【vol.39】カンゾウをいただきま~す

今回のテーマ:カンゾウをいただきま~す

桜も終わり、山では木々が芽吹き始め、山菜の季節がやって来た。特に寒さが続いた地方では、待ちに待った春なので、多くの人が山へと繰り出す。山菜というと、ちょっとした山に出かけないと見つからないが、今回紹介するのは、そこら辺、家の周りで見つかる「土手菜」だ。土手菜とは、私が名付けた言葉で、土手に生える食べられる草を指している。山で採る山菜に対し土手で摘む土手菜というわけだ。

文字どおり土手で見つけるのだが、特に郊外に出なくても、近くの川の土手や田んぼの土手で探せば見つけられる種類だ。土手菜の代表は、スギナ(ツクシ)・ヨモギ・ギシギシ・ノビル・アマナ・カンゾウなど。中でも、カンゾウはアクも臭みもなく食べやすく食べ方にもバリエーションができ、あきない。カンゾウにはヤブカンゾウとノカンゾウがあり、ヤブカンゾウは花が八重咲きで花以外は、ほぼ同じだ。伸びきらないと違いがわからない。どちらもユリ科でワスレグサ属。両者とも食べられる。食用になる部分は、春は若葉だが、夏の花の蕾も美味しいのだ。早春から葉が伸び始めるのだが、いつでもいいやと思っていると、摘みどきを逃し伸びきってしまうので摘めるときに摘むのがいい。摘み方は出来るだけ幅のある大きな葉で高さのないものを選ぶが、特に硬くもないので、多少伸びていても美味しく食べられる。土手菜摘みで大事なことは、「掘ったら埋める」「犬の散歩コースでもあるのでフンに注意する」「来年も頂くので、必要以上に摘まない」である。

摘むのはいたって簡単で、地面ギリギリのところをカッターナイフで全体を切り落とす。1つの株が重なり合うように生えるので、バラバラにならないように摘んで行く。今回はパスタの具として使うので多くはいらないが、いろいろな料理に挑戦するために少し多く持ち帰った。家では、祖父母の時代から春になるといろいろな土手菜を摘んでは食べて来ているが、子供の頃から、食べやすい草だなと思っていた。よく食卓に出ていた食べ方は、さっと茹でて酢味噌和えと胡麻味噌和えだった。どれも美味しく、歯ごたえのキュッキュッとした感触が忘れられない。最近では、卵に混ぜてオムレツにしてみたり、中華料理の炒め物に混ぜたりしている。

今までいろいろな山菜や土手菜を食べてきているが、本当のことを言うと、クセの強い山菜は苦手で、一口程度であれば食べられるのだが、多くはあまり食べられない。そこで最近は少し工夫をすることで、さらに美味しく食べられることに挑戦している。例えばフキノトウ。ものすごくクセが強く普通に食べたらえぐみが強く子供たちには全く人気がないが、茹でてすぐ冷水にさらすだけで、えぐみが少し抜け胡桃味噌と調味料で苦味を消してフキ味噌を作ることに成功した。フキらしさの味も残し子供でも食べられるようにできあがった。本誌が発売される頃は、おそらくカンゾウは伸びきっていると思うが、柔らかい部分や、山間部などで探して、カンゾウを食べてみてほしい。また、毒のない植物であれば口にすることができるので、いろいろな草を食べてみて、自分なりのお気に入りを作って春の野山で遊んでほしい。季節ものなので、春を食べる程度でね。

ノカンゾウ。土手や田んぼの畦など、水辺のあるところでよく見かける。ユリ科でワスレナグサ属の食べられる野草。花期は6月から8月。

カンゾウは柔らかいので特に採集道具は要らないが、綺麗に摘むにはカッターナイフなどがあると便利。摘んだ葉を入れる袋もあると良いだろう。

ノビル

ヒガンバナ科ネギ属。ヒゲのような淡い黄緑色の葉で、群生していて目立つ。ニラの様なネギの様な味で人気が高く葉も球根も食べられる。

スギナ(ツクシ)

シダ植物の仲間でトクサ科のトクサ属。春先に花の部分(ツクシ)が伸び、終わる頃に葉が伸びてくる。葉はどんどん増えるので畑では嫌われ者だ。

ギシギシ

タデ科の多年草。若い葉はぬるぬるした袋状のものに包まれている。その状態のものを摘み天ぷらやおひたしで食す。似た種にスイバがある。

ヨモギ

キク科でヨモギ属の多年草。白っぽい葉でわかりやすい。お餅に混ぜたり、お茶にしたり、若葉の時期は人気が高い。日本のハーブ的存在だ。

採取

群生しているカンゾウのいい部分だけを採取する。できるだけ背丈が短く、葉の幅の広いものを選ぶ。根元ギリギリのところを切り落とす。

葉が交互に伸び、下の葉の色が変わっていたら葉を落とし、新鮮な色の葉だけを持ち帰る。カッターナイフで簡単に摘むことができる。

料理

1.材料は、ニンニク1片・鷹の爪1本・摘んできた新鮮なカンゾウ軽く一握り。これを使ってパスタに挑む。

2.摘んできたカンゾウを流し水で満遍なく洗う。生えてる場所が場所なので、丁寧にゴミや余計な草などを取り除く。

3.鍋に水を入れ、沸騰させたらさっと茹でる。葉の色が全体に淡く変化するくらい。茹で上げたカンゾウを水で冷ます。

4.水から上げたカンゾウを、握って水気を落とす。一口サイズ大に包丁でカットする。

5.フライパンに水を入れ、沸騰したらパスタ麺と塩大さじ1杯を入れ茹で上げる。茹で加減は好みに合わせる。茹で汁は、後で使うのでカップに移しておく。

6.パスタを茹でている間に、別のフライパンにオリーブオイルを引き、スライスしたニンニクと鷹の爪を炒め取り除く。そのまま、カットしたカンゾウ を軽く炒め味を付ける。

7.カンゾウを炒めたフライパンに、茹で上がったパスタと茹で汁をコップ3分の1入れて混ぜ合わせて完成。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。