春、ふたたび小蕗(服部文祥の猟師小屋)で、小さな「山の学校」が開かれた。集まったのは七人の小学生。近くに住んでいる子もいれば、何時間もかけて遠くからやってきた子もいる。薄暗い林道を、カラフルな服装の子供たちが、列をなして登って行く。今回初めて参加した私は、ちょうど、自分の子供が大人になり家を出ていったタイミングだったこともあって、過ぎ去った時代に逆戻りしたような懐かしい感覚に陥った。
「皆さん、山の学校は、授業はありません。自分で考えて行動してください。刃物を使っている人の近くで騒がないこと。あと、一人でどっか行かないでね」と文祥(ニックネーム=ギョーザ番長)からあいさつ。早速、みんなでタケノコ掘りに行くが、子供たちは一、二本収穫すると、満足して別のことを始める。「何だよ、もう飽きたのかよ~」自由にやってくれ、とは言ったものの、子供たちの働きが悪いとギョーザ番長はガッカリしている。
小川で遊んだり、池のオタマジャクシをのぞいたり、時間がゆったりと流れた。高学年の子は、竹を細工して道具を作ったり、猟師さんに差し入れてもらった鹿の後脚を見て「焼き肉にしよう!」と精肉したり、見ていて頼もしい。
さて、子供が七人、大人が四人の大所帯になると、食事づくりが忙しい。野原でタケノコやノビルなどの食材を採ったら、どう調理するか決め、薪を集めて、お湯を沸かして、材料を切っている間に米を水に浸して、日没までにやるべきことがたくさんある。子供たちの存在もあり、私の炊事魂にメラメラと火が灯った。生きることは、食べること。かまどの前で煙に燻されながら炊事に明け暮れ、全身で生きているな、と感じた三日間だった。
服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 都会に戻ってくると、食べ物にいやしくなっています。
「ヤマト」 ♀ ずっしり重たい黒猫。
「チャボたち」 大所帯になってしまいました。
服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 小蕗での畑の作業が忙しいです。
「コユキ」 ♀ チャボのせいで毎朝早起き。
「ショウタロウ」♂ 朝の満員電車が苦行です。
「ゲンジロウ」♂ 調理学校で修行中。刃物の研ぎ具合が気になるように。
「シュウ」♀ 勉強で忙しく毎日があっという間。
服部小雪
イラストレーター。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。インスタグラムを始めました。yamatonatsu1109