【vol.35】対獲物ナイフ型録 ー野生食材ハンターなら持っておくべき基本装備ー

圧倒的な万能性を秘めたナイフの狩猟採集における一面にクローズアップ

あっという間に2017年度も折り返し地点に至り、目前には獲物系アウトドアマンたちの正月明け(猟期)が迫る。そんなわけで今回は巻頭特集「野生美食倶楽部」にも合わせて、獲物解体や野草採取を対象に次期候補ナイフを厳選した。

※商品情報は本誌発売当時(2017年8月)のものです

相田義人の新作にナイフの真髄を見た

「ブッシュクラフト」と銘打たれた相田義人の新作。その名の通り野生環境における様々な木工作に対応したモデルだが、その万能性にナイフの真髄を見た。

編集部にカスタムナイフ界の世界的巨匠・相田義人から連絡が入った。

「久しぶりにこれというナイフができた。フィールダーが求めているナイフはこれでしょ」

早速相田氏の工房を尋ねると、制作途中の新作「ブッシュクラフト」が棚にかかっている。ことの経緯は、氏と古くから交流のある顧客より「ブッシュクラフトで使えるナイフがほしい」というオーダーが入り、制作したのが同モデルだという。1本目は既にその顧客の手に渡り、いま目の前にぶら下がっているナイフは2本目だ。

同モデルの特徴はいくつかあるものの、最たるものはブレード形状と鋼材だ。俯瞰で見ると、そのフォルムは相田義人の師・ラブレスが残したウィルダネスがベースとなるが、一見してブレードが異なる。ウィルダネスは対象物への刺し込みの良さを追求したダブルグラインド(※1)であるのに対し、ブッシュクラフトはブレードの中間で加工を止め、対象物への刺し込みはそのままにタフ性能を確保。ブレードバックに刃厚5㎜をそのまま残すことで、木工時のバトニング(※2)など、ハードユースに対応している。一般的なブッシュクラフトナイフに多用されるスカンジグラインド(※3)で刃厚5㎜は非現実的だが、そこはエッジに向けてえぐれるように刃厚がつまるカスタムナイフの真骨頂・ホローグラインドの特性が活かされ、通常使用時の切れ味も犠牲にしていない。

それに合わせて、素材は日立金属のCV134を用いている。本来はレンガ形成用のスクレーパーなどに使われる超硬質な金属であり、日立金属側も繊細な造形が求められるカスタムナイフには不向きとしていたが、その特性は相田氏の技巧により克服されている。後に残ったのは、滅多なことで刃こぼれしないナイフ史上最高峰の強度だけだ。

こうして見ると、ブッシュクラフト向けに作られたナイフとはいえ、切る、削ぐ、突き刺す、割るなどの作業すべてを完璧にこなす性能が、同モデルには高次元で与えられている。「このナイフはブッシュクラフトだけじゃなくて、大型獣の解体からまな板上の作業まで、本当に何でもこなすナイフだよ」とは相田氏の言葉だが、なるほど、このカタチが人間の営みを根底から支えるナイフの真髄、万能性を生むのである。

※1 ブレードバックにもホローグラインド加工が施される形状。ホローグラインドとは、ブレードを凹状に削るグラインド法。
※2 ブレードバッグを木の棒などで叩いて、対象物に食い込ませてそのまま割り切る技法。
※3 ブレードを直線的に削るグラインド法。

こちらはインテグラル製法で作られた1本目のブッシュクラフト。ダブルグラインドで艶のある佇まいを魅せるラブレスのウィルダネスに比べて、こちらは質実剛健な無骨さが際立っている。獲物系アウトドアマンにも相応しい、まさに実用本位なフィールドナイフとなっている。

一本の鋼材から削り出すため、ヒルト部にも継ぎ目のない美しい仕上がりとなった。シースには2mのパラコードが備えられている。

「ブッシュクラフト」の特徴

1本目は顧客の要望により、一本の鋼材から削り出して作るダブルヒルト仕様のインテグラルモデルとなったが、こちらは定番のシングルヒルト・コンベンショナルモデル。オーダーはマトリックスアイダにて受付中だ。

刃厚5mm仕様ながらホローグラインドやテーパータングなどの技法で重量は抑えられ、ハンドリング性も◎。刃の研ぎやすさを考えて刃元にはチョイルが設けられるが、これがまな板上の作業で優れた使い勝手を発揮する。

鋼材には日立金属が誇る超硬質金属「CV134」を採用。焼き入れ後はHRC(ロックウェル硬さ)が70を超えるほどで、滅多なことでは刃こぼれしない。


 

タフ性能に直結した無骨な佇まいが魅力

大型獣向きモデル

大型獣の解体を想定して、ブレード長100mm超を選定の基準としたカテゴリー。解体作業向けのブレード形状やディテールを備えたモデルもあり、作業の大幅な効率化が図れる。

CONDOR
TWO RIVERS SKINNER

[コンドル・ツーリバーズスキナー]
お問い合わせ:レプマート ☎0974-22-5852

獲物系アウトドアマンに適した無骨なフィールドスタイル

丸みを帯びた短めのスキナーブレードを備え、大型獣の解体からブッシュクラフトまで、様々な作業に対応してくれる1本。無駄な装飾のない無骨なスタイルも魅力で、獲物系アウトドアマンに適している。ブレード長100mm。7580円(税抜)

ブレード上部には獲物への食い込みに優れたフォールスエッジが設けてあり、大型獣の解体もスムーズにこなせる。

フルタング構造で取り付けられた420HCステンレスブレード。ハンドル材には衝撃に強いウォールナットを採用する。

ウォールナットハンドルはヒルト状の造形を持ち、使用時のグリップ性および安全性が高められている。


 

COLDSTEEL
MASTER HUNTER SANMAI

[コールドスチール・マスターハンター サンマイ]
お問い合わせ:グローイング http://knifeshop.jp/

屈強なブレードを備えた実用本位なオールラウンダー

ステンレス三層鋼スチール「サンマイスチール」を採用した屈強なドロップポイントナイフ。クレイトンハンドルには細かなチェッカリングが施され、あらゆる環境で扱いやすい。ブレード長117mm。1万3315円(税抜)


 

Morakniv
Mora 2000

[モーラナイフ・モーラ2000]
お問い合わせ:アンプラージュインターナショナル☎072-728-2781

解体作業に最適な独特な刃の形状が特徴

先端に強いアールのついたブレードは、対象部を刃先で傷付けにくく解体作業に向いた1本。錆に強くハードに使えるステンレススチールを採用し、手入れが楽にできるのも嬉しい。ブレード長109mm。3800円(税抜)


 

G.SAKAI
SABI KNIFE 8 MAKIRI SPORTS

[ジーサカイ・サビナイフ8 マキリスポーツ]
お問い合わせ:ガーバー・サカイ☎0575-29-0311

あらゆるシーンで錆びないマルチパーパスな1本

耐食性に優れるH-1鋼材を用いた、あらゆるシーンで活用できるマルチパーパスモデル。刃厚2.5mmの大型ブレードは、大型獣の解体から調理までをこなす高バランスなシルエットを持つ。ブレード長130mm。1万800円(税抜)


 

SOG
WOODLINE

[ソグ・ウッドライン]
お問い合わせ:グローイング http://knifeshop.jp/

グリップに優れた美しいハンドルで大型獣の解体も確実にこなす

ポイントに向けてブレードが撫で上がるアップスウェプト形状が特徴的な1本。グリップ時に人差し指がしっかり固定されるボルスターや美しいカーブを描くウッドハンドルでグリップ感は上々。ブレード長122mm。6833円(税抜)


 

GERBER
HUNTING KNIFE WITH GUT HOOK

[ガーバー・ハンティングナイフ ウィズ ガットフック]
お問い合わせ:レプマート☎0974-22-5852

解体用ディテールを備えたハンティングナイフの定番

サビに強いハイカーボンステンレス素材を用いたガットフック付きブレードを備える大型獣向けモデル。ハンドル部も大柄で力強くグリップすることが可能だ。機能的なシースが備わる。ブレード長100mm。7580円(税抜)


 

VICTORINOX
HUNTING XT Grip

[ビクトリノックス・ハンティング XT グリップ]
お問い合わせ:ビクトリノックス・ジャパン☎03-3796-0951

狩猟者のために作られた獲物解体可能なマルチツール

メインブレードに加え、ガッティングブレードが装備されたハンター向けのマルチツール。耐久性が高く、滑りにくい仕様のディアルコンポーネント・ハンドルを採用。サムホール付きでグローブ装着時でも開閉しやすい。ブレード長111mm。7300円(税抜)