【vol.63】スモールマウスバスを いただきます……?

今回のテーマ:スモールマウスバスを いただきます……?

ルアー釣りの中でも人気の高いバス釣り。ブラックバス釣りといったらラージマウスバスだ。ところが、最近は違う種類のスモールマウスバスが各地で繁殖し、どの河川も嘆いている。美味しいことを証明して広げるぞ。

関東で桜が散りはじめると、里山では何色もの淡い緑が広がり、モノトーンだった景色が色とりどりの萌黄色に変わってきた。1日ごとに里山の緑色が変化する季節。この瞬間を毎年逃さない。

福島に住む友人から「スモールマウスバスが入れ食いだぞ。サイズもいいし最高!」と写真つきでLINEが届いた。確かにいいサイズだ。ちょうど今月号のネタを考えていたところだったので、少し遠いが福島に行くことにした。スモールマウスは20年くらい前に釣って食べたが、綺麗な川の流れの中で釣ったおかげか匂いもなくとても美味しく食べた。友人からポイントを教えてもらい早速福島へ出発。

早朝から山間部のポイントを確認し、街中の水路でガサガサ。餌採りだ。アブラバヤ、オイカワ、ドジョウ、カワムツなど6㎝前後の魚をブクで生かしてポイントへ戻った。今まで肉食系の魚はアメリカザリガニを餌にして仕留めていたが、外来種の規定があり、できれば生きたままの移動等は避けたい。餌として捕まえてきて他の場所で釣りをしていたが、今後は考え直さないといけないレベルまできている。 仕掛けはリールザオに大きめのハリをつけ、エサを背がけにし、泳がして放置。超簡単な釣りだ。若い頃はルアーにハマったが、いつの間にか道具に興味がなくなって〝釣れればいいじゃん〟に変わった。教えてもらったポイントの深そうな場所、いわゆる釣り用語のワンドで仕掛けを投げ込んだ。投げ込んだ仕掛けの糸を張りぎみにし、竿を立て先をジッと見てアタリを待つスタイルだ。生きているエサなので動き回り、竿先はまるでアタリのような動きをする。これがたまらなくワクワクする。竿先が激しく動き、竿が持っていかれそうな時が獲物がくわえた瞬間で、本当のアタリである。しかし……釣れない。なんだ? なんなんだ? どこが入れ食いだ!

全くアタリのないまま5時間も経ってしまった。半分飽きて竿を放置し、周りを散策。大体釣り人は大げさに表現する。たくさんいれば〝うじゃうじゃ〟とか、数匹釣れれば〝入れ食い〟という。しまいには逃がした魚は手を使ってありえない大きさを表現し、日が経つにつれてどんどん魚が大きくなる。しまいには川より大きくなる。

生き餌は弱ってきたら取り替えてを繰り返すが、まだ3匹目。持ちがいい。4匹目に少し大きなドジョウの尻尾にハリをつけて泳がした。ドジョウは下へ下へと泳ぐのでおそらく底まで泳いでいく。ドジョウを泳がせて30分、待望のアタリだ。ゆるめたドラグから糸がグイーンと出た。直後にドラグを締めて思いっきり竿を手前に引いてあわせた。掛かった! 重く引っ張られる感覚にドキドキしながら引き寄せて釣り上げた。久しぶりに見るスモールマウス。嬉しさのあまりいろんな角度から写真を撮った。が……水に入れてかっこいい写真を撮ろうとしたとき、体を反転し糸が切れ目の前で水底へと逃げてしまった。ガーン。

その後のアタリはなく、ついに日没。やばい。連載が落ちる。何か釣らなきゃと夜まで粘った。21時20分にやっとナマズが釣れた。なんてことだ、スモールを食べるネタがナマズになってしまった。本当にめんぼくない。締め切りギリギリのロケは胃に悪い。今後はもっと余裕を持って行動しよう。

装備

ライトなリールザオにスピニングリール。糸は切れにくいPEライン。ハリは海のセイゴ用ハリ。口の大きな魚用だ。こだわってるところはエサ。現場で手に入れる。

福島県の清流でスモールマウスバス釣りに挑戦してきたが……

阿武隈川水系の上流は、サケ、サクラマス、イワナ、ヤマメ、アユなどが泳ぐ川だ。そんな川に冷たい水、流れに強いスモールマウスバスが繁殖している。仕留めて美味しく食べてやろう。

エサは ガサガサでゲット

水路でガサガサをして捕まえた数種類の淡水魚。電池式エアーレーションで活かせて使う。背びれの辺りと尾びれの近くにハリをつける方法がある。できるだけ元気に泳いでもらいたいので投げ込んでからはあまり動かさない。

尾びれのそばにハリ

背びれ近くにハリ

スモールマウスバスとラージマウスバス

左がスモールマウスバスで右がラージマウスバス。両方が生息している場所は普通にあるが、棲む環境が多少違う。ラージは流れの少ないダムや湖、池などを好む。スモールは流れのある川や冷水に生息。ラージはかなり前から日本に定着したがスモールが増えはじめたのはここ30数年の間だ。両者とも特定外来生物に指定されている。

ひたすら待つ

生きた魚の背中にハリを刺し、泳がせてアタリを待つ。リールの糸を張り竿先の辺りをみて合わせるが、活きがいいとまるでアタリのような動きをする。アタリとまちがえることもしばしば。

ゲット!

スモールマウスバスがやっと釣れた! 引きは強いし何より大きい。久しぶりの手応えにめちゃくちゃ嬉しい。模様や大きさなどバエる魚体なのでスマホでかっこいい写真を撮った。しかし、水の中に入っている写真を撮っている時、事件は起きた。いきなり反転したかと思ったら糸が切れて、目の前でスローモーションのように泳いで逃げてしまったのだ。

ところが………逃げた! めんぼくない……

じゃーん ナマズ!

ねばりの1匹! このままじゃ企画が落ちるというプロ根性で釣りあげた1匹。スモールマウスバスではないがとにかく釣れてひと安心。日が沈んだ時には焦って、どうしようやばいが頭を駆け巡った。ナマズは以前蒲焼にしたが、今回はナマズの一番美味しい食べ方である唐揚げで食べる。

ナマズの唐揚げ

 

1.皮を丁寧に洗い、3枚におろし中骨は捨てる。淡水魚特有の匂いが気になる人は皮に熱湯をかける。メスだったので卵が入っていた。卵は煮付けで食べるが今回はなし。

2.一口サイズに身を切る。ナマズは皮が美味しいので皮はひかない。皮が縮み反ってしまうので皮に包丁で筋を入れる。

3.一口サイズに切った身を、砂糖、醤油、酒、ねり生姜をボウルなどに入れて混ぜたタレに漬け込む。2~3時間冷蔵庫に入れる。

4.漬け込んだ身に小麦粉をまぶす。片栗粉があれば少し混ぜて使う。満遍なく粉がついたら余分についた粉を払い落とす。

5.160度くらいの油でじっくり数個ずつ揚げていく。身についた油をブツブツさせてじわじわ揚げるのがコツ。

完成!

きつね色よりはややあげた感のある色になったら完成。揚げたてのつまみ食いが最高に美味い。好みでコショウや塩をさっと振る。ナマズ1匹で沢山の唐揚げができるので大勢人が集まる時など便利。素材を言わないで食べさせるとナマズだと気がつかず完食する。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。