【vol.69】ウワミズザクラを いただきま~す

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今回のテーマ:ウワミズザクラをいただきま~す

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桜の仲間でバラ科の落葉高木。そこそこの大木になる。花期は関東周辺では4月から5月に細かい花が動物の尻尾のように枝先に咲く。

桜前線は南から順に北へやって来るものだが、今年の桜は暖かい日が続いたおかげで、九州から東北地方までほぼ一斉に咲き始めた。かなり早い展開で各地で満開になったようだ。街で桜が散り始めると里山では山桜が咲き、周りの雑木のなんともいえぬ淡い黄緑色のパッチワークが見られる。この萌黄色に染まる里山の風景はあっという間にただの緑へと変わってしまう。都市で忙しく働く人たちに見せてあげたい美しい色の風景だ。毎年ながらこの萌黄色を眺めながら山菜や土手菜を摘んで、季節をいただいている。まぁ田舎に住んでいれば何てことのない作業なのだが、油断しているとあっという間にタイミングを逃してしまう。

今年もこの季節がやってきたが、いつもとちょっと違うのは、季節が少し早いこと。毎年同じコースを散歩しているが、タラの芽やコシアブラ、ヤブレガサと目当てにしていた山菜は伸びすぎている。しかたないので歩きながら成長の遅いものを探して摘んだ。いつもならまだ咲いていないウワミズザクラが咲いている。細い口の瓶を洗うブラシのような花。花の形がかなり目立ち、山で咲いていると目立つ木でもある。新潟地方ではこの花の蕾を食べる文化があるようで、塩漬けにしたものを湯沢の民宿で食べたことがある。初めて食べたその塩漬けは香りが強く美味しかった記憶がある。そこで今回はウワミズザクラの塩漬けを作ることにした。作り方がいまいち手探りなので、思い出の味になるのかは微妙なところだ。

里山を散歩していると多くはないが転々とこの木が見つかる。場所によってはまだ蕾の木が見つかった。初めて作るのでどれくらい摘めばいいのかわからなかったが、ジャムの瓶にいっぱいぐらいを摘んで帰ることにした。花が終わると赤い実がつくのだが、お酒につけて果実酒としても利用されている。

今年の春の山菜散歩は、まずまずの収穫。例年に比べると多少春が進んではいたが、それでもしっかり摘んで帰れた。食べられる木の芽や草の新芽などは、数えきれないほどの種類がある。自分の好みの草や木を選ぶが、今回のように少し冒険するのも、レパートリーが増えて楽しい。まずは、毒のある草木を覚えて、あとは山菜取りをしている人や、地元の人とコミュニケーションをとり、情報をいろいろ聞いたりすると、どんなふうに食べているのか聞き出せたりする。一番いいのは地元の料理店的なところで一度口にして味を覚え、まねて作ることだ。同じ山菜でも地方によって食べ方は色々ある。また意外なものが食べられていたりする。今回の新潟の塩漬けの他にも、アケビの新芽を生卵で混ぜて食べる「アケビの巣ごもり」などもある。地方へ出かけた際は、天然物の自然料理を探して食べてみるのもいいだろう。ノーマルな食べ方が間違いないのだろうけど、できればアレンジもしてほしい。味を引き立てる料理は必ずあるはずなので、山菜や土手菜を摘んできた際はぜひ挑戦してもらいたい。

美味しいとついついたくさん捕ってしまいがちだが、あくまでも春の季節を味わう程度に止めよう。

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萌黄色のパッチワークで萌え萌え~な里山!

沸くような芽吹き、里山の春の風景。薄いピンクはヤマザクラ。春のほんの一時にしか見られない貴重な色。贅沢な空間だ。

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この季節にしか味わえない、里山の芽吹き。1ヶ月もするとこの緑は黄緑一色に変わってしまう。景色を見るだけでもお腹いっぱい。

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花が咲かないと見落としてしまいそうな木だ。葉は桜に似ているが、花は全く違う。食べる部分はまだ花の咲く前の蕾。ブドウの房のようになった蕾を爪先で挟むように切って摘んでいく。

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これから咲く花の蕾を摘むのは心苦しいが、間引いてあげてるんだと思えば気持ちが和らぐ。初めてなので味見程度の量を摘んだ。

ウワミズザクラ

花の時期の里山では花が目立つので山へ行く人は誰でも見ていると思う。花の蕾は塩漬けに、実は熟したものを果実酒として使われている。アンズの香りがするので杏仁子(アンニンゴ)と言われている。

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収穫

山菜でもなんでもそうなのだが、採るという作業は興奮する。夢中になりすぎて、大量に捕ってしまうところを抑えて、味見程度に留めた。

アンニンゴ漬けを作る

 

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1.摘んできた蕾をボウルなどに入れて流し水にさらしながらゴミや虫を取り除く。特にアクはないので軽く洗う程度。

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2.蕾が浸る程度の水にひと握りの塩を入れ塩が溶けるまで混ぜる。塩水を作ってから漬けてもよい。塩分は多くても食べる時に洗い流せる。

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3.塩水に漬けたらラップなどで蓋をして冷蔵庫で一晩置いて塩水をなじませる。常温だと花が咲いてしまうので要注意。

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4.一晩漬けた水を洗い流す。このタイミングで一夜漬けではあるが、水分を取り除いた状態でさらに塩漬けにしてしなしなにする。

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5.保存できる瓶などに漬けた蕾を移す。瓶は腐らないように煮沸消毒をさせておく。

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6.瓶に詰めたら瓶の大きさに合わせた量の水にひと握りの塩を溶いて瓶に流し込む。塩は多くても構わない。食べる時に調整できる。

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7.瓶に詰めたらこのまま3~4日置き、蕾が黒ずんできたら完成。食べる時に塩加減をみて、しょっぱすぎた時は洗い流して食べる。

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完成!

熱々のご飯に載せて食べてみた。アンズのような香りがして、しょっぱさがご飯を誘う。えぐみなどが全くなく食べやすい。塩分が強いのでお茶漬けでも美味しく食べられる。

春の里山で採れる山菜

 

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ヤブレガサ

いつもは綿毛に包まれた新芽を摘んで帰るが、今年は綿毛も終わり葉がやや開いた状態まで成長していた。天ぷらで食べる。

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アケビ

新しく飛び出した髭のようなツルの部分を摘み採る。ひと握りも摘めば1食分はある。熱湯に通し水を切って醤油とマヨネーズで食べる。

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ニワトコ

新芽を摘んで天ぷらで食べる。アクがあるので水に漬けておく。毒の成分があるため多くは食べない。滑りと香りが特徴。

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タラ

写真は伸びすぎている状態だが、葉が出る前のものを選ぶとよい。香りとアクを味わう山菜。天ぷらが最高に美味しい。

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日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。