【vol.29】蜂の子をいただきます!

今回のテーマ:蜂の子をいただきます!

夏は暑くなくっちゃと思う方だが、こう連日猛暑が続くと流石に体にこたえる。外遊びも川や海など水に入れるところや、標高の高い涼しい場所を求めて出かけてしまう。遊んでいて気がついたのだが、なんとなく生き物の発生や成長が、今年は早いような気がする。8月の頭に、エンマコオロギが鳴き始めていたり、コンビニなどのライトにヤママユが飛んできていたり。思うところは虫や植物でいろいろあるのだが、このペースだとたとえ暑い日が9月いっぱいあったとしても、夏の生き物は早くに終わってしまうんじゃないかと季節のズレを感じている。日本には四季があるので、季節にあわせてその時期にいる生き物や遊びを楽しみたいものだ。

8月に入ってすぐに、友人からメールが来た。その内容は、玄関のすぐ脇にアシナガバチの巣を見つけたんだけど、子供もいるしちょっと怖いので退治に来てくれないかという内容だ。このようなメールや電話は昔からよく届いているので驚きはしないが、内心自分でできないものかといつも思う。最近では殺虫スプレーのパワーがすごく女の人でも退治できるようになってきた。時代の進化だ。

蜂の巣といえば、わたしのおふくろの田舎が長野県で、夏休みというと毎年必ず出かけ、年の近い従兄弟とよく蜂の巣を採って遊んだことを思い出す。長野県人は、虫などを食べていた文化があり、本来はクロスズメバチの幼虫を食べるのだが、従兄弟との遊びは近所の蜂の巣を突いて採って回った。採った蜂の子は釣りの餌にしたり、おやつ代わりに食べたものだ。そんな遊びを毎年夏にはしていたので(現在でもしている)、大人になっても蜂は、あまり怖くない。蜂によって性格が違うこともなんとなくわかっている。そんなこともあり、友人などに蜂の駆除を頼まれるのだ。

友人の家に行き蜂の巣を見せてもらうと、なんとなんと、とても小さな巣に10数匹ほどの蜂が巣についていた。アシナガバチだと言っていたのでもっと大きな巣を想像していた。この蜂はヒメホソアシナガバチで葉の裏などにも巣を作る種類でササバチとも呼ばれている種だ。普段から蜂を見ていない人との差を感じた。この小さなアシナガバチの種類は攻撃性があり、刺されると意外と痛く腫れもでる。蜂の巣は寝込みを襲撃すると、ほとんどの蜂が巣に戻ってきているので、全滅させることができる。この日も夜に襲撃をかけた。捕虫網で捕獲し、網の中で蜂を一匹づつ潰して殺す方法だ。巣が小さいのと蜂も少ないので、意外と簡単に駆除はできた。大事なのはこの時、巣を潰さないことだ。せっかくのチャンスなので、友人に蜂の子を食べてみないかと勧めたが、あっさり拒否られた。巣は小さいが意外と中身は詰まっていたので、私が家に持ち帰り食べることにした。蜂は種類によって幼虫に与える餌が違う。このアシナガバチ類は、小さな虫などを噛み砕き団子状にして幼虫与え育てる。また、ミツバチ類などは花の蜜を与えるので、幼虫を食べ比べると違いが出る。わたしはスズメバチやアシナガバチの幼虫の方が淡白で好きだ。刺されることもなく蜂の巣を採ることができた。興味があれば挑戦してみてください。

これがヒメホソアシナガバチの巣だ。蜂の全長は2cmちょっとと、とても小さい。巣もあまり大きくなく、木の葉などの裏に巣を作る。目立たないので、草刈りなどをしていて気付かずに近寄り刺されることの多い蜂だ。ササバチとも呼ばれている。

捕虫網と細く長い竹を用意する竹は蜂の巣の根元を切り離すのに使う。ライトは少し広く照らせるものがいい。刺されることもあるので長袖長ズボン。

蜂の巣の図解

ふたの付いている穴はサナギ部屋ふたのない部屋は幼虫

蜂の巣の採り方

蜂の種類で採り方は違ってくる。今回はアシナガバチの採り方だ。長い竹か棒・捕虫網を用意する。刺されることも想定して挑む。

1.まずは、巣の位置や大きさ・蜂の数などを下見する。失敗した時のことを考え走って逃げるルートも考える。寝込みを襲う蜂は夜には巣に戻ってきているので、全滅させたい時は夜に巣を落とす。

2.蜂の巣の下に捕虫網を構える。空いている手で竹を持ち、巣の根元を叩いて網へ落とす。蜂が騒ぐので落ち着いて網に巣が落ちたのを確認したら、網を折り返し中の蜂を網に閉じ込める。

3.巣のあった場所から少し離れ、蜂の巣にダメージを与えないように、網に入った蜂を足で踏み潰す。

蜂の子を丁寧に取り出す

1.ピンセットなどでていねいに幼虫とサナギを取り出す。

2.幼虫の大きさはばらつきがあるが、全て取り出す。

3.サナギ部屋はふたがされているので、手でふたを破いて取り出す。幼虫よりも柔らかいので慎重にピンセットでつまむ。

4.小さな巣なのにこんなに幼虫とサナギが取れた。秋の終わりころになると全てが生まれ育ち、成虫になってしまう。蜂の子を食べるには、一番幼虫の多い夏の終わりから秋にかけてが旬。

料理

1.オリーブオイルをフライパンに少量流し、中火で鷹の爪とニンニクのスライスを炒める。ニンニクの色が少し変わったところでニンニクを取り除く。

2.弱火にしてサナギと幼虫をオリーブオイルに絡むように炒める。

3.人それぞれではあるが、半生で食べるのであれば炒め加減を見て幼虫が白いうちに火を止める。サクサク感で食べるのであれば薄く焦げ目がつくまで炒める。

4.火を止めてから塩・コショウをサッとふって完成。少し焦げ目をつけサクサク感で味わう。淡白でピリッと辛く、つまみなどにぴったりの一品。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。