家の中の快適性をそのままフィールドに持ち出す野営は、自然の景観を楽しむという観光でしかない。我々が求める野営とは、最小限の道具と最大限の発想を駆使して、人間本来の力をその手に取り戻すための体験(遊び)である。
Photo/Toshiaki Furihata Text/Fielder
NISAKU FIELD OUTDOOR KNIFE
[仁作・フィールド アウトドアナイフ]
米国の西部開拓期より今に続くナイフ。身の回りにある物だけで未開拓地に文明をもたらすフロンティアスピリットのもと、調理から木工まで、これ1本でなんでもこなせる万能性がこの道具の根幹である。
一方、地理的に古くから安住の地が構築され、物事にじっくりと時間をかけてきた日本の環境においては、刃物は課せられた仕事によって細分化し、ある作業に特出した能力が与えられてきた。それゆえ日本にはナイフに当たる単語がなく、あえて挙げるなら最小限の装備で山に篭らなければいけないマタギが使用した剣鉈などが、これに通じるだろう。
さて、時は巡って現代。物に侵された我々の中では、もっとシンプルに生きたいという願望が着々と育っている。断捨離という言葉に象徴されるように、持ち物は最小限、多少不便でも想像力で乗り越えたいのだ。前出の先人とまでは言わないが、道具ひとつで様々な状況に対応できるスタイルこそ格好いい。
というわけで今回選んだのは、まさに日本発祥のナイフと言える逸品。その特徴的な造形を見てもわかるが、切る、削ぐ、叩く、掘ると、様々な状況に対応できる万能性が魅力だ。ちなみに同アイテムを製造する「仁作(新潟県燕市)」では“掘る=ジャパニーズ・サバイバル”と掲げているが、確かに屈強な片刃を備える鉈をベースにセレーションやガットフックを取り入れ、さらにはそれをスコップとしてしまう発想は日本ならではだろう。
※商品情報は本誌発売当時(2017年8月)のものです。
1No.830 MIYAMATOU
[深山刀]
全体焼入れ製で鉈のように使える頑丈な3mmの刀身が仁作アウトドアナイフの特徴。長く平面状の刃で藪漕ぎにも対応する深山刀は野営に最適。研ぎやすさを考慮し、刃は直線で構成。2660円(税抜)
鋭利な波刃加工を施し、ロープや植物の根、枝などを楽々と切断することができる。
刀身全体が湾曲した形状に加工されており、シャベルのように土面を掘れる仕様だ。
2No.801 YAMAKATANA S
[山刀S]
波刃と直刃で構成された使い勝手の良い1本。鋭利な先端と頑丈な厚刀身で、深く根の張った地面でも掘り進められる。野営はもちろん、山菜掘りや庭作業などにも対応する。3800円(税抜)
深山刀と同様に全体が湾曲したシャベル状になっている。掘った部分の深さを測れる目盛り付き。
片側は波刃、一方は直刃で用途によって使い分け可能。鏡面仕上げにより泥土汚れで生じる錆を軽減。
3No.811 RIKUKATANA S
[陸刀S]
剣鉈型の刀身と両刃で藪払いや薪割りなど万能に使えるモデル。一体整形で仕上げたグリップは堅牢で、縦横方向に力を入れやすい。狩猟時のナイフとしても使える。3800円(税抜)
枝を切断できる波刃を配すことで、アウトドアでの汎用性が格段に高まる。
獲物の皮を剥ぐ際に使えるガットフックを装備。紐を切るなどの作業にも便利だ。
4No.821 MIZUKATANA S
[水刀S]
高硬度のステンレス素材DSR-1K6を使用したナイフ。貝などの岩に張り付いたものの採取やコマセの粉砕に便利な形状で、水辺で便利に使えるモデル。3900円(税抜)
刃先は岩に張り付いた貝類などを剥ぎ取ることができるチゼルのような形状。
ロープや蔦などの切断や布類の引き裂きに使えるガットフック付き。波刃も装備。