数字だけの成長を求めた先に幸せな暮らしはあるのか?
いつの頃からかすっかり金の有無が幸せの尺度となってしまったが、いま一度、人間にとって本当に大切なものを思い浮かべてみれば答えは自明。
大都市で金絡みの茶番に一生を捧げるより、山の有り難みに触れながら、水や木々、そこに棲む動植物の恵みを得た方が動物としてよっぽど正しい。
何も「昔はよかった」と言っているわけではない。この当たり前な考えを、かつての人々が持っていた知恵をもって、まずは身近な裏山遊びに活かせばいいのだ。
どこぞの悪人のために口先だけで大枚が動いてしまう世の中だからこそ、「知恵と手足を使って得る」という感覚が生活の安心に繋がることだろう。
写真/降旗俊明 イラスト/スズキサトル
野営を面白くするヒントはかつての暮らしにあった
山とともにあったかつての人間生活を巡る裏山遊戯。まずはじめは我々野生派アウトドアマンの基本である“野営”にクローズアップしてみたい。というのも、我々が日頃実践しているULギアを巧みに使いこなす野営、西洋のブッシュクラフト技法を駆使した野営にとって、かつて田舎の小屋暮らしで用いられていた知恵や技術は非常に有効であり、いつもの寝床がもっと快適になるからである。
今の生活を捨てて「自給自足の小屋暮らし」を完璧に体得することは難しいが、少なくとも週末の野営でそれを体感することはできる。まずはこんなところから、山の恵みを実感していきたい。
小屋暮らしの生活様式に学ぶ"裏山ブッシュクラフト"
快適な野営環境を手に入れる
小屋暮らしの技術解説[基本編]
ここでは前項の野営地に用いた小屋暮らしの知恵と技術を具体的に解説する。どれも本誌が野営用に簡略化した手法であり、誰でも即導入できる“野営テクニック”として提案している。まずはいつもの野営のスパイスとして、楽しく実践してもらいたい。
技術その1 即席囲炉裏
室内でも安全に火が焚けるよう寒い地域で発展した囲炉裏。低い場所に集まる冷気の特性を用いて漏斗状に木灰をセットする手法は、床面がそのまま土となる野営地の焚火としても有効。そのまま焚火を続ければ本物の囲炉裏と同様に木灰が集まるので、火の持続力も向上していく。また、この木灰に加えて四方を丸太で囲むことにより、延焼の危険性を格段に軽減することができるのだ。
1.まずは火床を漏斗状にセットするため地面を耕していく。土台を柔らかくしておけば、後に串焼きなどを差して楽しむこともできる。
2.地面を耕したら、中心に向かって土台が低くなるよう火床を形作る。この際火床面積をそれなりに広くとった方が冷気の吸気効率も上がる。
3.囲炉裏風に火床を構築できたらスターファイヤー状に薪をセットして完成。焚火中に薪の炭化が進んだら、四方に飛び出た薪を押し込んでいくことで安定した火力を維持することができる。