嘘八百の共同体に援助を求めるより自分の力を高めたい
我々人類が長年築き上げてきた文明を真っ向否定するのは間違いだが、昨今の日本を鑑みると、インフラや上位の共同体(国家、地方自治体etc)に頼り切りな家畜状態は危険だ。4つのプレートの均衡により海洋の真ん中に隆起する島国・日本は、地震や台風の脅威にさらされる世界でも有数の災害国家。直近の大地震では、いくら先進国を自負しても自然の脅威には勝てないことを改めて思い知らされたはずだ。有事の際、政府でさえ「命を守る最善の行動をしてください」と、最後は国民の生存を個々人の力に委ねていることからも明らかだろう。ゆえに現代であっても、電気・ガス・水道が使えず、食料供給や生活必需品も絶たれ、寒い夜に耐える原始状態は誰の身にも起こり得る。果たしてその時に札束や電子決済端末は役に立つのだろうか? 答えは明白だ。それらが意味をなすのは文明の中にあってのことで、組織的な救助が届くまでの間は自身に備わった“食べて寝る”知恵と技術こそ金。資本主義社会では金持ちが成功者とされるが、一度自然状態に放り出されれば、日頃野山を駆けている遊び人こそ成功者だ。
今週末は”そこにあるもの“で命を繋いでみる!?
ホーボー野営再考
胡散臭い世の中から 自ら飛び出した人間がいる
19世紀末〜20世紀初頭のアメリカで、働きながら“方々”を渡り歩いた労働者を“ホーボー”という。西部に住む先住民を強制移住させて広げた農地、それを受けて発展した鉄道、世界的な農業機械の躍進などが重なり、膨大に収穫された農作物は供給過多で価格が暴落。生産性の向上は熟練労働者の需要も減少させ、同時期に流入した1800万人もの移民と相まって、労働者の生活環境は厳しくなる一方だったのだ。ゆえに家すら持たないホーボーたちも悲惨な一生を送った……かというと、そうでもないらしい。
アウトドア好きなアメリカ人のブログによく登場する、子供の頃に見たホーボーの姿。町から町へ渡り歩くために線路沿いを拠点としていた彼らは、子供心に少し怖い存在ながら、身の回りにあるものを器用に使って案外気楽に生活していたようだ。どちらかと言えば“大恐慌に放り出された”というより、年々資本家に富と権力が集まる胡散臭い米国社会から“自ら飛び出した”という方が正しいのかもしれない。その証拠にボブ・ディランやポール・サイモンといったフォークシンガー、アレン・ギンズバーグに代表されるビート派詩人などなど、ホーボーの世界観は後に資本主義社会のカウンターカルチャーとなり、反体制的音楽〜文学界隈に多大な影響を及ぼしているのだ。
というわけで、いまいち信用がおけない社会に住む我々も、改めてホーボーの生き方に触れてみると良い気づきがあるかもしれない。消費せず、家にあるもの、拾ったものを使って遊ぶことは、そのまま脱・家畜的自立思考に繋がるのだ。
写真/降旗俊明
鉄器はイチから作れない。ならば空き缶を拾うまで
アウトドアマンの根源にあるホーボー体験
子供の頃にホーボーの暮らしを目の当たりにしたアメリカ人は、大人になるとガチ系アウトドアマンになっていることが多い。足りなければ買うのではなく、身の回りにあるものから作る。そんな思考が優れたサバイバル能力を養うのだ。
最初歩にして最強の現地調達クラフトテクニック
想像以上の実力を備える
ホーボーの定番工作
市販品ばりに使えるホーボーの英知
ホーボーたちの日常生活で最も重宝されていたのが空き缶による工作。鉄器は人ひとりがそう簡単に作り出せるものではないので、彼らは周辺に落ちている空き缶を加工し、多様な生活必需品をこしらえていたのだ。ここでは日頃の野遊びにも使える代表的なホーボーギアをピックアップしているが、子供騙しと侮るなかれ。
<CRAFT.01>空き缶ストーブ
野営に欠かせない安定した火力を生む調理に最適なストーブ。いわゆるトマト缶サイズの容器を用いると、木端がちょうど収まるので使い勝手がいい。コンパクトな火床は熱をよく溜め込み、火熾しから調理に使える火力となるまでの時間も短い。
制作時間3分で安定した調理用火力を手に入れる
<HOW TO MAKE>
作り方は側面にナイフでH型を横にした切れ込みを入れて、観音開きに缶を開くだけと簡単。開口部はできるだけ小さく作りたい。
<CRAFT.02>空き缶焚火台
一点に火力を集中させるストーブでは周囲を暖めることはできないので、それなりに大きな薪を置ける皿型焚火台も有用性は高い。空き缶を放射状に広げるだけでも使えるが、火床部にアルミホイルを敷くと焚き付け用の小枝や熾が落ちないのでおすすめ。
暖房用途で使える便利な皿型火床
<HOW TO MAKE>
作り方は空き缶の側面を7〜8枚の花びら状に広げるだけ。缶の縁は固くナイフでは切れないため、指で何回も折り曲げて金属疲労で切る。