【vol.76】オヤビッチャをいただきま〜す

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今回のテーマ:オヤビッチャをいただきま〜す

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今回も貰い物。防波堤でアジを釣っていたお姉さんから捨てていたオヤビッチャとダツをもらった。これで簡単料理に挑戦。

11月に入ったというのにちっとも寒くない。11月上旬、陽だまりに咲くセンダングサやヤクシソウの花にはアブやハチ、タテハを始めとするチョウが何種類か来ている。越冬するチョウと息絶えるチョウとの境目の時期。カマキリ類もまだ花で待ち構えているが、賑やかだった虫の世界がおとなしくなる季節。カエルやヘビ類も姿を見かけなくなった。寂しくなるな~そして寒くなるんだな。

さて、今回はひょんなことから八丈島へ。前から気になっていたけど〝よしいくぞ〟って気にはならなかった島。伊豆七島の中でも2番目に遠く、東京からは286キロ離れている。緯度は四国の室戸半島あたりと同じになる。劇的な南の島じゃないことから、たぶん私は足が向かなかったんだと思う。

年間の平均気温は東京に比べると若干暖かく、18度。亜熱帯な島だ。歴史はよくわからないけど、おそらく海底噴火でできた島じゃないだろうか。島全体が溶岩石な感じで、海岸はもちろん、家の周りの壁など、古くからあるものは溶岩石でできている。

雨量が多く平均気温も高いので、植生が南の雰囲気。驚いたのはホームセンターや花屋さんでよく見るモンステラが雑草のように生えている。しかも売り物とは違いとんでもなく大きい。海岸ではタコノキやアダンもある。ヤシ類も多く、オオタニワタリが民家の庭にあるヤシに付いている。ここは本当に東京都かって感じだ。

今回ここへ来たのは少し時間ができたのと、この先残りの人生はちょっと旅的なことをしていこうと思っていたから。先に感想を言うと、すごく自分に合っている島だった。ただし、野生の動物(哺乳類)が、ネズミ類とイタチ・コウモリ、あとはイルカ・クジラ類しかいないのはすごく残念。漫画『がきデカ』で有名になったキョンは、飼育されているだけで千葉県のように野生化はしていなかった。雨量が多いからか、シダ類・苔類、カタツムリが多い。

この島に入ってきた生き物は鳥が運んできたものと、船や飛行機で入ってきたものが考えられる。生き物に対して在来種、外来種、移入種などとよく言うが、噴火でできた島でゼロからスタートした生態系は、人が運んでいない限り在来でいいんじゃないだろうか。生態系を考えると島の生き物はすごくモヤモヤする。

特に島国の日本では、明治期以前のものを自生種・野生種と言っている。この後もし何か生き物が増えたとしたらそれは国内移入種か外来種とされるのだろうが、気候が温暖化になっていくとしたら、生きていける、生きられなくなる生き物が各地で変わっていくと思う。それを全て移入だと片付けるのはどうかと思う。それも含めての自然であってほしいものだ。

観光で八丈島へ!いただきものでカルパッチョ!

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八丈島は瓢箪型の島で左右の端に三原山と八丈富士があり、山と山の間が街になっている。

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海岸の岩のほとんどが溶岩石。浜には2021年にニュースにもなった小笠原諸島付近の海底火山噴火で漂着した軽石の粒を発見。島には温泉が数カ所あり活火山なのがわかる。地熱発電所があったが廃止。再起動の計画があるようだ。

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暴風を受けないように家の周囲には緑が多く、景観も良い。

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島の路地は溶岩石で作った壁が多く、そこにはシダ類が生えている。

八丈島で見つけた生きもの

 

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ハチジョウトガリナナフシ

路肩の草地や家の周りで見つかる。謎の多いナナフシ。

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トゲナナフシ

太い体に棘がたくさんある。関東でも見つかるが同じ種なのか見た目は変わらない。

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アマミサソリモドキ

沖縄ではよく見たけど東京都にいるとは。臭い匂いを噴射する。移入種。

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ミナミヤモリ

島の建物、樹木など至る所で見つかる。夜、散歩すると相当数いることがわる。移入種。

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シモダマイマイ

伊豆半島などにいるミスジマイマイの亜種。この他にも多くのカタツムリがいる。

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アオウミガメ

どれくらいいるのかわからないが、覗いた防波堤や船着場の何カ所かで見られた。

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ムラサキオカヤドカリ

石の浜の海から離れた草地で小さいのがゴロゴロいた。他の種類もいる。

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オオタニワタリ

大きなシダ植物。岩や木などに根を張って街のあちこちで見られる。絶滅危惧種。

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モンステラ

島の民家のまわりなどジャングル状態。根っこに竹のような節があり芽を出す。

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タコノキ

この木はアダンにそっくりだけど葉と実で区別がつく。なんとここが北限らしい。

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最初アダンと思って見ていた実はタコノキの実だった。

オヤビッチャとダツのカルパッチョ

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捨てているようなので、くださいと言うと「食べんの!?」と驚かれたが、持ってけとくれた。

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関東で見るオヤビッチャと大きさが違いビックリ。

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小さいダツも貰った。この口で獲物を狩る。

魚を捌く

 

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1.水で魚を綺麗に洗ってから調理開始。鱗を引くのが面倒なのでそのまま頭を落とし内臓を取り除く。

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2.包丁で丁寧に三枚におろし、身を軽く洗う。宿の包丁は切れなかった。

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3.包丁を立てて身から皮を剥がす。包丁は動かさず皮を引っ張る。

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4.オヤビッチャ4匹とダツ1匹を下ろした。ダツは多少青臭さがある。刺身でつまみ食いしてみたがダツの方が甘みがあり美味しかった。

オイルを作る

 

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1.カルパッチョのソース作り。レモン汁、粗挽きコショウ、塩、オリーブオイルで味付けをする。分量は味を見ながら適量。

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2.ソースはオリーブオイルが混ざるように何度もかき混ぜる。酸っぱさが決め手になるのでレモン汁は味を見て調整。

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3.ツマの代わりの薄切り玉ねぎ。皿に玉ねぎを敷いて切り身を盛り付ける。

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完成!

最後にニンニクのスライスを散りばめソースをかけて完成。貰ってきた魚で酒のつまみができあがった。身に味があったので不味いわけがない。

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オヤビッチャはスズメダイの仲間。普段小さいのしか見ないけど美味しい魚だ!グー!

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日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。