【vol.52】第20回 伝統保存食入門

稚鮎のコンフィ

なんだかオシャレっぽい名前の「コンフィ」。実はフランスの伝統的な保存食のひとつだ。メインというより前菜的な立ち位置で、何かもう一品欲しい、という時に最適。冷めたままでも、温めてもおいしい。辛口の白ワインにピッタリの品。夏のキャンプに是非どうぞ!

南仏の伝統保存食

フレンチレストランのメニューにも載っていて、結構なお値段のする料理のひとつに「コンフィ」がある。実はこれ、冷蔵技術が発達する前からある南フランスの保存食のひとつだ。原語となった「コンフィル」自体が「保存」を意味する言葉であり、言わば生粋の伝統保存食と言える。肉や魚などをオイルでじっくり煮た後、そのまま漬けることで空気を遮断し、保存するのがその手法だ。日本でもそうだが、油というのは昔はとても貴重品であったから、オリーブオイルの産地である南仏で発達した料理なのだろう。

食材を90~100℃程度の低温の油で長時間煮込むという、単純ではあるけれど難しい料理だから(ちょっと気を抜くと油の温度が上がってしまう)、昔は火加減を見ながら鍋の前に3時間も4時間も張り付いていなければいけなかったハズだが、今は温度を一定に保てるサーモスタット付きのフライヤーやオーブンがあるから、決して難しい料理ではなくなっている。今回は電気式のオーブン(僕が中学生の時から使っている50年モノ)を使用した。

今回の食材は春~初夏の味覚、稚鮎。ワタのほろ苦さが濃厚な旨味を醸し出していて、辛口の白ワインやスパークリングワインにピッタリだ。ニシンの稚魚や小アジ、ワカサギなどの小魚のほか、切り身魚でも応用できる。是非お試しあれ。

【材料】稚鮎20尾程度、塩大さじ3、ニンニク2~3かけ、レモン1個、ローズマリーひとつまみ、ローレル2枚、ブラックペッパー10粒程度、オリーブオイル約200cc、グレープシードオイルまたはナタネ油約200cc(オリーブオイルとグレープシードオイル半々で稚鮎がひたひたになる量)

【作り方】
❶稚鮎は爪でお腹を押してフンを出し、包丁の背や粗めのスポンジなどでヌメリを落とし、水洗いし、水気を切っておく。
❷バットなどに並べ、塩を振り、半日から1晩おく。
❸オリーブオイルとグレープシードオイル(またはナタネ油)を半々に合わせたものにローズマリー、ローレル、ブラックパッぺー、半分に切ったニンニク、スライスしたレモンを入れる。オリーブオイルとグレープシードオイルを半々にするのは冷蔵した際に油が固まるのを防ぐため。固まってもいいなら全部オリーブオイルでもいい。
❹③に②を入れて中火で一煮立ち(120~150度C)するまで煮る。
❺耐熱容器に移し、90~100度Cに設定したオーブンに入れる。④の鍋がそのままオーブンに入るならば、それでも可。
❻3~4時間じっくり熱する。温度設定がされていても時々様子を見るのを忘れないこと。
❼煮沸消毒した保存瓶に入れて保存する。
❽保存したものを食べる時にはそのままでも、フライパンで軽く焼いてもいい。漬けた油をパンに塗って食べてもうまい。

当然のことながら、稚鮎はできる限り新鮮なものを選ぶこと。ほとんどの鮎料理はワタを抜かずにそのまま使うので、新鮮さが出来上がりを大きく左右する。鮎はワタを食べると言っても過言ではない。

ワタは抜かないがフンだけは出しておく。爪先で鮎のお腹を絞るようにしてフンを押し出す。その後、包丁の背などでヌメリをこそぎ落として水洗いする。

耐熱容器に入れてオーブンにセット。できれば90℃にセットしたかったのだが、うちのオーブンは最低温度設定が100℃なので、それで我慢することにした。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。