だし
暑い日が続き、食欲も減退するそんな日々にピッタリな一品がある。山形の郷土料理「だし」がそれである。何しろ簡単。火も使わずに、切って混ぜるだけ。しかも旬の野菜で作るから、食材費も安くて、言うことなしだ。
夏野菜ベースのスピード漬け物
この原稿を書いているのは8月の初旬なのだが、いや~、暑いなあ!
僕の家は扇風機だけで、エアコンなるものがなく、玄関も窓も開けっ放して部屋に風を通すのだが、日中はあっというまに35度になる。この号が出る頃には少しは涼しくなっているのを期待したいが、今年の暑さは尋常じゃないからなあ。こう暑いと食欲も減退してしまい、さっぱりしたものしか食べたくなくなってしまう。今回はそんな時にピッタリな一品を紹介しよう!
山形の郷土料理で、その名は「だし」。ただし現地では「だし」とは発音せずに「だす」である。まあ、そんな話はさておき、この料理のいいところは火を使わずに簡単に作れて(切って混ぜるだけ)、食材は夏野菜、つまり旬のものだから安い。作った数時間後には食べられて、冷蔵で1週間程度は持つ。山形では1000軒の家に1000のレシピがあると言われているほど有名で、各家のこだわりやレシピが存在する。逆に言うと自分流でいいってことで、あまり気負わなくていいのもうれしい。応用範囲もとても広く、ご飯や冷や奴に乗せたり、素麺にかけたり、酒の肴としてそのまま食べてもいい。食感も味も涼やかだ。
今回は水でサッと洗ったご飯に、氷入りの水をかけ、その上に「だし」を乗せている。ガガッとかき込めば暑さが一気に吹き飛ぶ。
ベースになる食材は夏野菜だが、香りの強い大葉とミョウガは必須である。オクラやシシトウ、ピーマン、ニンジンなど各自好きな野菜を入れても全然かまわない。
キュウリもナスも薄切りにした後、4mm角くらいのサイズに細かく切る。精度とスピード、腕の見せ所だ。この手の作業には刃の薄いクッキングナイフが向いている。
ナスはアクが強く、切ったはしから黒くなってしまうので、細かく切ったものから水を張ったボウルに入れてアク抜きをする。その後しっかりと水切りをすることが肝心。
写真・文 鈴木アキラ
1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。
【材料】ナス、キュウリ、ミョウガ、大葉、ショウガ、昆布、醤油、酢、砂糖
【作り方】
❶キュウリとナスは薄切りにした後で3~4mm角に切る。
❷ナスはアクが強く、すぐ黒くなってしまうので、細かく切ったものから水を張ったボウルに入れてアク抜きをする。アク抜き後はしっかり水切りをする。
❸ミョウガ、大葉もみじん切りにする。
❹ショウガはすり下ろす。
❺昆布は細切りにする。ヌメリの出るガゴメ昆布がベストだが、なければほかのものでもかまわない。一度蒸してあるものの方が柔らかくなじみやすい。今回はあらかじめ切ってある細切りタイプを使用している。
❻ファスナー付きポリ袋に切った材料を入れて、材料の下4分の1が浸かる程度まで醤油を入れる。
❼酢と砂糖を少量加える。
❽時々全体をもむようにして混ぜつつ、味をなじませる。最短で2~3時間待てば食べられる。冷蔵で1週間程度保存が可能。食材の量のバランスは写真を参考にして欲しいが、各自のオリジナルで全然かまわない。僕は香味の強い野菜を多めにするのが好きだ。