【vol.27】土手菜の王様アマナを食う!

今回のテーマ:土手菜の王様アマナを食う!

ユリ科の植物で葉も球根も食べられる。薬用にも利用されていて、薬効は喉の痛み滋養強壮などに効くようだ。根からと取れるデンプンはカタクリの根と同様でとても良質ないいデンプンが取れる。昔は何処の土手でも見つかったが、最近ではあまり見かけなくなった植物でもある。

奥山家では、小さい頃から春になると家族総出で草摘みをした。草を摘むというよりは、野原で遊び、青空の下でご飯を食べたりが楽しかった記憶がある。そんな経験からか、今でも草摘みは継続している。山菜と比べるとどこにでもある草なので、これといってうなるような美味しい物があるわけでもないが、毎年欠かさず出かけている。思い起こせば子どもの頃、空き地や川の土手にはこうした人たちが多くいた。ウメやサクラと共に、そんな風景が“春が来た!”と感じさせるものがあった。最近はそんな光景も少なくなり、本当に草摘みが好きな人しかしていないような気がする。ましてや、家族総出でなんてことはあり得ない感じだ。たわいもないことだけど、親から子へといろいろな外遊びを昔の人はこうした行事で、次の世代へと引き継いでいったんだと思う。それも時代の影響からか、無くなりつつあるのは寂しいと思う。

私は山菜に対し、家の周りで摘める草などを土手菜と呼んでいる。あくまでも私が呼んでいるだけなのだが、ものすごく気に入っている。ヨモギやノビル・カンゾウやスギナ(ツクシ)などなど。毒のない食べられるものでまだまだ沢山あるが、その中でも最近では少し珍しいアマナを紹介する。昔から食べられているが、河川の護岸工事などにより、最近では見当たらなくなり、今では貴重な存在なのだが、小さな河川などの土手にはまだ存在する。球根で増える草なので、1本でも見つけることができれば周りでも見つかる草だ。このアマナは球根から葉まで食べられ、名前の通りほんのりと甘く、灰汁の少ない非常に上品な土手菜だ。

このアマナは知らない人が探すのは困難だ。葉の形は、エノコログサのようなイネ科のようなシュッとした葉で、周りの同じような草と比べるとなんとなく淡い黄緑色だ。春の早い時期に小さなユリのような花が咲く。花の時期が非常に短いのでその時期を逃すとなかなか見つけられない。ましてや、周りの草が茂りだすと非常に困難になる。花の咲く時期に見つけていて覚えておくのが秘訣だ。花期は地方でずれはあるが、3月~せいぜい4月下旬まで。この本が発売されるときは花は見当たらないと思う。申し訳ない!だから花ではなく、葉で判断してもらいたい。似たような葉を持つ草に、毒のあるヒガンバナ・灰汁の強い食べられないツルボがあるので、要注意。山菜や土手菜、またキノコなど食べる目的で採ってくるときは、まず毒のある物を覚えておくといい。それと、何を採ったのかを知っておいて持ち帰ることだ。この時期になると間違えて持ち帰った山菜などで、中毒を起こしたり、死亡事故などのニュースを必ず見る。ちょっとでも自信のない時は絶対に口に入れないようにしてほしいものだ。

アマナを掘っているとノビルやヤブカンゾウなど他にも美味しい土手菜が見つかる。小さな玉ねぎの様なノビルは、昔から大人気。ヤブカンゾウは葉を食べるのだが、癖もなく歯ごたえがよく、ほんのりと甘く上品な味だ。大量に採るのではなく、春を味わう程度で収めておけば、また来年、再来年へと続けられる。美味しいからといって取り尽くすのではなく、先を考えた収穫を考えてほしい。またいろいろな植物を覚えるのも楽しさの一つ。春の土手菜摘みにぜひ挑戦してみてください。

春早々に、背丈の低い薄い紫色の花を付ける。花期が短い上に、花は完全に開かず下向きに咲く。これで開いているの?といった感じで目立たない。

葉と球根を採集するのでシャベルやスコップを用意する。根が深いため大きめシャベルがいいだろう。土いじりなので汚れを気にしないで掘れる服装を選ぶ。手や収穫物やシャベルなどを洗う水などを用意する。収穫物は日陰で保存して持ち帰る。

絶対に間違えるな!

右の写真と同様に右側2種類は毒。球根の大きさで区別すると危険なので形で覚える。アマナは新芽が脇から出ていて、球根もラッキョ型だ。

右からヒガンバナ・ツルボ・アマナ・ノビル。右の2種類は毒草。同じ時期に似ている葉なので要注意。アマナは淡い見取りなので区別がつく。

1.一見みんな同じような草。じっくり見てみると、いろいろな草が見つかる。色や形を良く見てアマナを探す。

2.周りの草に比べると淡い黄緑色。葉はやや柔らかく、中心に筋のように白いラインが入る。葉の先は尖る。

3.葉を見つけたら少し余裕を持って、広く丸くシャベルを入れる。根が深いので地中15cm以上で掘り起こす。

4.大きく掘った株の底側から土を崩すと球根が出てくる。いろいろな球根が出てきたら、全て観察して覚えておく。

次の芽が出ていてラッキョのような形をした球根。株によって大きさは違うが、形は同じ。春の味を味わう程度採集したら、掘った場所を埋めて帰る。基本だ!ビニール袋などに入れて日陰で保存しながら持ち帰る。

天ぷらで食う

持ち帰ったアマナを流し水に葉ごとさらしてきれいに洗う。球根部分には茶色の皮があるので、きれいにむいて取りのぞく。葉の部分は塩茹でにして、球根部は天ぷら粉につけ少し焦げるくらいに揚げて完成。

天ぷらで揚げた根は、シンプルに塩で食べ、塩茹でにした葉は、軽く醤油をかける。同じ場所で採集したノビルも添えて味噌で食べる。奥山家今年の春の味完成。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。