今回のテーマ:マクサでところてん いただきま~す
マクサは日本全国の磯に分布。生える場所は波の影響のある岩や石など。赤っぽい海藻で細かな枝分かれがあり、縦に長く伸びず、なんとなく丸く生える。ところてんの材料として全国的に有名。
夏らしい暑さが続いて田んぼの水も干上がりかけ、いい加減雨降れよなんて思っていたら、とんでもない量の雨が何日も続き、いい加減にしてくれ~と愚痴をつぶやく今年の夏。近年極端な天候が度々訪れるようになった。その昔は、夏に夕立が普通だったのに、温暖化のせいだろうか? 何にしても都会から離れた田舎でも気象はかなり変わってきている。
コロナで出かけることが制限される中、こっそり取材に出かけてきた。今回はところてん作りを紹介する。皆さんはところてんはどのように作られているかご存知だろうか? 海辺に住んでいる人なら当然みんな知っているが、海藻から作る手間のかかる食べ物なのだ。
まずは、磯へ出かけテングサ採りだ。テングサとは色々な種類がありその総称。紅藻類・テングサ目・テングサ科で種類としてはマクサ、ヒラクサ、キヌクサ、オオブサ、オバクサなどがある。ところてんはまず、これらの海藻を採取して水で洗いながらゴミなどを取り除き、天日に干す。カラカラに干したらまた水で洗って天日に干す。これを海藻が白くなるまで7日〜10日間ほど続ける。白くなった海藻がいわゆる寒天の材料〝干しテングサ〟。テングサ類は漁協でも扱っているので、生えているものはもちろん、海にちぎれて浮いているものでも採取してはならぬ。密漁になるのだ! 海辺で目の前に浮かぶマクサを見ながら悩んでいると、なんと打ち寄せられたマクサが大量に陸に上がっていた。しかも水際ではなく完全に陸! ただのゴミだ! これなら何の問題もなくいただける。しかもすでに天日に干され色が抜けているため、洗うだけで干す必要がない。10日間の時短になった。
テングサにも色々と種類があり、その種類によって味や粘り気が違うらしい。私の知っているマクサは一般的で、どこの地方でも寒天の材料に使われている。この打ち上げられたものの中からマクサを選びつつ採取した。葉の出方が微妙に違うので見慣れれば区別は簡単につく。こんなチャンスはないと、ひと抱えほど採った。1回のところてんで使うのはふた握り程度。乾燥させて何年も保存できるので採れるときに取っておくと便利だ。海岸沿いの道端や防波堤には海女さんが採ったテングサを干している光景がよく目立つ。ところてんで有名な地方にありがちだが、初めて見た時は人が口にするものとはまったく思えなかった。
これを使って寒天を作り、ところてんにする。グツグツ煮込んでとろとろにして冷蔵庫で固めたものを麺のように切り、酢醤油で食べると、ところてん。細かいキューブ状に切り、あんこ・黒蜜をかけるとみつまめができる。同じものなのにすごい。冷蔵庫で固めてしまえばどんな食べ方にでもでき、おまけにカロリー0。ただひとつ気がかりなのは、ずいぶん汚い場所で採取したこと。よく洗えばいいかと思ったがなんとなく不安が残る、今回は拾え~タダだ~ということで良しとしよう。磯で遊び帰りたかったが、締め切りも間近なので、帰って速攻料理をすることにした。コロナで気が滅入っている人、気分転換にたまには1人で誰にも会わない外へ出かけてください。
装備
今回は打ち上がっている陸に落ちている海藻を採集するので特筆する装備はない。散歩スタイルでいい。採集したものを入れる入れ物として風通しのいい洗濯用ネットを使う。
ところてんの材料は日本全国のこんな海の磯に生えている。シュノーケリングで潜って色々な海藻と見比べて覚える。
こんなところに 落ちていた!
陸に打ち上げられていればこれはゴミ。ゴミ拾いで乾燥マクサ採集。色々な種類の海藻があるのでよく見て白っぽく色の抜けたマクサを選ぶ。
マクサをゲット!
違う海藻やゴミなどはできるだけ取り除き、洗濯用ネットに放り込む。フナムシやハマトビムシなどの虫もついているので振り落とすように取り除く。
海藻でも密漁!?
海の生きものには許可なくとってはいけないものがある。特に日本はその制限が細かく各地域で様々。仕事として海で漁をしている人が多く、国から許可をもらうため採ってもいい権利にお金を払っているからだ。マクサは海産物でも有名でどこの海岸でも許可が必要となる。
ところてんを作る
1.マクサをボウルなどに入れ、流水でゴミを取りながら洗う。真っ白に固まった部分があればそれも丁寧に取り除く。
2.水で洗ったマクサを天日でカラカラになるまで干す。ゴミを取りながら2回ほど繰り返す。今回は元々色が抜けているので生えている海藻より10日間ほど時短となる。
3.干してカラカラになったマクサを流水で軽く洗う。その後1時間ほど水に浸けておく。
4.下処理の完了したマクサを片手にふわっとふた握り取ってたっぷりの水を入れた鍋に入れる。最初は強火で沸騰させ、後は中火にして水がとろとろになるまで煮込む。
5.海藻を溶かすように上から押さえたり混ぜたりしつつ火にかけて1時間。水にとろみが出てきたら火を止める。
6.熱いうちに布などでこしてボウルに受ける。熱いので注意。使った海藻は2回目、3回目となくなるまで使える。
7.煮込んだ海藻エキスをタッパーなどに移し、ラップで蓋をして冷蔵庫で冷やす。半日から1日でぷるぷるの寒天になる。
8.愛用の自作寒天突きで寒天を細い麺状にして完成。これを細かく四角に切ればみつ豆用。やや黄色いが製作過程で色は変わる。
完成!
青海苔をふりかけ、辛子を少し入れて酢醤油でいただく。黒蜜やきな粉をかけるなどアレンジも楽しい1品。
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。