【Vol.61】少しばかりのコツと優れた道具で寒さを克服せよ。雑踏のオンシーズンより独りになれる今が楽しいー冬キャンプ入門ー

寒さを克服すれば人も虫もいない快適な環境が手に入る

日々自然界で起こる極当然の生存競争によって一躍脚光を浴びたキャンプ。密を避けるためにキャンプ場に来たら密だった……なんて事態もちらほらあったが、今こそ人にも虫にも悩まされず、一人になれるチャンスだ。そんなわけで今号は、こんな好機を逃さないためのテクニックをお届け。快適な小型薪ストーブを持ち込んでも自身のスキル向上につながらないので(当然これはこれで良いキャンプ)、ここでは誰でも挑戦できる装備と工夫だけで、魅惑の冬キャンプを提案したい。

冬キャンプで手持ち道具の機能を最大限に活かすべし

 人も虫も少ない冬はタープ泊に最適な季節だ。寒さによる様々な影響を正しく理解して乗り越えれば、快適なキャンプライフが待っている。
 まず、冬の寒さは何も生き物だけに堪えるわけではない。道具の特性によっては寒さでその性能を発揮できない。例えば普段使い慣れているアルコール、ガス系の火器は低気温に弱い。そもそも前者は火力調整が難しいのでビギナー向けではないが、プレヒート機構のないカセットガスバーナーは低気温になるとすぐに揮発性を失う。そんなときには外気温よりも温かい水やお湯を使ってガスを温めながら使用すればいいのだ。
 また、直火禁止のキャンプ場においては、薪量の限られた焚火台で一晩暖をとるのは難しい。そのような場面ではガソリンバーナーにヒートアタッチメントを組み合わせると、外気温に左右されずに暖がとれる。液体燃料でもフロアを気にせず使用できるタープ泊の利点に加え、タープアレンジでベンチレーションを設ければ、より安全にヒーターが使える。
 ちなみに、冬季用の高価なアウトドアギアを揃えなければならない……という強迫観念も、冬キャンプの敷居を高める一因だ。ただ実際のところは、普段の寝具と組み合わせるだけで十分。特に毛布はその筆頭で、量販店で売られているものでも暖かく、丸洗いだってできる。それらと現代のアウトドアギアを併用することで、機能的にも金銭的にもカジュアルに冬キャンプを楽しめる。

単独冬季野営ことはじめ

特別な装備がなくてもいつもの装備と工夫で乗り切れる

敷居が高そうに見える冬キャンプも、実はちょっとした工夫をほどこせば手持ちのアイテム+αでできる。道具の特性を知り、それを活かす方法を採ればいいだけだ。だから今回はウェアにも普段着に使えるワーク系を選択。火気類は最小限だが、工夫をこらせば快適な野営が実現する。

BASIC SKILL

まずは応用の効くシンプルな寝床を作る

ダイヤモンドフライは庇が長く張り出し、タープの有効長を最大限に利用できる一押しの設営法。ガイラインを長大に張らずともタブを用いて即座に設営~アレンジできる点も魅力だ。つまり風や天気の安定しない厳冬期でも安心して設営できるのである。また、比較的密閉空間も作り出しやすいので、タープ泊初心者にもお勧めしたい。

設営、撤収を素早くできるようトグルとして小枝を用い、巻き結びで固定する。ガイラインを直接結ばないことでタブのダメージも軽減。

サイドの折り返しは冷気の吹き込みだけなく雨や雪の吹き込みも防ぐ役割を持つ。また、より低姿勢で張ることで巻き風にも強くなる。

POINT

より耐候性のある形にトランスフォーム可能

寒気が強まる夜にエントランスを可能な限り狭くして外気の影響を防ぎ、幕内のヒーター熱をとどめる方法がこちら。雪や雨が幕下から侵入しないよう角を折り返すことで寝具の濡れも防ぐことができる。また、狭い足元スペースで熱も滞留してくれるのだ。

設営はダイヤモンドフライの庇を下げ、裾はリフター1つ分折り返すだけ。トグル留めで設営を容易にし、入口を鋭角に持ち上げる。

入口をベンチレーションと兼用できるアレンジ。酸欠を防ぐほか、長い庇を利用することで就寝エリアを損なわない居住性が生み出せる。