短い秋が始まった。今年は自然界の木の実の成りがあまり良くない感じがする。地域で異なるとは思うが、近所を見て回る限り明らかに実の成りが悪い。山で実が不作だとどうなるか? 少し考えれば誰でもわかると思うが、野生の動物たちに影響が出る。山に食い物がないから、里へ降りるっぺ~ということだ。予想ではあるが、今年は木の実を食べている動物たちが里へ降りてきて、人間界に被害が出るのではないだろうか。特にイノシシやクマなどは、ただ餌を求めて降りただけで「でたー!」と騒ぎ、挙げ句には撃たれてしまう。畑などを荒らすのでしょうがないといえばしょうがないが、出たら撃つはあまり賛成はしたくない。
秋といえば稲刈り。稲刈りといえば田んぼ。この時期、毎年欠かさず観察しているのが稲刈りが終わった田んぼだ。田んぼへ注ぐ水路を、もう用がないので止める。止めるとどうなるか?水路に水が残り、生き物が閉じ込められる。日を追うごとに、水路の水は蒸発や浸透し、減っていく。ちょうどいい時期をめがけて覗きに行くと、その残された生き物を目当てにして生き物が訪れる。私もその1人だが、そんな観察を同じ田んぼで数十年繰り返しやっている。ま~、遊びではあるが面白いのでやめられない。
10月上旬、晴れ間を見ていつも通う水路を覗くと、水がかなり減っていてほとんどの場所で干上がっていた。ここが干上がると水路の水は0になるという所まできていた。残された水を覗くとそこは魚がうじゃうじゃ。よく見るとほとんどがメダカだ。この周辺の田んぼでは、毎年繰り返されていることで、ものすごい数のメダカが干上がって死んだり、色々な生き物の餌になっている。この様子を見たらメダカが絶滅の恐れのある魚だとは誰も思わないだろう。とにかくすごい量のメダカだ。このメダカは多くの生き物の大切なタンパク源になっている。タヌキ、イタチ、アナグマ、アライグマ、サギ類などだ。ここ数年の間でこの周辺の田んぼではアライグマの足跡がどこに行っても見られるようになってきた。10数年前は珍しくて発見した時は驚いたが、今では当たり前のようになっている。残念だが、アライグマは非常に増えていることがわかる。
これだけのメダカを何もせず、動物に譲るのはしゃくなので、今回はこのメダカをかき揚げにして食べることにした。かなり昔に食べたことがあるが、めちゃくちゃ苦かった覚えがある。それを踏まえた料理にしたいと思う。
水路に残される魚はメダカだけでは無い、フナやタモロコ、運が良ければナマズやコイなども見つかる。大きな魚は鳥や動物たちに先に取られてしまう。今回もタイミングは少し遅かったので残っていたのは小さな魚ばかりだった。
ザリガニやドジョウ・タニシは湿った土の部分で次に田んぼに水が入るまで潜って越冬する。これが最近の田んぼのように水路がコンクリートのU字工だと全て食べられるか日干しになる。土でできた素掘りの水路はこういった生き物を残す役目もしていたのだ。
私はどうしても生き物寄りにみてしまうので、最近の手間のかからない田んぼを否定してしまうが、田んぼをやっている人にしてみたら、お米が確実に作れ手間のかからない田んぼの方がはるかにいい。文句は言えないが、もう少し生き物寄りにも考えてほしいところだ。
装備
田んぼでの採集は特に川の中に入るわけでもないのでラフな格好。くっつくタネがこの時期多いので、フリースなどはやめた方がいい。ナイロン地などがオススメ。網とバケツ・長靴でOK!
日本人に最も親しまれているメダカ。正式にキタメダカとミナミメダカに分かれる。最近では改良された種がどんどん増え、メダカ飼育が大人気になっている。日本中に生息する。
水路の水は最近まであったようだ。どんな動物が来たのか足跡で動物を判断する。何をしていったのか想像するだけでも楽しい。
残された水の中には色々な魚が所狭しと泳いでいる。メダカは脅さなければ水面を泳ぐのでわかりやすい。
水たまりにいる魚をすくうような感じだ。採れるとかいう次元ではない。ひと網ひと網が大量!
田んぼの足跡図鑑
アライグマ
さて、この足跡は? 特徴は手も足も指が長いこと。他の動物とは全く違う足跡。関東では近年増えてきている外来動物だ。
タヌキ
猫の足跡に似ているが、猫は爪を引っ込めているので違いがわかる。田んぼや里の民家の周りで冬になると増える。
ニホンイタチ
まずはとても小さい。イメージ的に尖った足跡。爪の形がはっきり出る。肉球が分かりにくい。指先に力を入れて歩くのか?
サギ or カラス
鳥は判別が非常に難しい。大きさからカラスか大型のサギ(ダイサギ? アオサギ?)。カラスはサギに比べると大きく指を開かない感じでややスリム。
メダカのかき揚げ
1.材料は、以前食べて味を知っているのでタマネギとニンジンを混ぜることにした。メダカはかなり苦い。
2.水を切って細かなゴミをチェックし取り除く。あえて違う魚やエビなどを入れても楽しい。エビは特に最高。
3.天ぷら粉と水を1対1で入れてダマをなくし、メダカ・タマネギ・ニンジンを入れて混ぜる。
4.180度の油で、どんぶりの大きさに合わせ丸く揚げる。サクサクにするにはあまり厚くしないようにする。
5.揚げ終わったら油を十分切る。どれだけ苦いのかメダカだけを味見してみる。食べた人にしか解らない味。
完成! はっきり言えばまだ苦い! しかし、玉ねぎとニンジンは正解だった。欲を言えばヌマエビを混ぜて揚げると美味しくなりそうだ。
メダカの見分け方
オス
メス
メダカのオス・メスはヒレで見分ける。魚の繁殖は、オスが卵に精子をかけて受精させる。メダカもそうだが他の魚と違うところは、オスがヒレでメスを抱きかかえ卵に直接精子がかかるような仕組みだ。そのために、オスの尻ビレと背ビレはメスと形が違う。また、繁殖の雄は多少婚姻色が出る。
他に採れた魚たち
ギンブナ
タモロコ
カワムツ
ドジョウ
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。