地を作れる。長く利用できるように機能素材も一部利用した。木の香りと森の香りが一度に楽しめる贅沢な手作りハウスだ。

外壁を作る

外壁は居住空間と自然を隔てる壁だが、自然の力を利用するための壁でもある。窓は暮らしと自然をつなぐ壁の穴。家にとって大切な機能だ。森に溶け込む工夫と長く暮らせる工夫を盛り込んで作る楽しい作業だ。

機能素材を利用して 快適な小屋作り

透湿防水シートを使うことで壁内の水分を機能的に調整し、木材の保護と耐久性を上げる。アウトドアではこのシートを利用したシェルターやグラウンドシートもある。

窓は自然からの 便りが届くポストだ

壁の中央に配置した窓は採光と換気を考えて配置したが、森の入り口が見渡せる窓になる。狐、猿、うさぎの通り道が見られる、森の目抜き通りに面した窓になる。季節を感じる窓だ。

窓枠も全て木組みで製作しているが、これが僕的には苦労した。一人作業では保持や水平出しが難しく、アタフタしたパーツなのだ。

屋根を作る

今回はある目的で野地板を廃して桟木と梁で構成し、ポリカのトタンを利用した。ポリカのトタンは屋根の下地になる。完成するまで秘密だがある天然素材で高断熱の屋根を作るための準備なのだ。台形のフレームに屋根を載せるのは以外と難しい。

立木を土台として利用しているツリーハウスでは、立木を避ける必要がある。また木は風によって動くので、屋根にその分の逃げを作らなければならない。

ブッシュクラフター 荒井裕介

12月に入ってからほとんど山の中にいる山岳写真家。家に帰るのか山に帰るのか? どちらが正解か最近不安になっている。ブッシュクラフトで越冬に挑戦しようと本気で準備中。狩猟期間なのでなんだかソワソワしとります。