この原稿を書いている6月中旬の今、関東はまだ梅雨入りしていない。晴れの日が続くと真夏みたいに暑く、夏本番前なのに暑さにぼやいている。こんなときに楽しんでるのが、この季節しか見られないホタル観賞だ。日中暑くじめじめした日には、夜の田んぼや小川へ行きゲンジボタルとヘイケホタルの神秘的な光に酔いしれている。今回のテーマは水生植物をペットボトルに生けてインテリアとして観賞し、増えた分は食べて楽しむことのできるアクアイートテラリウム。そんなちょっとフィールダーらしからぬ、奥山らしからぬものに挑戦した。
まずは、休耕田や湿地を目指す。休耕田は田んぼを休ませているところを指すが、田んぼをやめてしまってヨシ原やガマなどがぼうぼうに生えた荒地になっているところが多い。休耕田でも水が流れ込んでいたりすると抽水生植物が多く生えている(抽水生とはイネのように水中の底から生えて、葉や花は水上に飛び出ている植物を言う)。その中にはクレソンやセリなどがあり、これらは水で栽培することが可能だ。選ぶ植物は「食べられるもの」と観て楽しめる「花の綺麗なもの」。また、田んぼの水路や田んぼの中でも色々と見つかるので、田んぼの持ち主に断りを入れて好きなだけ雑草をいただく。
水生植物を選ぶ時は見栄えを重視し、泥に手を突っ込み根を手触りで探し、掴んでゆっくりと抜いていく。古い葉は取り除き、長い根はちぎって短くする。何種類も見つかるので同じ種類で3~4本くらい採ると家に帰ってから選べるのでうれしい。生ける入れ物は、私は普段飲む飲料水の空いたペットボトルを使用するが、おしゃれな瓶や100円ショップなどで好きなものを用意してもよい。栽培は簡単でペットボトルに水を入れ、摘んできた植物を生けるだけ。観て涼しく感じたいので、見た目を重視しで選ぶ。ペットボトルの場合はキャップをしっかり締めれば倒して横にできるので、バリエーションが豊富で使い勝手がいい。水の中に色紙や小物を入れても綺麗に仕上がる。
田んぼで見つかる抽水生植物はコナギ、オモダカ、ウリカワ、ホタルイ、ハリイ、ホシクサ、イボクサ、セリ、オランダガラシ(クレソン)などで、他にも色々あるので、採ってきてから調べると楽しい。
また、水生の生き物を一緒に入れることもできる。小さなゲンゴロウ類やヤゴ類、オタマジャクシ、小さなエビ類、メダカや小さなドジョウなど。たくさんは入れずに、入れ物の大きさにもよるが2匹ぐらいが酸素を使わずに飼育するのにちょうどいい。生き物を入れた場合はあまり高温になると死んでしまうので、水温に気をつける。
セットを作りしばらくは、水も綺麗で見た目もいいが、何日かすると、入れ物の内側にコケがつくようになる。特に日の当たる場所はコケがつくのも早い。そんな時は面倒くさがらずに水を換え、入れ物の内側を拭いてコケを綺麗に取り除く。また、植物の育ちが遅かったり、枯れそうになったりしたら、水の中に入れる液体肥料があるので分量を間違えないように入れてあげる。セリやオランダガラシなどは節ごとに根を出し伸びるので、見栄えが悪くなったら剪定するといい。
様々なタイプのものを作り、いろんなところで飾って楽しんでもらいたい。夏の暑さをこれで涼しくしましょ。
ほとんどの地域で田んぼに水を張り、田植えが終わっている季節。田んぼの雑草も伸び始める季節でもある。今回は田んぼの雑草をいただく。種類も多く摘むのも楽しく、知るのも楽しい。
休耕田でも良い悪いがある。水が流れ込んでいるのは良い。ガマやヨシなど背たけのある植物が密で生えているところはダメ。水の中に根を張り、地上に葉が飛び出ている花の綺麗なものを選ぶ。
セリは食べることを前提にするなら間違えないように特徴を調べて摘む。独特の匂いがある。
形の良い株を、切らないように根ごと抜いたら、根についた泥を丁寧に洗い流す。
セリやオランダガラシ(クレソン)は地中の根が横に伸び、節ごとに根が出る。長い場合は節で切り離す。長い根も短く切る。
オランダガラシは茎が柔らかいので力任せには抜かない。節ごとに切り離せる。たくさん摘んで帰り、家で剪定するといい。余ったら食べる。
抽水植物図鑑
セリ
野菜としても有名で野生のものは葉が硬い感じ。白い小さな花が円状に数個の塊で咲く。
オランダガラシ
クレソンと呼ばれ食用。アブラナ科で小さな白い花がつく。花びらは4枚。伸びるのが早い。
ミゾカクシ
有毒で食用不可なので鑑賞用に。花が小さくかわいらしい。数本の株で花がたくさん咲くときれい。
ミゾソバ
葉の形に特徴的な模様が付く。花はちいさく、淡いピンクで可愛らしい。数個の塊で咲く。
コナギ
田んぼでは困り者だが観賞には見栄えが良くオススメ。花は小さく根元の低いところに青い花が咲く。
オモダカ
大きく育つので入れ物に注意。キツネの顔のような葉が特徴。花か白くスーッと伸びた茎の先に咲く。
アクアイートテラリウム
空のペットボトルを用意。ボトルを横にして使うので台として竹を使う。これを2本用意する。もちろん竹でなくても良いので、好きなデザインを考えても◎。
ペットボトルが乗っても転がらないように加工する。竹を縦に5㎜ほど割り、平な部分を作って竹が転がらないようにする。
ペットボトルが転がらないよう竹に溝を作るために、2本の竹の上にペットボトルを乗せて下書きをする。
下書き線に合わせてカッターやナタで竹に溝を切り抜く。乗せながら範囲を決めてカットするとやりやすい。
ペットボトルを置いてみて高さや傾きを微調整する。あえてボトルを斜めに置くのもデザインとして面白い。
ボトルの上になる側を四角く切り取る。四角じゃなくてもどんな形でもいいが、水が多く入るようにする。
ボトルに水を入れて植物を植えれば完成。植物の大きさや根の数など、バランスを見て完成させる。
大きめのペットボトルを使えば寄せ植えや数本入れることも可能だ。生花のような感覚でバランスを見て生ける。
ペットボトルを縦に使うと飲み口より細い根のものが生けられる。針金でフックを作れば吊るすこともできる。
完成!
今回は透明のペットボトルで作ったが、涼しげな色のついたものでも良いと思う。生ける入れ物は、あくまでも参考なので、色々挑戦してみてほしい。また、台も今回は竹で作ったが、見栄えの良い他のもので作っても良い。
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。