【vol.55】酷道482号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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2019年5月開通!
最新酷道!
兵庫県豊岡市〜鳥取県八頭町

道路というのは、整備されて改良されてゆくもので、意図的に酷くなることはない。日本の国道は、1993年以来、1本も増えていない。国の根幹となる道路整備は既に終了しているという位置づけで、今後、増えることは無いとされている。

未整備のまま時代に取り残されてきた“酷道”も、少しずつ整備され、減り続けてきた。私の実感ではあるが、2000年頃には100本以上あった酷道が、ここ20年間で半減した。酷道はいずれ、消滅してしまう運命にあるのだろう。

しかし、そんな酷道が新たに誕生するという大事件が、令和に入ってから2件相次いだ。いずれも、これまで未開通となっていた区間が酷道として新規開通したもの。2018年に開通した416号は、本誌43号で書かせていただいたので、今回は2019年に開通した482号をご紹介したい。

昨年の夏、新たな酷道が誕生したと聞き、山陰に向かっていた。兵庫県豊岡市から、国道482号に入った。しばらくは普通の2車線道路が続く。スキー場を過ぎて集落を抜け、鳥取県が近づいてくると、道路の様子が一変した。

突然、明らかに狭くなった。舗装もガードレールもピカピカだが、とても狭い。“大型車通行不能”の看板が立っていたが、軽自動車でもギリギリの狭さだ。

2018年に開通した416号は狭くても安定感があり、腐っても国道だと感じた。しかし、この482号は舗装こそ新しいが道幅はデコボコしていて、安定感がまるでない。

その理由は、道路を新しく造ったわけではないからだ。昔からあった未舗装の町道を2001年に舗装、国道へ昇格させる計画だった。しかし、2004年の台風で甚大な被害を受け、通行止になってしまった。15年の時を経て復旧させ、悲願の開通となった。

元々町道だったため、線形は決してよくない。カーブの途中で角度が変わるのでハンドルを切りにくい。そんな道なのに何もかもがピカピカというのが、また面白い。通行止の原因だったと思われる大規模な災害復旧箇所も通過した。

軽自動車でも狭さを感じる道を走り、鳥取県との県境に到達した。開通した直後に訪れたためか、まだ側溝を造っている途中のようだ。工事中だったこともあり、なんだか少し寂しい県境だった。

ここから鳥取県若桜町へと峠を下っていくと、すぐに2車線道路になった。この峠の酷道区間は短く、10キロほどしかない。そのうち新規開通したのは、6・4キロ。短いながらも、存在感は十分だ。

酷道が新たに生まれるというのは、酷道趣味者にとって一筋の光だ。道路は安全で快適なほうがいいに決まっている。しかし、それがイコール楽しいとは限らない。刺激的で興味深い酷道が今後も細々と残ってくれることを、私は願ってやまない。

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いきなり始まる酷道区間。

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細い道の先に見えるのは、土砂崩れを補修した跡。大規模かつ真新しい。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/