【vol.75】にわとりのいる暮らし No.54

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アオダイショウは人家の周辺や林に住む褐色がかったオリーブ色の大型ヘビである。毒は持たず、性格はおとなしい。

12年前に庭に建てた鶏小屋が、老朽化であちこちに隙間が出来てしまったのを放っておいたら、夜中にアオダイショウが現れるようになった。

鶏の悲鳴が聞こえて駆けつけると、ヘビが鶏に体を巻き付けてギュウギュウと締め上げつつ、鶏の首根っこにかぶりついているという『地球ドラマチック』のような衝撃映像を目の当たりにした。

文祥がすぐにヘビを捕獲し、小屋の隙間を直してからリリース。私はてっきり夫がヘビを食べてしまうのだろうと思ったのだがアオダイショウはネズミを食べてくれるので庭にいるほうが良いのだと言う。

この夏、(たぶん)去年リリースしたヘビが、ひと回り大きくなって鶏を襲いに来た。文祥は山に行っており不在。私と娘のシュウが駆けつけると、ヘビの口からヒナの黄色い両脚が飛び出していた。パニック状態で虫網をヘビの上にかぶせてレンガを重りに置く。情けないことにそれがせいいっぱいの対処だった。

容器を取りに走っている間にヘビは網から這い出し胃をパンパンに膨らませた姿で去っていった。

呑みこんだヒナをすっかり消化したころ、ヘビが次の獲物を求めて現れた。

「私、捕まえてみる!」

シュウが決意したように走っていき、どうにかヘビを取り押さえて梅酒用のビンに収めた。娘の生き生きした誇らしげな表情に、父親の血が流れているんだなあと思った。

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服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 小蕗は涼しくて快適、横浜は暑くて辛いです。
「ヤマト」 ♀ 暑い中、縁側の下でずっと寝ています。
「チャボたち」 現在、オス2羽、メンドリ4羽、ヒナ9羽の大所帯です。

服部家の人々
「ブンショウ」 仕事に山にスケジュールが過密な夏です。
「コユキ」 9月の初個展に向けて準備中。
「シュウ」 大学で山登りを始めました。今月は白馬岳へ。
「ショウタロウ」 最近、ボルダリングが楽しいです。
「ゲンジロウ」 夏休みはカヌレと包丁収納箱を手作り。

服部小雪

イラストレーター。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。インスタグラムを始めました。
yamatonatsu1109