【vol.70】酷道401号

ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

分断区間だけじゃない
思い出深い酷道
福島県南会津郡南会津町〜福島県会津若松市

国道401号は、福島県会津若松市を起点に群馬県沼田市までを結ぶ総延長190キロ余りの一般国道だ。地図を眺めてまず気になるのが、分断区間だ。福島県の檜枝岐村から群馬県の片品村までの間には23キロに及ぶ未開通区間が存在する。この分断区間にあるのが、尾瀬国立公園だ。

2007年に尾瀬が国立公園になったことで、この区間に車道を建設することは不可能となった。そのため、将来にわたって分断区間が解消されることは無いだろう。

それでは、酷道区間がどこにあるのかというと、分断区間よりも北側にある。起点である会津若松市から昭和村を経て南会津町に至る間に、2つの峠が存在する。生活に欠かせないルートであるにも関わらず、今のところ酷道の状態となっている。

私は終点側から北上する形で、酷道区間を目指した。分断区間の北側では国道352号との重複区間となるが、352号も酷道として名高い。この辺りは酷道の方こと言っても過言ではないだろう。

352号と別れると、今後は289号との重複区間となる。南郷スキー場の近くで右折すると、ようやく単独区間となった。そして、最初に差しかかるのが新鳥居峠だ。〝大型車は通り抜けできません〟と書かれた看板が、気分を盛り上げる。新鳥居峠の前後は1・2車線程度の道幅が続く。普通車同士であれば、双方が路肩に寄れば何とかすれ違うことができるだろう。

峠を下ると、昭和村喰丸の集落付近で国道400号との重複区間となるが、すぐに別れて今度は博士峠が近づいてくる。

実はこの400号と401号は、個人的に思い出深い国道だ。まだ若かった20年ほど前、牛タンを食べるために毎年3、4回は岐阜から仙台を訪れていた。高速道路を使わず昼夜ずっと走り続けていたため、牛タンを食べた後の2晩目は、眠くならないよう、酷道を走るようにしていた。その時によく走っていたのが、400号と401号だった。当時は酷道区間が延々と続いていたが、この20年間で道路改良が進んでいることを実感する。この先に待ち構えている博士峠も例外ではなかった。“ただいま、未来を建設中”と書かれた大きな看板が掲げられている。建設中の博士トンネルは全長4・5キロあり、これが完成すると博士峠の酷道は消滅する。最新の報道によると年内に供用開始となる見込みで、残された時間は僅かだ。

思い出を噛みしめながら峠を走るが〝携帯電話圏外〟という無情な看板を見て、心が和む。看板より前から、私の携帯はずっと圏外だ。

思い出の酷道を走り、酷道は生き物だということを改めて実感した。会津に着いたら、牛タンとともに思い出深い喜多方ラーメンでも食べようと思った。酷道を走っている間に夕方が迫っており、ラーメン店の営業が既に終わっていることは、この時点では知る由もなかった。

新鳥居峠を下るクネクネ道。

携帯電話圏外という無情なお知らせ。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/