ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。
今回の酷道
1粒で2度おいしい?
短区間に魅力が詰まった酷道
新潟県東蒲原郡阿賀町〜福島県喜多方市
国道459号は、新潟県新潟市の起点から、終点となる福島県浪江町までを結んでいる。日本海側から太平洋側へと延びる路線の中で、酷道と呼べるのは、福島県西会津町から喜多方市にかけての区間だ。
新潟を出発すると、国道49号との併設区間が長く続く。国道49号も日本海側と太平洋側を結ぶ国道で、こちらは全線が立派な幹線道路だ。
ちなみに、1965年に道路法が改正されるまで、国道は1級国道と2級国道とに分けられていた。1〜57号までが旧1級国道で、101〜271号は旧2級国道だった。より重要度の高い国道が1級国道とされていたが、道路法改正によって区分が廃止された。その後、新たな路線が追加されたり、路線が統合されたりして、現在の国道体系となっている。
国道49号は旧1級国道なので昔から重要とされてきた国道だが、国道459号は旧2級国道ですらない新参者の国道といえるだろう。国道○○号という数字を見るだけで、ほんの少しだけではあるが、道の歴史背景を推測することができる。
阿賀町の市街地で国道49号と離れると、いよいよ国道459号の単独区間だ。阿賀野川に沿って西進するが、道の状態は良く、センターラインも誇らしげだ。
ピカピカのスノーシェッドを抜けて福島県に入った瞬間、道路の状態は劇的に変化する。センターラインは消え、対向車とすれ違うのにも苦労する道幅しかない。新潟県側はピカピカの舗装路なのに対して、県境を境に舗装も古びてツギハギだらけになっている。
国道といっても全て国が管理しているのではなく、都道府県が管理している国道のほうが実は多い。そのため、県境を越えると道路の状態が変わることはよくある。しかし、ここまで極端なことは珍しい。酷道に入る瞬間は、いつだってわくわくする。
阿賀野川から離れて山に入ると、道幅が少し広くなる。ホッとしたのも束の間、集落へ差しかかると再び道幅が狭くなった。住宅や商店に挟まれた細い道は生活道路にしか見えず、国道の威厳は感じられない。対向車とのすれ違いが不可能な区間が続き、この酷道最大の見せ場といってもいいだろう。
川沿いや市街地など、拡幅しにくい区間が酷道として残ったのだろう。わずかな距離を走るだけで、山道の王道系酷道と市街地型酷道の両方を楽しめるのだから、素晴らしいと言うほかない。
西会津町から喜多方市に入り、道の状態は一時的に良くなる。市街地を抜けて山間部に差しかかると、再び酷道区間がやって来る。但し、こちらの酷道区間は道路改良工事の真っただ中で、近い将来失われてしまうだろう。
酷道に限った話ではないが、行きたいと思った場所は、いつまでもそこにはない。行きたいと思った時が、行くべき時だ。そんなことを改めて実感しながら、次の酷道へと向かった。
市街地に入ると、一気に道幅が狭くなる。市街地型酷道だ。
酷道がまさに消滅しようとしていた。いつまでも、あると思うな、親と酷道。
鹿取茂雄
酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/