【vol.73】ハードに使うならフルタング

自分の思いに偽りなく答えてくれるタフな相棒が求められている

ちょっと前まで、ナイフはガチなアウトドアマンを象徴するアイテムだった。長らく日本で主流だったキャンプスタイルは自然の風景や音に楽しみを見出す環境重視なもので、そこに求められる道具も“屋外で快適に過ごせる性能”が重要だった。大多数にとって、自然とは多忙な毎日を忘れられる憩いの場であって、ナイフ1本で知恵と技術を試すような場ではなかったのだ。

それが昨今はどうだ。何の疑いもなく経済の繁栄を求めて働き倒す日本人は少なくなり、今ではただ働くだけの日常というものに疑問が呈されている。低迷を続ける日本への諦め半分、そんな停滞のおかげでシステムの一部ではない自分自身の生き方について、考えを巡らせる余裕ができたのかもしれない。

ゆえに日本のキャンプスタイルにも変化が生じた。というより、いつの時代も野遊びに興じているガチ勢の思考様式が一般化した。自然とは嘘に溢れた毎日から逃れられる真実の場であって、肩書きだけで脱税がまかり通る場ではないのだ。当然そこに求められる道具は“自分の思いに偽りなく答えてくれるタフ性能”が重要だ。

※商品情報は本誌発売当時(2024年3月)のものです

<MORAKNIV>GARBERG STANDARD (S)

[モーラナイフ・ガーバーグ スタンダード(S)]

厚さ3.2mm、スウェーデン製ステンレス鋼のブレードを備えたフルタングナイフ。グリップエンド側から叩き込むことで太い枝や丸太も切断可能だ。人工工学に基づいた樽型形状のグリップには、堅牢なポリアミド素材を採用している。1万1000円(税込)

問アンプラージュインターナショナル☎072-728-2781

クサビ形のスカンジグラインドを施したブレードは刃持ちがよくタフに扱える。

ブレードの背とグリップエンド部は直角にグラインドされ、ファイヤースターターでの火熾しが捗る。

<GEAR AID>BALTA COMPACT HATCHET

[ギアエイド・バルタ コンパクトハチェット]

鋼材に耐食性や耐摩耗性に優れるステンレス鋼を用いた、剛性の高いフルタング構造のハチェット。グリップには滑りにくい素材を採用し、力の逃げを回避する。全長24.1cm、重量691g(カバー込み)と携行性にも優れる。9900円(税込)

問モンベル・カスタマー・サービス ☎06-6536-5740

グリップ端部から突出した鋼材はフック状のペグ抜きに加工されている。

ブレードの背部はペグを打ち込むハンマーとして使える仕様。バトニングにも便利な設計だ。

<LOGOS>BUSH CRAFT FULLTANG NATA

[ロゴス・ブッシュクラフト フルタング・ナタ]

鍛冶屋トヨクニ」とロゴスの共同開発で生まれた1丁。ナタに最適な硬度に焼き入れを施した5.5mm厚のステンレス鋼と、バトニングに耐えるフルタング構造でタフに使い込める。薪が真っ直ぐに割れ、利き手を選ばない両刃を採用する。1万9800円(税込)

問ロゴスコーポレーション ☎︎0120-654-219

レードのフィンガーチョイルに人差し指をかけるように構えればフェザースティック作成などの細かな作業がしやすくなる。

グリップには軽量かつ耐久性に優れた素材G10を採用。

多少の重さも許される 刃物界最強の構造

エントリーグレードの刃物に多いのが、ブレードの付け根から先が窄まり、ハンドルに差し込まれているブラインドタング。ここで着目するフルタングはブレードの鋼材がそのままハンドル末端まで伸びる構造で、重量は増すものの衝撃や捻れに対して抜群の強度を発揮する。ナイフ1本で何でもこなしたいのなら最善の選択肢と言えるだろう。