【vol.60】アケビとマタタビをいただきま~す

今回のテーマ:アケビとマタタビをいただきま~す

アケビはあまり古くなくきれいなもの、マタタビは実が大きく熟していないものを選ぶ。虫こぶは黒い部分が多いものはスカスカなので選んで採集。木の実は採りはじめると楽しくなってきりがない。採りすぎに注意。

ようやく秋が訪れたが、なんだか色々と変な感じだ。例えば、開花がほぼ狂わないヒガンバナが8月中に所々で咲いていたり、コスモスが真夏に咲いてたり、キンモクセイが2回に分けて咲いたり、花壇のツツジが春と秋に咲いたりと身近で色々な狂いがみられた。これは年間の気温や雨量などの影響であり、気候が不安定な証でもある。地域でもかなり違うので私の住んでいる栃木県周辺だけなのかもしれない。皆さんの周りではどうだろうか?

この時期は毎年、散歩しながら里山の秋の木の実を楽しむ。特につる草はこの時期目立ち、ちょっとした林道脇にはこんなにたくさんのつる草があるんだと驚かされる。つる草が道端によく生えるのは、森の中よりは片側がひらけている方が成長環境に適合するからだ。路肩で見られる多くの種類のなかでも特に私が目を光らせているのは、マタタビやサルナシ、アケビなどの食べられる実。散歩して持って帰れれば最高だ。

ところがこのつる植物は、雌雄異株といってどのつるにも実がなるわけではなく、オスのつる・メスのつるに分かれるものが多い。特にサルナシは平地ではほとんど実がつかず、手に入れるには北へ行くか標高の高いところに行くしかない。また異常なのはマタタビで、雌雄異株にも関わらず、雌株の花は雄しべ雌しべがついている両性花もある。非常に複雑だ。その中でもアケビは至る所で見つかるが、これは雌雄同株で雌雄異花。これは簡単に言うと1つのつるに雄花雌花をつけるということだ。雌花は受粉すると実がつく。アケビは実が熟れると実が割れて中の種が顔を出す。その種の周りにある白い部分を口に含むと甘く美味しい。私は、この甘さがあまり得意ではないが、毎年1度は口にする。ま~、季節のものなのでいただいているといった感じ。きっと、昔々その昔の甘いお菓子がない時代では、この甘さはたまらなかったんじゃないかと思う。はじめて口にする人は衝撃を受けたのではないだろうか。今の子供たちにはなかなか伝わらないと思うが、試してみてほしい。

アケビの実を採っていたらマタタビの実が目についた。黄色くシワシワになっていれば甘く美味しく食べられるが、青い間はエグすぎて生食では食べない。これはこれでマタタビ酒にはなる。美味しいとは言えないが、薬としての効能もあるし、せっかくなので持ち帰ることにした。よく見ると実につく虫(虫癭)が多く、これも滋養強壮や疲労回復などの効能で人気があるため一緒に採集した。マタタビの実とマタタビの虫癭をお酒に漬ける。

アケビは全国各地で様々な食べ方があり、種の部分ではなく、外側の果肉を食べている。私は苦いイメージしかなく避けてきたが、今回これを美味しく食べることに挑戦してみた。食べられる、食べられないは大きく分けると毒があるかないか、さらに食べられるものの中には、美味しいまずいがある。美味しいまずいは人によって違いがあり、料理の仕方にもかなり左右される。基本の食べ方があればそれを試して、さらに美味しくアレンジするのがいいと思う。いろんな食べ方に挑戦してほしい。

装備

木の実を採集するときは高枝切り鋏が便利だが、今回のように散歩ついでの場合は手ぶらなので、その場で引っ掛け棒を作る。竹があれば竹が便利。

採集道具を作る

高いところについている実を採る道具として引っ掛け棒を作る。今回はシノダケを使った。紐の代わりに細いつるを利用する。

アケビ

三葉・五葉と葉の数が違う種類があるが共に食べられる。色は紫から薄茶色まで様々。手のひらに乗るサイズで1~4個実がつく。

マタタビ

つるから伸びる枝が長く、葉には白くなる葉もあり、夏は目立つのでわかりやすい。実は葉の裏側につくため覗き込まないと見えない。熟すと黄色くなって甘い。

マタタビ酒を作る

 

虫の入ったボコボコとした実、虫癭を利用する。マタタビ酒は薬用としても有名。力も湧くそうだ。

1.水にさらし、きれいにゴミなどを洗い流す。虫癭は中に虫が入っているので実の中が空洞で水に浮くが気にしない。

2.きれいに洗ったら、虫癭の黒く硬くなった部分と実のヘタを、爪などでできるだけきれいに取り除く。

3.熱湯消毒した瓶に実と同じ重さの氷砂糖を入れる。次に、ホワイトリカー(アルコール度数22~23度)を入れる。割合は実1㎏に対し、氷砂糖1㎏、ホワイトリカー1L。

完成!

6カ月以上冷暗所で置けばできあがり。あまり年数が経つと黒くなり濁りが出るの
でその前に飲むこと。薬用と言われており、疲労回復、滋養強壮、冷え性、腰痛、精神安定などが期待できる。

アケビの
皮煮を作る

 

1.皮を丁寧に洗って20分ほど水につける。20分後水を拭き取り、鍋に軽く油をひいて炒める。大さじ1杯の砂糖を入れ中火にかける。

2.砂糖と同様に日本酒大さじ1杯を続けて入れる。あまり煮立てないように火をチェックしながら、炒めるように両面に焦げ目をつける。

3.みりん大さじ1杯と味噌大さじ1杯を固まらないように溶かして鍋に入れる。同時にコップ1杯の水を入れて沸騰させないように火をみながら煮込んでいく。

4.味が染み込むようにスプーンなどで煮汁をかけながら煮込む。味噌は完全に溶かさないと固まるので注意。40分ほど煮込む。

5.水分がなくなったら完成。火を止めて冷まして鍋からあげる。一口サイズに切りわけ皿に盛る。柔らかくできた。

完成!

今まで食べてきた中では1番柔らかく、苦味もなく美味しくできた。酒のつまみにいい感じだ。ひき肉詰めにしても美味しそうだし、野菜のように炒めてもいけそうだ。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。