【vol.30】にわとりのいる暮らし No.11

海外のまだそれほど都市化されていない地域がテレビに映ると、たいてい画面の奥にはニワトリが歩いていて、BGMのように雄鶏の鳴き声が聞こえてくる。

ニワトリが人間の暮らしに入り込んできたのは、数千年前だと推測されている。温暖な地域に暮らす人間にとって、ニワトリは数千年間ずっと、家の廻りをうろついている存在であり、日本でも数10年前までは生活の一部だったのではないだろうか。視界の隅に虫やゴミをついばむニワトリの姿があると本能的に落ち着く気がする。

ニワトリはもはや人間の遺伝子に組み込まれているくらいの存在なのに、その声をうるさいと嫌う人もいる。

朝、ウッドデッキに座って周辺の音を聞いていると、耳に入ってくるのはニワトリの声ではない。鳥の声ではカラス、ヒヨドリ、オナガの声がもっと多い。常に聞こえているのは発動機やモーターの音である。向かいのおじさんは律義なので、朝の通勤のバイク音は時計代わりになっている。宅配便が来たのもエンジン音でわかる。家から線路まで直線距離で四〇〇メートルほどだが、風向きに寄っては常に電車の音が聞こえている。ニワトリより人間の活動のほうが遥かにうるさいが、それらに文句を言う人はいない。

ただ、ニワトリの声にはファンもいて、落ち着くとか懐かしいとかいい声だとか言う人は結構いる。どちらかと言えばそっちが大多数だ。だが、必ず「うるさい」という人が存在し、社会は大多数の意見ではなく、一部の「文句言い」の意見を尊重する傾向にある。

卵や鶏肉が手に入らないのにニワトリの声を聞くのは損だ、ということなのかもしれない。なぜなら、文句を言う人も卵を持っていくと、納得するからである。

服部家の鶏
「キング」 ♂ オスのニワトリ、いつまでナツに勝てる?
パープル」 ♀ エサを食べるだけの老鶏。
「チビ」 ♀ エサを食べるだけの老鶏。

「プープ」 ♀ 気のいい中堅雌鶏。
「よりめん」 ♀ 裏山で一晩明かして朝帰り。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ いよいよ狩猟解禁。
「コユキ」 ♀ 単行本イラスト描き中。

「ショウタロウ」♂ 平凡な高校生活青春中。
「ゲンジロウ」♂「♪こっからが僕かも?♪」
「シュウ」♀犬、猫、テレビに夢中の小学6年生。  

「ナツ」♀ 北海道から来た雑種の犬。
「ヤマト」♀川越から来たクロネコ。