【失われたパン・その1】 パン・ペルデュ
フランスには乾燥させたパンの保存食レシピがたくさんある。パン・ペルデュはその典型。乾燥させたフランスパンに卵液をしみ込ませて戻し、フライパンで焼き上げたもの、そう「フレンチトースト」である。
余ったパンは乾燥させる
パン・ペルデュ、直訳すると「失われたパン」という意味だ。「失われた」は「失われた日」、つまり昨日のことで、「昨日食べきれずに余ってしまったパン」ということになる。日本には「干し飯」などの米の保存食文化があるように、ヨーロッパにはパンの保存食文化がある。現在は余ったパンは冷凍庫保存が当たり前だが、冷凍冷蔵庫などなかった昔は乾燥させるのが普通だったから、乾いたパンを使ったレシピがたくさんあるのだ。
通常、パン・ペルデュと言えば甘い「フレンチトースト」のことを指すのが通例になっているけれど、パン・ペルデュ・サレ(しょっぱいパン・ペルデュ)のように砂糖を入れずにハムやチーズを乗せて作るレシピも存在する。
フレンチトーストは映画「クレイマー・クレーマー」にも登場しており、柔らかい食パンで作られることも多いが、僕に言わせれば「これでは全然ダメ!」である。フレンチトーストの名前通りフランスの料理なのだから、パンはバゲットかバタールが基本であり、何よりも乾かしてからでなくてはダメなのだ。コシが全く違うのである。食べたことのない人は、是非試してみていただきたい。フレンチトーストの概念が完璧に変わるハズだ。
次回は乾燥させたパンを使った、甘くない系のレシピを紹介しよう。
パン・ペルデュもパンの質次第で仕上がりが全く違う。今回は「ベーカリー アベ」のバタールを使用。店長の阿部さんは、日本にフランスパンを広めたフィリップ・ビゴの店にいた生粋のフランスパン職人。
フランスパンをザルなどの上に乗せて乾燥させる。僕は保存目的のためにカチカチになるまで乾燥させている。屋外に置く時にはネコやカラスに注意すること。
パンを時々裏返しながら、卵液をしっかり吸わせる。最低でも2~3時間、時間があるなら、1晩かけて(暑い時期は冷蔵庫内で)吸わせることをオススメしたい。
写真・文 鈴木アキラ
1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。
【材料】
フランスパン(バタールもしくはバゲット)、卵2個、牛乳100cc、砂糖大さじ2、塩少々、メイプルシロップもしくは蜂蜜、サラダオイルもしくはバター、パウダーシュガー(※飾りのためなのでなくても可)
【作り方】
❶フランスパンを2~2.5cmの厚さにスライスする。
❷ザルなどに乗せて乾燥させる。
❸溶き卵に牛乳と砂糖、塩を加えてしっかりと混ぜ合わせ、卵液を作る(※卵液の分量は切ったフランスパン4切れ分に相当する量)。
❹バットなどに卵液を入れて乾燥させたパンをひたす。
❺時々裏返しながら、最低2~3時間かけて卵液をしっかりパンにしみ込ませる。
❻サラダオイルもしくはバターをひいたフライパンで卵液がしみたパンを焼き上げる。火はできる限り弱火にして、焦がさないように時間をかけて焼くのが最大のポイント。強火では、砂糖が入っているので焦げやすく、表は焦げて中は生ということになってしまう。
❼片面が焼けたらフランスパンにあいている気泡に残った卵液を流し込む。卵液を無駄にしないためと、中までしっかり卵の詰まったフレンチトーストが出来上がる。少しくらいわきに流れても大丈夫。
❽時々裏返しつつ両面を焼き上げる。
❾メイプルシロップか蜂蜜をたっぷりかけて食べる。パウダーシュガーを振るとぐんとオシャレに。