【vol.66】アカヤマドリを いただきま~す

今回のテーマ:アカヤマドリを いただきま~す

イグチ目イグチ科アカヤマドリ。キノコの中でも大きく育つ部類で、色や傘の模様など似た種類がほとんどないので見分けやすい。木とキノコの菌で生える外生菌根菌。見た目は悪いが、美味しい。

秋が来たかなと思ったら真夏日が続いたり、かと思えば雨がバンバン降ったり、気温差が激しく変わったりと今年の秋も変な気候だ。10月半ばにようやく秋らしい気候になってきた。味覚の秋だ。木の実の採集に出かけては美味しい食べ方を探ることを、毎年のように繰り返している。結局、昔から美味しい食べ方は決まっていてなかなか新しい食べ方など見つからない。でも挑戦している自分に酔えて採集や料理が楽しくて毎年続けられる。

今年は少し違う世界にハマり出した。森に入るとキノコが何種類も見つかる。前から思っていたのだが、キノコに詳しくなれたらどんなに楽しいか。私の知っているキノコは数種類。今まで様々なキノコに出会ってきたが、採ってきて口に入れるのは本当に知っている数少ない種類だけ。こんな仕事をしててキノコで死んだなんて、チョ~恥ずかしいからだ。しかし、今年は違った。夏の終わりからキノコを見つけては色々調べたり、先生に聞いたりちょっと積極的に行動している。自分なりの口にするキノコの基準はこうだ。図鑑などで調べて、間違いやすい類似するキノコがないこと。今までキノコに手が出なかったのは、昔に見た図鑑の毒キノコの説明文がめちゃくちゃ恐ろしかったからだ。口にすると「確実に死ぬ」とか「身体に麻痺が出る」「言語障害」「3日間腹痛で翻筋斗を打つ」など。若かった私はこの文字でキノコに挑戦しなかったのだ。

キノコ狩りの鉄則は知っているもの以外には手を出さないこと。要するに知ってしまえばいいのだが、なかなか難しい。そこで始めたのが間違えようのないキノコからの挑戦だ。絶対に似たものがないというところから始めた。何より森を散歩できるし、いろいろな種類のキノコに出会える。口に入れなくても楽しくてしょうがないのだ。
 9月下旬のある日、雑木林の公園で今回のターゲットと出会えた。このキノコはでかくて目立ち、色も柄も少し変わっていて図鑑では、美味しいキノコに入っていた。出始めの形がなんじゃこりゃ的な形だ。傘の裏がスポンジ状のイグチの仲間。土に潜っているつばが欠けることなくゲット。辺りを見回し同じものが他に出ていないか確認して、同じキノコを採集。傘の裏などに虫が多く入っているものはその場に置いていき、傷んでいないものを持ち帰る。

キノコを知るには色々試してみるのがいい。例えば、柄は空洞か確認したり、傘を割ったり、傷つけたり、匂いも大事だ。違いがわかるわけでもないが、何種類も嗅いでいると匂いが記憶に残る。私がこのキノコを狙ったのは、香りが良く美味しいと図鑑に書いてあったからだ。以前コウタケというキノコでパスタを作った時、めちゃくちゃ美味しくて匂いって大事だなと思ったことがある。そして類似するキノコがないという基準もクリアしている。

この時期、森を散歩するだけでキノコが発見できるので、食う食わないは抜きにして、知るという意味でキノコに接してみては? 趣味が広がり外遊びが楽しくなること間違いなし。決して知らないキノコは口に入れないこと。これは鉄則ですぞ。

装備

長靴、持ち運ぶカゴやバッグ、キノコを入れる通気性のいいメッシュの袋または新聞紙。

キノコ狩りは雨が上がった後が狙い目

コナラやクヌギなどが多く、落ち葉や朽木がゴロゴロした里山の公園。こんな場所はライバルも多いがキノコも多い。雨の後や朝晩の寒暖差が大きくなったころが探し時。

持ち帰り方

1本ずつ新聞紙などで、潰れないようにふんわりと飴のような包み方で包む。

こうしておけば他のキノコとも混ざらず、キノコに傷がつかないし、傘も壊れない。

採れたアカヤマドリ。必ず傘の裏をチェック。虫が多い時は諦める。

地上に出たばかりはこんな変な形。これがアカヤマドリの特徴でもある。

傘の裏はスポンジ状で、イグチの仲間の特徴でもある。柄は中空ではない。

見つけた直後、嬉しくて思わず採ってしまったが、傘の裏は虫だらけ。また、育ちすぎたものはふにゃふにゃで食すには無理がある。

採集はどんなものでも楽しい。特に食べられるものだとつい顔に喜びが出る。育ちの丁度いいものを採取。たくさん生える菌輪なので周りもチェック。

アカヤマドリのパスタ

 

1.持ち帰った3本。傘も固くしっかりしているものを選ぶ。できるだけ水を使わずに土やゴミを落とす。

2.アカヤマドリは色落ちがすごい。水につけて実験してみると水が黄色くなった。無害なのでこの色も利用できる。

3.大きなキノコなので、傘と柄を切り離し、柄は縦に薄く切る。

4.傘は一口サイズに切る。柄に合わせて細長く切り分けた。

5.オリーブオイルを引き中火で焦げ目がつくくらいまで混ぜながら炒める。炒めると黄色く変化し、香りが出てくる。

6.別で炒めておいたベーコンと玉ねぎを混ぜて炒める。すでに炒めてあるので混ぜ合わせる程度でいい。

7.ホワイトクリームを入れてさらに弱火で混ぜ合わせる。白いクリームが黄色く変わった。

8.茹でたパスタ(フィットチーネ)を入れて混ぜ合わせる。太い麺はソースとよく絡む。

完成!

なんとまぁ~香りが良く、キノコの味もちゃんとあり、最高な出来栄えだ。余ったキノコはオリーブオイルとバター、塩コショウでソテーにした。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。