【vol.33】第2回 伝統保存食入門

バッケ味噌(フキ味噌)

今回は、春の山菜として知られる「バッケ(フキノトウ)」を使って、酒の肴にも、オニギリの具にも最高な「バッケ味噌」を作ります。春の息吹を封じ込めた大人向きの香りと味わいを、存分に楽しんでください。

新春の香りを味噌に封じ込める

バッケとは青森や秋田の方言でフキノトウ、つまりフキの新芽のことをさす。バッケは春を告げる山菜で、東北の人間は雪や春先の茶色く積もった枯れ葉の中から顔を出したバッケを見つけると「ああ、春だなあ」と思うのだ。フキは北海道から沖縄まで日本全国で自生するが、僕は沖縄でバッケを見かけたことがない(見落としてるだけかも)。
 
子供の頃はバッケ味噌をあまりおいしいとは思わなかった。ホロ苦いからだ。うまいと感じるようになったのは、やはり酒を飲むようになってからで、子供の頃はやはり子供舌だったんだなあと思う。  
 
フキはペタシテニン(別名フキノトキシン)というアルカロイド系成分を含んでいるから、フキノトウも花が咲いた状態のものはなるべく避けたほうがいい。またアク抜きの必要もある。フキノトウの調理では塩茹で程度で済むが、フキの茎を使った調理では木灰や重曹でのアク抜きが必要だ。
 
フキノトウの香りは強力で、バッケ味噌を食べた後のゲップは、まさにフキそのもののニオイがする。2度おいしいと言うべきだろう。
 
香りには深い記憶を思い出させる効果があるように思う。バッケ味噌を食べれば、普段は使わなくなってしまった津軽弁をふいに思い出す。「ままさかででけばめじゃ(ご飯に乗っけて食べればおいしいよ)」

【材料】フキノトウ、味噌、砂糖、サラダオイル、剥きクルミ(なくても可)、塩

【作り方】
❶フキノトウを水で洗って汚れを落とす。
❷塩を少量入れた水を沸騰させ、①を入れ、再沸騰してから20秒ほど茹でる。
❸絞って水気をしっかり切る。
❹細かく刻む。
❺フライパンを熱してサラダオイルを引き、④を加えて炒める。
❻味噌と砂糖を加えて、全体を混ぜ合わせながらさらに炒める。フキノトウと味噌の分量は同量程度。砂糖の量は味噌の半分程度か、もう少し少なめ。僕の好みは味噌の味が濃く、砂糖の甘さもある程度しっかりあるもの。味見しながら調整する。
❼火を止める前に粗みじん切りにした剥きクルミを加えて混ぜ合わせる。シンプルに行きたいならクルミはなしでもいい。少量の一味トウガラシを加えてもいい。
❽滅菌消毒した保存ビンに入れて、長期保存したいなら減圧密封する。
❾酒の肴にしてもいいし、オニギリの具にしても最高!

バッケはなるべく花の咲く前の、できれば固いつぼみのモノが望ましい。開いたり、茶色くなったモノは避ける。外が緑でも、中が茶色くなっていることがあるから注意すること。

塩を入れたお湯でサッと茹でる。塩が少な過ぎると色よくあがらないし、茹で過ぎるとペタペタになってしまうので注意。茹でたらすぐに、絞ってしっかり水を切る。

味噌は赤味噌の、できれば塩の強い味噌が向いている。減塩の味噌では保存効果が低い。塩が強く、味の濃い味噌でもバッケの香りは負けないくらいに強いから大丈夫。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。