【vol.70】ハマグリを いただきま~す

今回のテーマ:ハマグリを いただきま~す

お店で売られているハマグリに比べるとかなり小ぶりだが、3cm以上であれば採ってもいいとのことで、ハマグリ拾いに挑戦してきた。

今年の春は気象の変化が大きく、早く春が始まったりで私の生き物観察も慌ただしく、思うようにいかないまま終わってしまった。まぁそれが自然のいいところでもあるのだが。

毎年通っていた潮干狩りも今年は行けず、諦めていたところに台風2号が日本列島にやってきた。台風の去った海辺へ、何か落ちてないかとビーチコーミングに出掛けた。私は、流木や人工物などを拾いながら海岸をひたすら歩くのが好きだ。骨などを拾うとテンションがめちゃくちゃ上がる。かなり歩いたところで人がちらほら見えた。同業者か?と思い声をかけると、ハマグリを拾っているという。この周辺は春先からハマグリ拾いで有名な浜のようで、毎日のように拾っている人や、1日で200以上採れたという人もいるそうだ。話しかけたお兄さんに探し方を聞くと、いたって簡単。波打ち際を歩きハマグリを見つけたら拾うだけ。ポイントは同じ場所でも波が来るたびに砂が動き変わるので、波打ち際を何度も往復して探すといいそうだ。砂を掘る潮干狩りと比べてかなり楽な方法だ。

簡単に拾えるだろうと思って、早速やってみた。しかし、見つけた貝のほとんどが空っぽ。その貝には小さな穴があいていて中身がない。これはツメタガイにやられた跡だ。しかもそんな個体がめちゃくちゃ多い。ツメタガイは二枚貝に穴をあけて中身を食べてしまう巻き貝で、落ちているハマグリの80%くらいはこいつにやられているようだ。恐るべしツメタガイ。拾ったハマグリの閉じた貝の隙間に爪を入れ、開こうとしても開かないものだけを集める。

しばらく拾っていてわかったのだが、ここまで海水が来たというラインより陸側で、見捨てられたハマグリが意外と多く拾えた。波を被りながらズボンをビチャビチャに濡らして探していたのに何だか悔しい。波打ち際の砂にはフジノハナガイという小さな白い二枚貝が、波が引くと同時に砂に潜る姿が見られる。この貝は小さいが味は濃くもなく薄くもない繊細な味で汁物にはバッチリだ。他には、採ると密猟になってしまうホッキガイもちらほら見つけた。見よう見まねでハマグリ拾いをして2時間ほどで40個。あまり大きくはないが散歩途中で拾えたのは嬉しい収穫だ。

ハマグリといえば焼き。網の上に載せてコンロか炭火で焼き、口が開いたら醤油をさす食べ方が私は好きだ。それも海辺でやりたいところだ。しかし、今回は手ぶらで道具は何もない。残念だけど持ち帰って調理することにした。

海で採取した貝は砂抜きが面倒だ。できれば移動中にでも吐かせたいところだ。今回は何も用意していなかったので、コンビニの袋を二重にして海水とハマグリをロックアイスと一緒に入れて、水が漏れないように思いっきり縛り、吊り下げて車で持ち帰った。海水を入れて持ち帰るときは水温に気をつける。1匹が死ぬとたちまち水質が悪化し、全滅してしまうことがあるから要注意。潮干狩りは管理されていないところでもできるが、採ってはいけない貝などかなり複雑なので、漁協に電話して確認するのがいい。怒られたり捕まったりはテンションが下がるので……。

※貝類の多くは漁業権の対象となっているため、漁業組合に確認のうえ、許可されている場所でルールを守って採取すること。

散歩途中で棚ぼた! ハマグリが拾えた!

ビーチコーミングで浜を歩いていたら、波打ち際でハマグリを拾っている人に遭遇。見よう見まねでハマグリゲット。

親切に教えてくれた名人。暇があればここへくるらしい。名人が言うには波がくるごとに砂浜から現れるので同じ場所を何度も探すこと。

名人の教えであっと言う間に10個。約500mを何往復したことか。その後、波を被りながらズボンを濡らし、1時間で20個以上採れた。

波はいつも均等ではなく強弱を繰り返している。強い波は貝殻も含めいろいろなものを砂中から浮き上がらせる。80%くらいがカラだけどね。

危険生物 アカエイ

若い頃はそんなに見なかったが、ここ最近非常に目立つ存在になったアカエイ。毒針から出る毒はタンパク毒でかなり強い。高温で成分が弱まる。

貝に穴をあけるツメタガイ

海岸で貝殻を拾うとやたらと目につく小さな穴のあいた貝。犯人はツメタガイだ (写真の右側)。今回拾った貝の80%にこの穴があいていた。恐るべし。

密猟だぞ! ホッキガイ

県の指定でこの場所でのホッキガイ採集は禁止されている。貝の多くは特別に設けた場所以外では勝手に採集できないのが現状だ。漁業権で厳しく取り締まっているのだ。

ハマグリのクリーム煮を作る

 

採れたてのハマグリ。40個ゲットした。いろいろな調理法があり人気が高いハマグリだが、今回はクリーム煮に挑戦する。

1.ハマグリをザルに入れ、海水を入れたボウルに4~5時間つけておき砂抜きをする。下のボウルに砂が溜まる。

2.砂抜きをしている時に水管が出ているか、生きているかもチェックする。死んでいるものはこの時取り除く。

3.砂抜きをしたハマグリの貝殻部分をブラシなどを使って綺麗に洗う。

4.一緒に煮込む材料。ニンジン、タマネギ、シメジ、パセリ。シメジ以外はみじん切りで。他に牛乳と白ワイン、バター1かけを用意。

5.ハマグリをフライパンに入れる。ハマグリの上から用意した材料とバター1かけ、白ワイン2分の1カップを入れて蓋をして中火にかける。

6.ハマグリの口があくまで蒸し焼きにする。口のあいていないハマグリは死んでいたものなので取り除く。

7.牛乳(生クリームでも良い)を1カップ入れて中火で沸騰させ火を止める。

8.沸騰したらアクを取り除き、味を見ながらお好みで塩、コショウを入れて味を調える。

完成!

香りにパセリをひとつまみ入れたらハマグリがたっぷり入ったクリーム煮の完成。味は文句なし。そもそもハマグリはそのままでも味があり美味い。味が濃いのでパスタにもあう。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。