【vol.71】酷道342号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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沿道の魅力も多い
携帯の電波も入る? 酷道
岩手県一関市~秋田県横手市

秋田県横手市を起点に岩手県を経由し、宮城県登米市までを結んでいる国道342号の秋田・岩手県境付近に酷道区間が存在する。酷道の魅力もさることながら、沿道の魅力も非常に大きい。

一関市街から磐井川に沿って西に進むと、右手に道の駅・厳美渓が見えてくる。このあたりは渓谷が美しいのだが、普通の観光地なので割愛する。その厳美渓の脇には、サハラガラスパークというガラスのテーマパークがあり、園内全てに昭和感が漂っている。普通の観光地では満足できない方にお勧めしたい場所だ。

さらに西進し、山あい深くなってきたところで、左手にポキっと折れて落ちてしまっている橋が目に入った。異様な光景に思わずUターンして引き返すと、見学するスポットが設けられていた。

これは、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震によって落橋した国道342号の祭畤大橋だった。震災を後世に伝えるため、災害遺構として保存されている。国道342号の旧橋梁なので、酷道探索の際にはぜひ立ち寄ってほしい。ちなみに、近くには初代祭畤橋の遺構もあり、現橋も含めると、3世代の祭畤橋が楽しめる。

祭畤大橋からさらに進むと、ついにセンターラインが消え、いよいよ酷道区間が始まった。酷道区間に入って間もなく〝この地点はケイタイ電話の通話が可能です〟との看板が掲げられていた。前号(Vol.70)で紹介した酷道401号の〝携帯電話圏外〟の看板とは対照的だ。これはありがたいと思ってスマホを確認したが、無情にも私のスマホは圏外を示している。

酷道区間はそう長くはないが、標高をグングン上げてゆく。あいにくの雨模様だったが、おかげで真っ白い霧か雲に包まれ、幻想的な酷道風景となった。

酷道区間を13キロ走ると、秋田との県境に到達。県境付近は須川高原温泉となっており、こんな標高の高い峠に立派な温泉旅館が建っていて驚かされる。この先は2車線道路となり、峠道ではあるものの、快適に走ることができる。

酷道区間はここまでだが、この先にも見どころがあった。峠を下ってゆくと、超大規模な工事現場が見えてくる。2026年度の完成を目指している、成瀬ダムの建設現場だ。国道342号からも見ることができる。ダムの関連工事として国道が付け替えられ、酷道が消滅してしまうことも多いが、ダムのような大規模な現場は見ていて飽きない。

酷道を走って何が楽しいかというと、酷道そのものも当然ながら、沿道の魅力も大きい。そんなことを再認識するドライブとなった。

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祭畤大橋の災害遺構は国道のルーツでもあり必見。

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昭和感漂いワクワクするガラスパークサハラ。

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成瀬ダムの建設現場。ダムは酷道の宿敵ともいえるが、見ていて飽きない。

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なんて親切な……と思ったものの、小さく「機種により受信に差があります」と書かれている。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/