【vol.70】第38回 伝統保存食入門

ミョウガの茎の味噌漬け

薬味野菜で人気のミョウガ。一般に出荷されている蕾の部分より非常に安価で買えるのが茎の部分。ぬか漬けも美味しいけれど、今回は味噌とみりんのペーストにしばらく漬け込んだ。酒がヤバいくらいに進む、進む。

忘れっぽくはならないよ

日本のハーブの中でシソと共に人気のあるのが、このミョウガ。独特な香りとシャクシャクとしたハリのある食感で僕も大好きだ。主に食用とされるのは蕾の部分だが、その下の比較的柔らかい茎の部分も安価で出荷されている。今回使っているのはこの茎の部分だ。なにしろ、同じ値段で蕾の部分の10倍以上入っているのだ。ミョウガ好きなら、これを見逃す手はないだろう。

「ミョウガを食べると、もの忘れがひどくなる」という説があるが、この話の元はこういうことらしい。釈迦の弟子でメチャクチャ忘れっぽい人がいて、お経どころか自分の名前も忘れてしまうほどだった。その人の墓に生えたあまり見たことのない植物、これがミョウガだったという話。原因と結果が逆になったニワトリと卵の話のようだが、実際にミョウガを食べて忘れっぽくなるというエビデンスはないらしい。それどころか、ミョウガに含まれる独特の香り成分でもあるα–ピネンには頭をすっきりさせて集中力がアップする効果があるというから「忘れっぽくなる」のとは完全に逆と言える。また血液の循環をよくする効果や食欲増進(夏バテ予防)の効果もあるというから、安心して食べていただきたい。

ちなみにミョウガを食用として栽培しているのはなぜか日本だけらしく、英名もジャパニーズジンジャーという。

【材料】
ミョウガの茎シェラカップ1杯分、味噌大さじ4、砂糖大さじ2、みりん大さじ2、塩小さじ2

【作り方】
❶ミョウガの茎に軽く塩を振り、1時間程度置いておく(ミョウガの蕾で作る時には縦半分に切ってから作るといい)。
❷味噌、砂糖、みりんを混ぜ合わせて味噌ダレを作っておく(少量のタカノツメを加えて甘辛くしてもいい)。
❸①のミョウガをサッと湯通しする。茹ですぎないように注意すること。
❹しっかり水気を切ってからザルに広げて1時間程度風に当て表面の水分を完全に飛ばす。
❺④を②の味噌ダレに混ぜ合わせジップロックなどの密閉容器に入れて最低1~2日寝かせる。食べる時には味噌を拭き取る必要はない。冷やし中華の具に加えるのもいいし、ワカメやメカブと和えても美味い。味噌とミョウガをそのままお湯で煮立てれば即席のミョウガの味噌汁の出来上がり。ミョウガの味噌汁にはカツオブシを加えるとなおいい。

茎の部分は蕾の部分と比べると比較にならないくらい安い。蕾より多少固いかもしれないが、薬味として刻んでしまうのなら問題ないし、味噌漬けにするとシンナリするので多少固いくらいの方がちょうどいい。

ミョウガの茎を沸騰させたお湯でサッとゆがく。茹ですぎると肝心の香りが抜けてしまうので注意すること。ザルに載せたミョウガの上から湯をかける方法でもいい。

ザルに載せて軽く乾燥させる。表面の水分をしっかり切った方が味噌が染み込みやすいから。乾燥前にサラダスピナーで水気を飛ばしておくのもいい。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。