【vol.53】ニホンウナギをいただきま~す

長い梅雨が明けたと思ったら猛暑の連続。夏ってこんなに暑かったかと思うくらい体にこたえる暑さが続いている。仲間内では「暑さと戦うな~」と、毎日のようにSNSで生存確認をしている。暑さから避けるのも自然界では大事な防御である。年齢的にもあまり使わないSNSがかなり役に立っている。

さて、最近私の周りではルアーで釣るナマズ釣りが流行っている。釣れるとサイズのわかる写真を撮り、グループLINEに載せている。今現在62㎝が最大である。釣れたナマズは各自でさばき、料理をして写真をあげる。無駄に魚と遊ばないのだ。

ナマズは梅雨時に川を上り、産卵のため田んぼの水路へと移動し、産卵後もしばらくは田んぼの水路に残る。釣りメンバーは仕事終わりの夜に田んぼの水路でナマズを狙っている。ところが、ここ最近田んぼの水路でウナギの目撃が相次いでいる。しかもでかいという。私は、みんなに内緒でルアーを外し、大きなハリに変え、そのウナギのいる場所を聞き出しミミズを餌にこっそりウナギ釣りに挑戦した。

太く大きなミミズを日中に用意し、ウナギの行動する夜に出かけた。あまり期待はせず、夕涼み程度な気持ちで夕食を済ませ21時ごろから釣りを始めた。餌のミミズはふさがけに4匹つけ、リール竿にオモリとハリのついた簡単な仕掛けを投げ込んだ。仕掛けを投げて30分。だまってられない私は竿を置き、周りを散策し始めた。雑木山と田んぼをライト片手に生き物を探しに歩いた。釣りも楽しいがこっちも楽しい。樹液の出ているクヌギにミヤマクワガタやカブトムシを見つけた。

1時間ほど放置した釣竿をチェックするとなんと竿がガタガタ動いている。「おおお~」掛かってる! リールのドラグを緩めていたので、慌てて巻いても全然巻けず、落ち着きを取り戻し、ドラグを締め巻くとかなりの重さが竿に伝わった。水面では暴れる何かがかかっている。ライトで照らすと大きなウナギ! こんな大きなウナギは初めて見た。逃さないように急に慎重になり、タモ網で尻尾から網におさめた。やった! ウナギじゃ! やばい気持ちが焦っている。興奮が止まらない。沖縄で見たオオウナギのような大きさだ。やばいやばい黙ってられない! ナマズ仲間のラインにそのウナギの写真を流した。釣り上げバケツに収め興奮しているとナマズメンバーが3人駆けつけてきた。「すげーっ! やったじゃん!」みんなそのウナギのサイズに大興奮。メンバーの1人がメジャーで測るとなんと86㎝! 太さは私の手首くらいある。本当に大きなウナギだ。駆けつけたメンバーたちの頭の中にはみんな蒲焼きが食えるかよぎっているに違いない。私もとんでもない大きさの蒲焼きが想像できた。今まで何匹ものウナギを釣っては食べてきたが、ここまで大きなのは初めてだ。

興奮しながら家まで車を走らせた。泥抜きをするので2~3日水槽に入れる。釣った時でもそうであるが、必ずフタをする。ウナギもナマズも脱走の名人。フタのないバケツで何度も失敗している。脱走したウナギが風呂場でみつかったり、冷蔵庫の裏で半分硬直して発見されたり、さばくまでは目が離せないのだ。

さて、問題が生じた!こんな長い魚を家でさばいたことがない。まな板もそうだが、どこでさばくか? 2日後が楽しみだ。

ニホンウナギ/ほぼ日本中に分布。夏の暑い時期、日本では夏バテ防止に栄養価の高いウナギを食べる風習がある。南の海底で産卵し、稚魚が川へと上り育つ。謎多い魚だがだんだん解明されてきている。

田んぼの用水路にウナギがいるという情報を元に、ウナギを狙う。川幅は約1m。田んぼの間を流れ、砂・石底でヨシなどが生えている。真っ暗の中ライトを当て仕掛けを入れる。

リール仕掛けの竿に流されないようにオモリを付け、大きな魚用のハリをセット。太いミミズを4匹ふさがけにして投げ込む。

仕掛けを投げ込み約1時間。竿にアタリがきた。この水路ではナマズやコイ、フナなど色々いるので姿を見るまではドキドキする。

でかいウナギだ! ライトで照らすと長く太いウナギが照らされた。糸が切れないかハリが外れないか緊張しながら網ですくった。

今までなんどもウナギを釣っているが、こんな大きなウナギは初めてだ。しかも田んぼの水路。釣り上げた興奮から冷めたころ頭の中に蒲焼きが出てきた。何人前の蒲焼きができるのだろうか?楽しみだ!

ウナギを調理する

 

※ウナギの血は毒(イクチオヘモトキシン)があるのでさばくとき、生食には十分注意すべし。

①釣れたウナギを水槽で泥吐きをさせるため3日飼育。愛情がわかないようにできるだけ見ないようにしていた。ハリを飲んで釣れたので口の中にハリが残る。

②体が長く、さばくときにクネクネあばれまわるので、袋に氷水を作りウナギを数分入れる。プロはそのままいくが、慣れていない人は冷たい水で大人しくさせる。

③暴れ防止に、千枚通しやキリなどで、目打ちをする。エラの辺りの硬い部分に刺し、まな板に打ち込む。長い板をまな板の代わりにした。

④エラビレの下あたりに包丁を入れ、中骨に沿って背開きにする。腹側に刃が突き抜けないように注意する。腹・背どちらでも構わない。

⑤中骨を取り除く。切れ味の悪い刃物だったのでさばきづらかったが、なんとか終了。太く大きなウナギだったので4人分とれた。下ごしらえ終了。

ポイント

皮にぬめりがあり、ニオイの元にもなるので、熱湯をサッとかける。皮の表面のぬめりが、白くなり、多少身が縮む。長くつけないのがコツ。

⑥皮の部分の白くなったぬめりを布やスポンジできれいに取り除く。このぬめりが、いわゆる"土臭い"の原因でもある。皮の厚いナマズにも有効である。

⑦蒸し器に入れて30分中火で蒸す。蒸すことで、柔らかく出来上がる。身が蒸すことでけっこう縮みなんか損した気分になる。せこい男と反省する。

⑧皮がパリパリになるように皮の部分を先に焼く。脂が落ち炎が立ち上がる。蒸しており生ではないので身の方は軽く炙るだけでも大丈夫だ。

⑨タレをフライパンに入れ焼きの入ったウナギを漬ける。3回ほど焼く漬けるを繰り返した。

⑩とにかく身の厚みがすんごい。ウナギ屋さんで食べるうな重の倍の厚みはある。

完成!

夢の天然ウナギの2段重ね! ご飯を軽く盛り、タレをかけて一人前のウナギを乗せる。その上にまたご飯を軽く盛り、タレをかけ1人前のウナギをのせて完成。あまった2枚は細かく切り、ひつまぶし。お湯をかけお茶漬けが絶品。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。