何かとその装備が我々アウトドアマンの参考とされる世界最強の男、ベア・グリルス。極限環境を生き抜くうえでは、ナイフやロープはもちろん、行動時間を正確に把握するための腕時計も欠かせない装備の1つだ。ここではついに明らかとなった、ベアが選んだ究極のフィールドウォッチをお届けしたい。
プロの装備選考基準は命を預けられる信頼性
どんな世界でも極限環境へ身を投じるプロフェッショナルたちが選ぶ道具には共通点がある。それは人間の情報処理能力を遥かに凌駕したCPU制御機能でも、特定の場面で最大限の効果を発揮する複雑なギミックでもなく、シンプルで壊れにくく、その道具本来の用途を追求したカタチとなっているか、である。
当然かのサバイバリスト、ベア・グリルスだって選定基準は同じだ。彼が選んだ腕時計は、自分の位置が正確にわかるGPSウォッチや様々なアプリをインストールできるスマートウォッチではなかった。彼に必要なのはいつ何時でも時刻を瞬時に把握できること、屈強かつ軽量で行動の邪魔にならないこと、つまりは腕時計として当たり前の仕事を、最高レベルでこなせることなのだ(※)。
だからベア・グリルスはルミノックスを選んだ。ボタンなど押さなくとも約25年間絶え間なく発光を続ける「LLT(ルミノックス・ライト・テクノロジー)」、そしてカーボンと強化樹脂からなる軽量高剛性な「CARBONOX™」ケースという同ブランド定番のコンビは、彼の要求を完全にカバーしていたのである。
ルミノックスの歴史を辿れば、世界最強の特殊部隊と言われる米海軍所属の「ネイビーシールズ」に行き当たる。同ブランドが誇る腕時計ラインナップは、彼らが極限環境下でのミッションを完璧にこなすために作られた腕時計「ネイビーシール3000シリーズ」の系譜を継いでいるのだ。同じく極限環境に身を投じる世界最強のサバイバリストがこれを選ぶのも、至極当然の流れなのである。
※自分の位置情報や1日に摂取するべきカロリー計算は、それこそ彼自身の知恵と技術があれば事足りる
「ベア・グリルス サバイバル 3780 ランド シリーズ」に見る
サバイバルギアとしての実力
まずはベア・グリルス コレクションのラインナップを解説する前に、陸上でのサバイバルに特化した“ランド”シリーズを例にとってその実力を検証してみたい。腕時計としての性能は言わずもがな、ベア・グリルスはこんな実践的アイデアも投入しているのだ。
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パラコードベルトを採用した「Ref.3797KM」の場合
パラコードで編まれたベルトが見た目にもその実力を醸し出している「Ref.3797KM」。ベルトに柔軟性があり、着用感に優れている点も見逃せないポイントだ。
パラコードを取り出せばいざという時に役立つ
個体差もあるが、ベルト部のパラコードを解くと70cm弱のコードが2本取れる。パラコードは7本の芯と皮膜からなるゆえ、これだけでも裁縫から釣り糸、網などの小道具製作に存分に活用できるのだ。万が一の際の心強いお守りと言える。
手軽に自分仕様のカスタムが施せる点もパラコードベルトのメリット。様々な柄がラインナップされる市販のパラコードを用いれば、すぐさま一点物の腕時計が完成する。長めに編めば、レインジャケットなどの上に装着することも容易になる。
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ラバーベルトを採用した「Ref.3781KM」の場合
パラコードベルトに比べてシンプルな「Ref.3781KM」だが、単なるラバーベルト仕様に見えて、コンパスとの合わせ技で抜群のフィールド性能を発揮する。
読図を実践できるコンパスも搭載
磁北線を引いた地形図に「Ref.3781KM」を置き、地形図上の現在地と目的地をベルトのスケール部で結ぶ。その状態でコンパスsのダイヤルを回して「N」を磁北線に合わせ、コンパスが地面と水平になるよう腕に装着。最後に身体を回転させて方位磁針をダイヤル「N」に合わせれば、時計のフェイス面が目的地への進行方向となる。要はプレートコンパスと全く同じ使い方ができるのだ。
ベルトにはセンチ〜インチスケールのほか、2万5000分の1および5万分の1地形図に対応する距離計、数字やアルファベット、SOS信号などのモールス信号表が記されている。どれもサバイバルには欠かせない情報だ。
OTHER SKILLS
覚えておきたい時針を用いた方位測定法
時計を水平にして時針を太陽の方向に向けたとき(写真では4時に太陽がある)、時針と12時位置のちょうど中間に位置する方向(写真では2時)が南となる。これはどんな腕時計でも実行できるスキルなのでぜひ覚えたい。
行動のペース配分を視覚化する ウォーキングスピードスケール
飛行機の速度を計る“タキメーター”を歩行スピードに合わせたのが「ランドシリーズ」に搭載される“歩速計”。歩行開始とともにストップウォッチ機能をスタートさせ、50m歩いた時点でストップ。クロノグラフ針が差した数字が歩行速度(時速)となる。
見た目~実力ともに本格派アウトドアマンのフィールドワークに馴染む
ベア・グリルス サバイバル コレクション一覧
ここではベア・グリルスコレクションのラインナップを紹介する。前出のランドシリーズほか、ネイビーシールズ由来のルミノックスを象徴するシーシリーズ、ベアも写真で着用しているマスターシリーズがあり、それぞれべア・グリルス自ら指定した機能が投入されている。
Luminox
BEAR GRYLLS SURVIVAL 3780 LAND SERIES
実践的スペックが光る 真のサバイバルウォッチ
ルミノックスが誇る時計としての性能+ベア・グリルスのアイデアが投入された実践的サバイバルモデルと言えるのが3780シリーズ。前出のベルトを用いたテクニックはもちろん、時計本体には45mm径のビッグケースを活かしたクロノグラフも搭載されているので、フィールドでの正確な時間計測も可能だ。200m防水。
Ref.3797KM
7万7000円(税込)
Ref.3781KM
7万1500円(税込)
メカニカルな格子のエンボスが施されたダイヤルには時針、分針、クロノグラフ針のほか、スモールセコンドとデイト、クロノグラフ用の30分積算計が備わる。
パイロットウォッチに見るタキメーターの代わりに備えられた歩速計。目的地までの距離から到着時間を予測するなど、歩行スピードの把握はかなり役立つ。
ランドシリーズはカラーバリエーションだけでなくベルトの仕様が異なっているのもベア・グリルスのアイデア。機能性は前項で紹介した通りだ。
LLT
夜間などの暗闇においてはシンプルな自己発光パターンとなるランドシリーズ。必要最小限の視覚情報とすることでわかりやすい。
Luminox
BEAR GRYLLS SURVIVAL 3740 MASTER SERIES
圧倒的タフ性能を誇るフラッグシップモデル
同コレクションのフラッグシップに相応しく、ケース素材にカーボン含有量を増やした「CARBONOX+™️」を採用するタフなクロノグラフウォッチ。風防にもワンランク上のサファイアクリスタルガラスを採用しており、ハードな環境で長年使用しても優れた視認性を維持してくれる。ベア・グリルス着用モデル。300m防水。
Ref.3749
10万7800円(税込)
Ref.3741
10万7800円(税込)
45mm径のビッグフェイスにはクロノグラフ用の30分積算計および12時間積算計が備わり、長時間の観測ミッションなどにも◎
コレクション共通となるオレンジゴム付きステンレスリューズは耐久性、操作性ともに抜群。細部にまでベアのこだわりが活きる。
2つのカラバリエーションが用意されたマスターシリーズには、両モデルともにコンパスが付属する。シーンに応じて脱着できる。
LLT
交互に縦横が入れ替わるインデックスの発光パターンは、暗闇でも瞬時に時刻を把握できる。見た目のインパクトも抜群。
Luminox
BEAR GRYLLS SURVIVAL 3720 SEA SERIES
シンプルゆえに実用に長けるハイスタンダードモデル
米海軍特殊部隊ネイビーシールズも採用した、シンプルでいて確かな防水性と軽量ボディを両立したルミノックスのダイバーズウォッチは革新的。この3720シリーズもスタンダードな3針仕様ながら、軽量高剛性な「CARBONOX™️」ケースと200m防水で、あらゆるフィールドに対応する基本性能の高さを誇っている。
Ref.3729
5万5000円(税込)
Ref.3723
5万5000円(税込)
装着感の良い42mm径のケースにはシンプルながら上下異なるテクスチャーを備えたダイヤルをセット。機能的な佇まいを演出する。
ダイバーズウォッチの定番機能と言えるカウントダウンダイブゾーンには同コレクションのコンセプトカラーを採用して存在感も◎
天然ラバー×ウェーブ形状で形成されたベルトも柔軟でいて長年の使用にも耐える隠れた機能パーツと言えるだろう。
LLT
明るみでは如何にもダイバーズウォッチ的なドットインデックスを採用するが、暗闇では機能性に溢れたバーインデックスとなる。
SPECIAL COLUMN
サバイバル登山家の腕時計
〜“必要最小限”の中に見る確固たる信頼〜
文/服部文祥
ートリチウム発光ー
まどろみからすこしだけ覚醒側の状態で、右目だけを薄く開けて世界を見る。
場所が小蕗の家で、夜中ということはわかる。真っ暗である。なんとなく時間を予想しながら、ちゃぶ台を見る。淡い緑色の光がジンワリ広がっている。ルミノックスのトリチウム発光機能「LLT(ルミノックス・ライト・テクノロジー)」である。布団から手を出して、時計の文字盤が見えるように角度を変え、布団に戻す。
最後に薪を足してから、何時間経ったかを軽く考える。深く考えてはいけない。すぐにまどろみの世界に戻るためだ。もう一眠りしてもホダ火は消えない、と思いながら、膀胱へ軽く意識を向ける。こっちもまだ、大丈……夫、くらいでもう意識は薄れていく。
ー狩猟用ウォッチー
できるだけ自分の力で山に登りたいと思って、サバイバル登山をはじめた。極力現代装備を持たず、食料や燃料を現場で調達しながら続ける山旅である。時計も持たないほうが面白いので持っていない。
そんな登山をしているので、常日頃から腕時計などしていないと思われているが、生活やアウトドア活動全般でまで時計を否定しているわけではない。冬、特に狩猟では腕時計が重要だ。私はルミノックスの3000シリーズを使っている。
銃猟では二つの点で時間を意識しなくてはならない。ひとつは銃が撃てるのは日の出から日の入りまでと法律で決められているため。もうひとつは、ケモノたちの生態上、出会いのチャンスが多いのは、日の出直後のためである。
ときには零下にもなる猟場でシュラフに潜ったまま夜を過ごすことがある。ふと目覚めたときは日の出までの時間を確認したい。日の出までの時間がある場合は、すぐに無意識の世界に戻りたいので、細かいボタン操作はもちろん、ヘッドランプで時計を照らすなどということはしたくない。
どうでもいいことのようだが大切である。身体の状態が万全でなければ、大型獣など獲れない。というかそもそも獲る意欲がわいてこない。そして、前日の疲労をリセットするためには質のよい睡眠が最重要要素なのだ。
ルミノックスのライトテクノロジーがそれを支えてくれる。シュラフから出ることなく、ちらりと文字盤を見て、寝返りを打ってまた夢の中へ。寒気に触れることも、睡眠の流れを損なうこともなく、状況を把握しつつ英気を養うことができるのだ。
ー二七グラムー
次の半覚醒で、日の出の時間が近づいていることを、ルミノックスで確認する。愛犬のナツも黎明であることを感じて、そわそわし始めている。同行の友人夫婦はまだ眠っている。
「おれは朝いちでナツと散歩してくる」と昨晩言ってあった。いっしょに行ってもいいけど、短時間の朝散歩だし、私とナツだけのほうが獲れる確率が高い、ということがなんとなく言いぶりから伝わった。
友人を起こさないように隣の部屋に移って、冷えきった服に着替え、土間に下りる。銃を持って、そのままそっと敷居を跨いだ。
ナツが下へ行きたがるので、下へ。だがケモノの気配はない。そのまま、大蕗の集落を抜けて、山の上を横断する林道に上がる。ぐるりとまわって、小蕗の山小屋に戻ることにする。
まだ小蕗の小屋で眠っているはずの友人は文学部の同期である。必修科目のテストで私の隣に座り、山ばかり登っていて完全フリーズ状態の私に解答用紙を見せてくれた。必修の八単位が取れたのは友人のお陰であり、ひいては私が学位を持っているのも、この友人のお陰である。成績の良かった友は大学を卒業してなぜか庭師になり(本人は文学と庭は深い繋がりがあるという)、成績の悪かった私は文筆(と山)で生きるようになった。シーズンに一度、私の猟についてきて、鹿肉を持って帰る。ただ、今回は庭師の目から見た、小蕗の果樹や畑の未来予想を聞くというのが第一の目的で、狩猟はどちらかというとおまけだった。
だから獲れなくても良かった。時計を見る。私はルミノックスをヤッケの外に着けている。軽量カーボンボディは傷だらけ、風防にも傷が見える。すでに一時間以上歩いていた。潮時だ。いつもの草原を最後に見て帰ろうと草原に足を向けると、ナツがジッと渓を見下ろして動かなくなった。こういうときはなにかいる。ヤマドリか鹿かイノシシか。
「見に行く?」という感じでリードを緩めると、ナツが激しくロープを引いた。そのまま斜面を降りていくと、対岸の斜面に鹿が立っていた。距離は三〇メートルほどしかない。
斜面に座って銃を固定し、引き金を引く。ルミノックスのカーボンボディは玩具のようだが二七グラムという軽さが存在を主張せず、冬でも冷たさを感じない。全体の質量が均一で腕にぴったり収まり、射撃の邪魔に感じたことは一度もない。
銃声とともに転げ落ちる鹿に反応して、別の鹿が斜面の上で動き、逡巡するように止まった。
「もうひとつ?」
レバーを操作して、スコープを覗くと、鹿は樹の向こうから首だけを見せていた。その首を撃ち抜く。二頭目の鹿も斜面を転げ落ち、最初に撃った鹿の横で止まった。
文学部の同期と出猟すると毎回多頭獲りになる。友人は悪魔的な猟運の持ち主らしい。
服部が愛用しているのはルミノックスの定番モデル「ネイビーシール3000シリーズ」。屈強かつ軽量な「CARBONOX™️」ケースと環境によらない視認性を提供する「LLT」のコンビは、どんなハイテクウォッチにも勝る実用性がある。
撮影スケジュールの管理などもこなさなければならない山岳雑誌「岳人」取材時にも、服部はルミノックスを装着している。強靭な腕時計ゆえ、行動時はあえてヤッケの上に装着し、袖口からの雪の侵入を防いでいるという。
服部文祥
はっとり・ぶんしょう/登山家。作家。
1969年横浜生まれ、在住。94年東京都立大学フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。登山をオールラウンドに高いレベルで実践し、96年には世界最難関の高峰K2(8611m)に登頂。99年から長期山行に装備を極力持ち込まず、食料を現地調達する“サバイバル登山”をはじめる。登山に関する多数の著書を上梓しているほか、近年では自身の経験と思想を糧に小説家としても活躍している。徒歩旅行ルポ「ツンドラ・サバイバル(みすず書房)」が第5回梅棹忠夫山と冒険文学賞、小説「息子と狩猟に(新潮社)」が第31回三島由紀夫賞候補となった。山岳雑誌「岳人」編集者。
屈強かつ軽量なカーボンケースと常に発光を止めないLLTが最高のフィールド性能を発揮
ベア・グリルス・コレクションに限らず、ルミノックスのミリタリーウォッチに一貫して採用されているカーボン×強化樹脂の複合材からなる「CARBONOX™️」ケースと、トリチウムの放射性崩壊をエネルギーとした約25年間自発光システム「LLT」のコンビ。軽く、強靭で、いつ何時でも視認できる性能こそ腕時計に最も必要なスペックと言えるだろう。複雑な機能をいくら備えたところで、極限状態で重く、すぐに壊れてしまっては意味がない。
ベア・グリルス コレクションの発売日につきまして
新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、4月発売を予定しておりました同コレクション発売日に関しましては現在調整中となっておりますので予めご了承ください。発売日および各店舗の営業情報などはルミノックス公式サイト、公式SNSにて随時更新しております。同コレクションの発売に関しましても決定次第お知らせいたします。
■公式ホームページ http://lumiox.jp
■公式Instagram @luminox_japan
■公式Facebook @luminoxjapan
■公式Twitter @LUMI_NOX
Luminox
Bear Grylls Survival Collection
[ルミノックス・ベア・グリルス コレクション]
ディスカバリーチャンネルの大人気番組「MAN vs. WILD」で一躍世界最強のサバイバリストの名をほしいままにしたベア・グリルス。彼自身、ネイビーシールズの手本にもなった特殊部隊の先駆け、英陸軍特殊空挺部隊「SAS」出身とあって、その腕にルミノックスが巻かれるのも必然と言えるだろう。
極限を知る者は皆「諦めない」精神こそ最高の力になるという。ネイビーシールズの標語にも「Never Quit(決して諦めない)」という言葉があるが、ベア・グリルスコレクションのケースバックにも全く同じ意味を表す言葉が記されている。
同コレクションには特別にベア・グリルスからのサバイバル指南書が付属される。極限環境下での食糧調達や寝床確保などの知恵だけでなく、時計を用いた実践的スキルも紹介されているので要チェックである。