【vol.66】にわとりのいる暮らし No.45

Vol66 Niwatori Main

私の夫は雑誌の編集や物書きの仕事をしているため、月のうち何日かは、缶詰になって家で仕事をしなければならない。文祥は人並み外れて存在感の強い男なので、家の中は自然と、彼の雰囲気に染まる。

今日はその、在宅ワークの日。

私は一階から、「原稿を書いている足」を見上げる。なぜ足が見えているのかというと、一三年前にこの家をリノベーションして住み始めた時、書き仕事がラクにできるようにと、二階の床を抜いて掘りごたつ風の空間を作ったのだ。彼は食事の時以外は、原稿をチェックしたり、パソコンで文章を書いていたり、リモートで編集部の人達と会議をしたりしている。たまにちらっと見ると、YouTubeでサッカーのプレミアリーグを見ていることもある。

食事は基本的にシンプルなものを食べるが、スパイスカレーだけは、みんながいる時に必ず作るもののひとつ。最近は、次男のゲンジロウが札幌のスパイス屋「南インド屋」さんのレシピを取り入れて、あれこれ凝ったインド料理を作るようになり、みんながひそかに楽しみにしている。

親子共通の話題では、アニメの話が多い。時間のゆとりがあれば、家族全員で宮崎駿監督の関連作品を見直して、やっぱりこのシーンはよくできているだの、ここの展開がうまいだのと言い合う。

「そうだ、父ちゃん、学校の遠足でディズニーに行くから、お金ちょうだい」とシュウ。

「マジかよ〜」

私はひそひそと「ねえ、ゲンジロウが朝起きなくてイライラするんだけど」

「放っておけば? もしくは寝坊するならコフキでしろって言うか」

明日にはまた山へ行ってしまう彼をつかまえて、みんながいろんなことを言う。たまに家に帰っても、仕事に追われるわ、家族にたかられるわで、父親もなかなか大変だなあ、と思う。

Vol66 Niwatori 1
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服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 脚の怪我はだいぶ良くなりました。
「ヤマト」 ♀ 秋になり、夜中に猫仲間と喧嘩しています。
「サンちゃん(チャボ)」 ♀ 「キー丸(チャボ)」 ♀ 小食な男性陣。
「シーシー(チャボ)」 ♀ 毎日エサにがっついています。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 11月、また北海道に向かいます。
「コユキ」 ♀ 雑誌の取材で、初めてひとり登山に挑戦しました。

「ショウタロウ」♂ 入社式が終わりました。
「ゲンジロウ」♂ カレーづくりとお菓子づくりが好きな、ニート青年。
「シュウ」♀ あとわずかで、高校最後の駅伝大会です。

服部小雪

イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。