有象無象がひしめく有象無象がひしめく現場の銘品を見出す
本特集を読み進める上で重要な鍵となるのが、前項で服部文祥が書いた「数ある道具の中には、それがあるからこそ、身体能力を発揮できるというタイプの道具もある。(中略)生きていることを実感できる幸福な時間は、自力と効率と道具の絶妙なバランスの上に浮かび上がるしかない」という認識と思考、加えて巻末で亀山亮が書いた「GAFAのトップたちやイーロン・マスクがトランプの就任式に出席して祝う姿を見ると、(中略)デジタル世界にどっぷりと浸ってしまった自分たちが住んでいる世界を呪いたくなる。(中略)彼らに加担しないで生きていくにはどうすればいいのだろうか」という反感と疑問である。確かに目の前の仕事を片付けなければ来月を生きていけない現状にある我々に、両氏のような生き方を実践することは難しい。しかし、このような思いを頭の片隅にでも置いておけば、ぱっと見お得な“安物買い”、ぱっと見生活が楽になる“新し物買い”、ぱっと見世間から評価を得ている“流行り物買い”など、虚構の価値に踊らされた“銭失い”は最低限防げるはずである。頼れる野営道具=根本的に生存に欠かせない道具=防災道具を選ぶ上で定めるべき物差しは何か。ここからは価格でも広告露出度でもないいくつかの物差しを挙げて、真に意味のあるBEST BUYを探っていこう。
二大野営地野飲装備選SAMPLE HEAVY DUTY or LIGHT&FAST
現場で愛される道具を集めて最高の費用対効果を 実感する
いかに費用対効果の高い野営(防災)道具を見出すか。星の数ほど存在する商品をすべて手に入れて試せば確実だが、それでは初期費用が嵩んでしまい本末転倒だ。やはり最も手軽かつ有効な手段は、自身が求める野営スタイルを絞って、それを得意とする業界の商品を集めることだろう。ここでは代表的な二大野営スタイルを例に、それぞれ象徴的なアイテムを選出してみた。

プロ御用達のタフ性能と安心価格で快適に焚火を楽しむ一手
SAMPLE 01 産業用品を活かしたHD仕様
身近なところに隠れていた超タフな平面焚火台
仕事現場には“屈強な鉄板”を用いた商品が多い。焚火台として転用するなら排水管のフタとして使われる“角マス蓋”が適当だろう。240規格用のフタなら火床は300×300mm前後となるので十分使い物になる。焚火シートは溶接時に用いるスパッタシートで決まりだ。


POINT.01
水路のフタだけあって火床は完全な平面。車のタイヤに踏まれることも想定されているから強度だって抜群だ。このサイズで重量は2.4kgと、それほど重くないので携行時も苦にならない。

POINT.02
焚火を終えて角マス蓋が少し冷めたら、そのまま焚火シートとして敷いていたスパッタシートで包み、業務用の荷締めベルトを巻いて携行できる。ほんのり温かい座布団としても◎だ。

POINT.03
240型のマス蓋には裏面に240×240mmの穴にハマる足が付いている。これが一斗缶のフタにもピタリとハマるから、携行時はフタを足に被せておき、使用時に裏返してゲタとすれば地面〜火床の距離も稼げる。

縞鋼板桝蓋 (イズミ)
実勢価格 3000円
溶融亜鉛メッキ仕上/適合荷重T-2/29×29cm/2.4kg

カーボンシート(吉野)
実勢価格3000円
瞬間耐熱温度1350℃/JIS難燃性A種合格品/100×100cm/0.4kg
シェルターにも活かせる工場に欠かせない難燃製品
野営に使える産業用品の代名詞と言えばブルーシート。ここではそれに防炎効果を持たせた難燃シートを用いることで焚火耐性を高めた。より高い難燃性を持つ火花除けシート(溶接時に周辺設備を火花から守る商品)で焚火を覆えば、雨にも耐える万全な火床を構築できる。

POINT.01
難燃シートはブルーシートと同規格なので270×270cmを選択。特徴的なハトメ配置から標準的なアディロンダック型は張れないため、ロープを多用して変形アディロンダック+火花除け延長ルーフとした。

ターピー難燃シート (萩原工業)
実勢価格2000円JIS防炎1級適合品/270×270cm/0.69kg

火花除けシート (ユタカメイク)
実勢価格3800円
耐熱温度300℃/JIS難燃性A種合格品/100×100cm/0.8kg
POINT.02
配電線周りに使う“しばり紐”は、燃えてもダイオキシンが出ないビニロン製で非常に柔らかく耐候性も抜群。業務用のロープ止めはフック先端も地面に刺さるため屈強なアンカーとなる。

ロープ止めJ型 (モノタロウ)
実勢価格70円スチール/φ6×150mm/38g

ケーブルしばり紐 (トラスコ)
実勢価格2200円
ビニロン素材/φ4mm×50m/0.39kg
シュラフの代用となる産業用品にはブルーシートや工業用防水クレープ紙など様々あるが、これらは実用的でないため無理に使う必要はない。ただ、スリーピングマットに至ってはメカニックが使う分厚い作業用マットが最適だ。


POINT
作業用マットはその分厚さから折りたたむとちょうど良いチェア代わりにもなる。
作業用マット(モノタロウ)
実勢価格実勢価格4000円
EVAフォーム/1150×420×24mm/0.8kg
今回荷運び用のストレージに選んだのは、近所のホムセンでも気軽に購入できる工具ブランド「SK11」のウォーターバッグ(折りたたみバケツ)。実際に世の職人はこれに工具を入れて運ぶため、強度も十分に確保されている。


POINT
野営地に着いて荷物を出したら、焚火周りの安全対策として水を入れておけば完璧。
ウォーターバッグ(SK11)
実勢価格実勢価格1700円
完全防水EVA材/360×240×250mm/0.42kg