今回のテーマ:野イチゴをいただきます
待ちに待った梅雨入りだ! 渓流釣りが好きな私は、梅雨の合間を見て岩魚と山女狙いの釣りに出る。水量が増え濁ると釣れると思い込んでいる。過去にとてもいい思いをしたことがあるからだ。そのことがずっと忘れられないでいる。昔はよく解禁日から渓流に繰り出していたのだが、最近は歳のせいかこの梅雨時にだけ出かけている。外遊びに色々と興味を持ち、あれやこれやとやっていると、渓流で丸1日釣りをする時間がもったいなく思えるからでもある。釣りをしていると集中しすぎて周りの自然を見なくなり、貴重な瞬間を見逃しているように思えるからだ。まぁ~老いたのだろう。
この時期、川に沿って林道を歩いていると、野イチゴに目が止まる。昔からよく摘んで食べていたのだが、それには何種類かある。釣れた魚を家に持って帰っても喜ばれないので、最近はもっぱらこの野イチゴを摘んで帰る。赤い色の野イチゴが2種類。黄色は1種類。里山からやや山間部まで見つかる。山菜と同じように季節ものなので、見つけると必ずその場で数粒食べ、あとは摘んで帰るようにしている。種類によって微妙に味が違い、私は黄色いモミジイチゴが一番好きだ。ほんの少しだけ酸っぱさがあり、程よく甘い味なのだ。成長の具合でも味はかなり違うので食べ比べてみるのもいい。生食が美味しくていいのだが、あまり多くは食べれないので、摘んで持ち帰りジャムにする。
林道沿いの脇に生えるトゲのある枝につぶつぶした実がついているのが野イチゴだ。低い位置に生えるクサイチゴ。目の高さくらいに生えるクマイチゴにニガイチゴ。垂れ下がるように黄色い実がつくのがモミジイチゴである。モミジイチゴに限っては葉の裏側に実をつけるので、普通に歩いていてもなかなか見つからない。垂れ下がる枝をスカートをめくるようにめくり上げて探すのだ。
こんな遊びを覚えると、釣れない釣りでも楽しくなる。春先は山菜、梅雨時は野イチゴ、そして秋には木の実。覚えておいて損はないのだ。
ジャム作りに挑戦!
ジャム作りと言ってもなんてことはない煮込むだけだ。難しくないので簡単に挑戦できる。しかし奥は深い。保存がきくように作るには砂糖を入れて甘くしないとならない。甘すぎるのも……と思い砂糖を入れずに作ると長期保存の効かないジャムに。結局何度も作り、自分流のジャム作りになる。
まずは、摘んできたイチゴを洗い流しながらゴミを取る。野イチゴは自然界の実なので当然虫も付く。煮てしまえば虫も死ぬが、気持ち的にいやなものなので洗う段階で虫チェックをする。後は鍋に入れて煮込んでいくのだが、野イチゴはほとんどが水分。実を潰さないようにしていても潰れてしまうので、ゆっくりヘラなどでかき混ぜ潰さないように混ぜる。
ぐつぐつ煮えてくると、アクが浮かび上がるので丁寧に取り除く。味を見ながら少しずつ砂糖を入れて、好みの味にしていく。水分がなくなる少し手前で火を止めれば、出来上がり。種がやたらと目立つが甘酸っぱいオリジナルのジャムの完成だ。今回は4種類を混ぜて作ったが、収穫の量次第では、一種類ずつ別々に作るとそれぞれの味の違いがわかる。
赤や黄色のバラ科のいろいろな種類の野イチゴ。梅雨のこの時期に実をつける。場所によって種類も違うが林道脇などでよく見つかる。甘酸っぱくどれも美味しい。
野イチゴ図鑑
そっくりに騙されるな!
モミジイチゴは歩いていてもなかなか見つけられない。黄色の実がチラッとでも見えたら垂れ下がるように伸びた枝を、スカートめくりのように下から上に持ち上げ探す。枝の多い木なので、一度にたくさん採ることができる。
低い位置に実をつけるクサイチゴと間違えて摘んでしまうのがこのヤブヘビイチゴとヘビイチゴ。実をよーく見るとつぶつぶ感が全く違う。毒ではないが食用には向かない無味。(写真はヤブヘビイチゴ)
ジャム作り
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。
里山からやや山奥で見つかる野イチゴ。
モミジイチゴ
黄色の実でモミジのような葉。枝が垂れ下がるよう伸び、実は葉の裏側につく。
クマイチゴ
2mくらいに育つ落葉低木。実に毛が生えているので他のイチゴと見分けがつく。
クサイチゴ
膝より低い木で、低い位置に実をつける。赤く大粒の実は食べ応えがある。