焚火は人間の生存欲求に呼応し、眺めているだけで心安らぐものだ。ゆえに昨今のキャンプ人気に便乗して焚火をかじる一般誌のみならずアウトドアシーンを牽引する日和った老舗専門誌までもが雰囲気ありきの映(ば)える焚火を語って終わりである。確かに〝直火禁止〟が当たり前になりつつある今のキャンプ場では、沢ヤ、釣り師などの先人が生んだ野営直結の実用焚火は難しいかもしれない。が、ものは考えようである。焚火台の選び方や薪の配置を工夫するだけで直火に迫る実用焚火は可能だし、無理に実用性を追求しなくとも、もっとディープな焚火の楽しみ方は無数に存在するのである。雑踏から離れ、ひとりの時間を過ごすことが求められている昨今、薪の選別にはじまり、自分の力で火を熾し、美しい炎を育て、飯を作る、雰囲気だけではないやりがいのある焚火が1番面白い。
安全確実に楽しむソロ焚火術を学ぶ
焚火台活用BASIC SKILLS
キャンプ場で焚火を楽しむコツとは?
これまで先人から語り継がれる直火(地面の上で直接焚火を熾すこと)に特化して実用焚火術を解説してきた本誌だが、今回は昨今の情勢からわざわざ不便なアウトドア遊びに興味を持ってしまった愛すべき物好き、あるいは近場でも焚火を楽しみたい毎度お世話になっている玄人に向けて、キャンプ場での、つまりは焚火台ありきの焚火を解説したい。というわけでまずは焚火台の選び方から焚火向けサイト設営まで、その基本編からお届けしよう。
Point1 焚火台は火床の平面性にこだわる
実用~魅せる焚火までをカバーするファイヤーレイの自由度がキモ
クッカー直置きで飯を作るような実用焚火においては、焚火台の火床が平面であればあるほど良い。無論、その理由は地面と同じように数々の実用ファイヤーレイを構築できるからだ。代表格はメッシュ型だが、ハーフドラム型でも玄人御用達の実用焚火が構築できる。
[編集部推薦モデル]
WOLF & GRIZZLY
FIRE SAFE
9800円(税抜)
蛇腹状パネルの火床で効率的な燃焼が実現する焚火台。収納時のサイズはA4の縦半分ほどとコンパクトでバックパックに余裕で収まる。問エイアンドエフ03-3209-7575
自由度の高い 焚火台SAMPLE
メッシュ型
ハーフドラム型
Point2 焚火に時間をかけるためのサイト設営
焚火から目を離さずに休息できるタープシェルターがお勧め
ひとりでせっせと炎を育てるのなら、常に焚火の様子を伺える差し掛け式タープシェルター(タープの1~2箇所のみを吊り下げて後はペグダウンする最も簡易的な設営法)がお勧め。テント型でなくても焚火の熱を抱き込むことができるため、夜間も十分に暖かい。
ソロ焚火に適したサイトSAMPLE
写真のサイトは焚火台やクッカー、寝袋なども含め容量20Lのザックに入る。荷物の軽量化に繋がるのもタープシェルターの強みでお手軽だ。
Point3 火の成長に合わせた大小の薪を用意
画一サイズの市販の薪もナイフ1本で様々な大きさに割ることができる
キャンプ場での焚火となると落枝や倒木ではなく市販の薪を使うことになるだろう。そんな時は元の大きさのまま薪を焚火台に焚べるのではなく、ナイフで薪を割って火熾し用の木屑(火口)、焚きつけ用の細い薪(親指~手首径)を用意し、小さい方から順序よく焚べよう(原理はP17参照)。
1本の薪から作れるサイズSAMPLE
市販の薪サイズならバトニングという方法で薪が割れる。まずはナイフの腹を薪に当てて上から棒で叩く。ナイフが薪に入り込んだら、今度はナイフ先端を棒で叩いて割り切れば良い。
Point4 絶対的エースはロングファイヤー型一択
着火性も燃焼時間も実用性も◎の失敗しない焚火型をマスターするべし
猟師、釣り師、沢ヤなど、世界中のあらゆる玄人たちが用いるファイヤーレイがこちら。最初から大量の薪を配置できることに加え、着火後はその熱を抱き込む構造となっているので手をかけずに長時間燃え続ける焚火だ。最も単純にして実用性がある基本中の基本型である。
LONG FIRE型
ロングファイヤー型はゴトクやハンガーなどを用いずともクッカーが置けるため調理にも向いている。玄人が好む理由はこの実用性にある。
着火Point
着火方法は単純にロングファイヤー型の上で火口(着火剤etc)を燃やし、その上から大量の焚きつけを被せるだけで火が移る。
直火においては平行に丸太を置き、その間に大小の枝を入れて完成だが、焚火台なら一番大きいサイズの薪を左右に置くことで蓄熱効果が上がり、間に置いた細めの薪が長時間安定して炎を上げ続ける。