【vol.55】第23回 伝統保存食入門

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豚バラ肉のコンフィ

コンフィは低温の油で時間をかけて煮るフランスの伝統的な保存食の方法だ。語源のコンフィル自体が「保存」を意味しており、保存食の最も古い方法のひとつとされている。時間はかかるが作り方は簡単で、ピクニックなどには欠かせない料理だ。もちろんワインにもピッタリ合う。

フランス北西部の伝統保存食

昔、パリ~ダカール・ラリーの取材でパリに長期滞在していた時にプジョーチームのおじさんに聞いた料理。フランス北西部ロワール地方の伝統的な料理だそうで、時間はかかるけど、簡単でとてもうまいと自慢げに教えてくれた。地元では「アンジューのリヨー」と呼ぶそうだ。前に稚鮎のコンフィを作った時と同じように低温の油で長時間煮て作る保存食である。冷めてもうまいし、さまざまな料理に使うことができる。

フランスの肉屋は「何を作りたいのか、どういう道具立てなのか(フライパンの材質からオーブンのサイズまで)」こと細かく聞いてきて、それに合わせた肉を選んでくれる。パリでも、最初は「なんだこの日本人風情が」という顔だった店主が、「日本にもコルドン・ブルー(フランスの超有名料理学校)くらいあるんだぜ」と言ったら、途端にあれこれ世話を焼いてくれた(もちろん僕はコルドン・ブルーを卒業したわけでも何でもない)。

今、肉屋さんで肉を買う人はどのくらいいるのだろう。うちは近所に前回も紹介した田原精肉店という良い店ができたので、肉に関して困ることはまったくなくなった。豚肉も沖縄産のブランド豚が入手できるし、コロッケもメンチも激ウマだ。そしてとても親身に対応してくれる。肉でも野菜でも、やっぱり店の人といろいろ話して買うのが一番だ。

【材料】豚バラ肉600g、豚背脂300g、粗塩大さじ2、砂糖大さじ2、オリーブオイル大さじ2、タイム(生)4~5本、ローリエ2~3枚

【作り方】
いい豚肉は脂がうまい。特にバラ肉は脂の旨味が端的に表れる部位だ。沖縄や鹿児島の豚肉は脂がうまくてビックリする。多少値段は張るものの、仕上がりは絶対間違いない。
❶豚バラ肉は5~6cm角のサイコロ状に切って塩をもみ込み、保存容器に入れて1晩寝かせる。
❷背脂は1~2cm角程度に細かく切って、オリーブオイルを少し入れた鍋に、タイム、ローリエと一緒に入れて、ごく弱火にかける。次第に脂が液状になって染み出してくる。オリーブオイルは「呼び水」ならぬ「呼び油」のためのもの。溶けずに残った背脂のカスが焦げっぽくなる前に火を止め、カスは取り去る。
❸塩気と水気を拭き取った肉と②の液状になった脂を耐熱容器に入れ、90~100度Cに設定したオーブンで3時間煮る。途中、かき混ぜて脂が肉全体に回るようにする。鍋で作る際には超トロ火にして温度を上げないようにしてじっくり3時間煮込む。時々火を止め鍋の温度が上がらないようにして、この間は火から決して離れないこと。
❹脂から肉をあげたらキッチンペーパーで脂を拭き取り、砂糖を振りかけて各面を焼く。砂糖の皮膜を作ることで空気(酸素)を遮断し、保存効果を高めているのだ。
❺ガラス瓶などに入れて冷暗所で保存すれば1ヶ月以上の保存が可能。残った脂もさまざまな料理に使える。

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豚バラ肉は脂のうまさが特徴だが、今回は「あまり脂身の多くないところ」を切ってもらう。こういうオーダーができるのが肉屋で買う特権。背脂は「いいよ、あげる」ともらってしまった。いつもスミマセン。

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豚バラ肉は4~5cm角に切って、塩をもみ込み、ジップロックなどの密閉容器に入れて冷蔵庫で1晩寝かせる。そのまま焼いて食べたいくらいだが、じっと我慢。

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細切れにした背脂を極トロ火でじっくり煮込むと、次第に液状の脂分が染み出してくる。背脂の揚げカスは軽く塩を振って食べるとうまい。ビールのつまみに最高。

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写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。