【vol.36】第4回 伝統保存食入門

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シソの実の醤油漬け

今回の食材は和風ハーブの代表「シソ」プチプチした食感が楽しい「シソの実」は、薬味や酒の肴に最適な秋の味覚だ。塩漬け、麹漬け、味噌漬けなど、さまざまな保存食化の方法があるが、今回は、その中でも最も簡単な「醤油漬け」の方法を紹介しよう。

気の利いた薬味に オニギリの具にも最適!

先日、仕事で大阪箕面市の止々呂美(とどろみ)に行ってきた。市町村合併で今は「村」ではなくなってしまったが、道路の脇には釣りのできる川が流れ、川のそばまで畑や棚田が続く、古き良き日本の村の姿をそのまま残す場所だった。朝市が開かれていて、ユズやクリなど地元の新鮮な食材がズラリと並んでいたが、その中で特に僕の目を引いたのが「シソの実」であった。昔は田舎の家では秋になると、庭中のシソの葉に実がついて「穂ジソ摘み」をしたものだと、朝市のオバアチャンが言っていた。シェラカップ2杯ほど入って1袋150円。摘む手間、選り分ける手間を考えるとタダのようなものだ。あるったけ買ってきた。
 
僕の故郷である青森の家でも、庭に赤シソが生えていたが、シソの実を集めて保存食を作るほどの量ではなかったように思う。 
 
さて、和風ハーブの代表ともいえるシソだが、その香りにもなっている精油成分は強い防腐作用と殺菌作用を持ち、最近話題となって青魚を敬遠する原因ともなっている線虫アニサキスに対しても殺虫効果があることがわかっている。青シソの葉や穂ジソを刺身の薬味にするのは古くからの日本人の知恵なのである。シソの名の由来も、古代中国でカニを食べて死にかけている人間に赤シソの紫の煮汁を飲ませて回復させたことから「紫蘇」と言うそうだ。

【材料】シソの実、醤油、みりん、砂糖、塩、タカノツメ(なくても可)

【作り方】
❶穂ジソからシソの実をほぐす。
❷水で洗ってホコリを落とした後、薄い塩水に数回浸しアク抜きをする。
❸沸騰したタップリのお湯に塩を混ぜ、シソの実をさっと茹でる。
❹ザルにあけ水気をしっかり切る。さらに乾いたフキンやキッチンペーパーで水分を拭き取る。
❺醤油500ccに対して、みりん100cc、砂糖大さじ3を加えて一煮立ちさせ、しばらくおいて冷ます。これが漬け汁。醤油、みりん、砂糖の配合は好みで変えても構わない。タカノツメや一味トウガラシ、千切りにしたショウガなどを加えてもいい。
❻保存ビンにシソの実を入れ、ヒタヒタになるくらいまで漬け汁を注ぎ、冷暗所で最低3日~1週間程度漬け込んで出来上がり。漬け汁にはシソの香りがしっかり付くので、その後もさまざまな料理のタレとして使うことができる。漬け汁を甘めにしてシソの実と一緒に煮詰めていくと、「醤油漬け」ではなく「シソの実の佃煮」になる。こちらもウマイ。

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写真は基本の素材だが、一味トウガラシやタカノツメ、千切りにしたショウガを加えてもいい。防腐効果をさらに高めることができ、味に深みも出る。

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少量の塩を混ぜたタップリのお湯で、洗ったシソの実をサッと茹でる。実を入れて再沸騰したらOK。茹で過ぎるとせっかくの香りが抜けてしまうので注意。

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保存ビンに入れたシソの実に、煮立てた後冷ました漬け汁を注ぐ。漬け汁の量はシソの実がヒタヒタになるくらい。漬け汁が少ない時には、漬け込む間に時々撹拌するといい。

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写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。