ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。
今回の酷道
分断区間は2箇所
色々酷い酷道
滋賀県大津市〜三重県紀北町
今回の酷道422号は、手強さを感じていた。当初は1日間で走破する予定だったが、急きょ前日の午後から2日間かけて走破することにした。
国道の起点である滋賀県大津市から南下し、終点となる三重県の紀北町まで向かう計画だ。実延長125キロ足らずの国道だが、道路が繋がっていない分断区間が2箇所もあるのだ。
大津市を出発し、伊賀市に入ったところで、ようやく酷道が現れた。しかし、期待していた区間はバイパス工事が完了しており、国道指定を外されていた。これはもう、酷道とは呼べない。落胆し、この日は伊賀に泊まった。
翌朝、名張を経由して、ようやく酷道らしい酷道に出会えた。さらに津市美杉町から、最初の分断区間を目指す。分断区間の前後は、この先に道が無いのだから、レベルの高い酷道が期待できる。
そして、期待は裏切られなかった。道幅はギリギリ、林道の様相を呈し、国道の面影は全くない。国道の末端部まで行くと、ついに舗装が切れダートになった。
大変なのは、これからだ。分断区間の反対側へ回り込まなければならない。直線距離ではわずか1.5キロだが、迂回するために35キロの道のりとなる。1時間後、反対側にやってきた。末端部は細い舗装路になっており、荒滝不動尊があったので、お参りした。
次の分断区間に向けて2車線の快走路を走っていると、トンネルの脇に怪しげなものが見えた。引き返して確認すると、旧道のトンネルだった。車一台分ギリギリの幅しかなく、しかも素掘りだ。フェンスで塞がれているため入れないのが残念だが、これは最高に良い。
旧道トンネルの脇に、さらに怪しげなものが見えた。旧道の旧道への入り口だった。早速歩いていくと、断崖に張りついた歩道になった。車が走れるとは思えない道幅、足を滑らせると確実に命はないだろう。落ちたら死ぬ道を抜けると、現道・旧道・旧旧道を横並びに見渡すことができた。最高の寄り道になった。
時間の余裕が無くなってきたため、次の分断区間へ急ぐ。急こう配の狭隘路をグングン上ってゆくと、またしても林道の様相を呈してきた。というか、まさに目の前で杉の木を伐採する作業が行われていて、重機で道が塞がれていた。これはもう林道っぽいというレベルではない。林道そのものだろう。
作業している方に発見され、道を開けようかと言われたが、もうほぼ国道の末端部分だったため丁重にお断りし、バックして撤退した。
その後、5キロほどの分断区間を迂回するため、1時間半かけて60キロ走った。もうすっかり時間にも心にも余裕がなくなり、惰性で紀北町の終点まで走り抜けた。
日程を変更していなければ、旧道に寄り道することはなかっただろう。時間の余裕は心の余裕。その言葉を噛みしめて、今後も探索に挑みたいと思った。
画像の右から現道、左が旧道だ。そのさらに左に旧旧道への入口がある。
旧道の旧道は、落ちたら死ぬ道だった。
鹿取茂雄
酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/