【vol.51】カタクリをいただきま~す

今年の春はなんだか様子が変で桜なんかめちゃ早く咲くし、アカガエルに関してはとんでもない早さで産卵が始まった。こういった異常気象によって自然界に生きる生き物に大きな変化やダメージなどが起こる。今年は平均と比べれば全体的に1ヶ月以上早い春と言える。これは私の住む関東での話だが、おそらく全国でも同じではないかと思う。私なりの関東での春は、近くの梅が咲くと郊外でアカガエルが産卵、トウキョウサンショウウオが産卵となる。身近な生き物や植物を見て何かが始まることの目安にしている。ただ、今年のように狂うとそれがずれたりして、上手く観察できなかったり、無駄足を踏んでしまったりする。異常気象は自然界また人間界にも大きな影響が出るので今年の夏や秋がどうなるのか想像もつかない。

今回は毎年観察しているカタクリの群生地でカタクリを採集し食べることにした。カタクリは野山の花の中でもかなり人気のある花で、バスツアーやカタクリを見る会などが全国にたくさん存在するほどだ。そのカタクリを食べちゃうなんて、何考えてんだ~と思われるかもしれないが、食べます。

カタクリは山間部の里山で群生する草で、条件が合えばものすごい群落をみせる。確かに貴重で守っている所も多いが、それは育て方が下手か、いじりすぎなのだ。私の知っているカタクリはそこら中にわんさかと花をつける。例えば新潟県では田んぼの土手にタンポポよりカタクリの方が多く咲いてたり、秋田県では山という山のふもとに群生していたり。関東では少なくなってきてはいるが、東北などでは当たり前のように大きな群落が広がる。現在流通している片栗粉の多くはジャガイモから作られているが、その昔はこのカタクリの根っこの球根から片栗粉が作られていた。カタクリは花から球根まで全部を食べることができる。山菜は季節ものなのでたくさんじゃなく少量を毎年味わってほしい。

私は、山菜はあまり好きじゃないが、春を見に散歩気分で出かけた時、食べごろなものを見ると摘んで帰る。今しか食べられないと思うと貧乏根性が働いて摘んで持ち帰り食べている。春の散歩は山でも里でも色々と食べられるものが多く、知っていると楽しい。毒じゃなければなんでも食べられる。味の好みは人それぞれで、私はどうもクセの強いのが苦手だ。今回のカタクリはその中でも上位で美味しい。クセの強いものはだいたい天ぷらにすればほぼ食べられる。

毎年同じ散歩コースを散歩しているが、カタクリの群生地の手前にタラの木が数本ある。毎年芽が摘まれている状態なのに、なんと今年は誰にも摘まれていなく、ちょうど食べごろで芽吹いていた。クセの強いタラの芽だが、こんなチャンスはないと、大きい順に数個採取した。なんだか〝摘む〟とか〝採る〟とかってテンションが上がる。タラの芽を摘んでウキウキしながらカタクリの群生地に到着した。花はほぼ終わっている感じで、やはり例年よりも春が早かった。

カタクリの球根を取るには、深めにシャベルを入れる。茎が細いので途中で折らないように慎重に土を崩し、芽から花までを味わう程度の本数を掘り起こす。カタクリの成長はとても遅く、タネから花が咲くまでおおよそ8年かかる。葉っぱだけのものはまだこの先咲く若い株だ。今回はこの2品を天ぷらにして食べてみた。

装備

何も持たずに摘むと球根が取れず損をする。大きなシャベルでごっそりと掘り起こす。周りに他にも山菜があるので入れるものを用意する。バケツや袋、カゴなどを持っていくと便利。足元は特にぬかるみを歩くわけでもないのでシューズで十分。

ユリ科の多年草。北海道から九州まで分布。花は3月から5月にかけてみられる。落葉樹の林床などに群生する。球根から作るデンプンは本物の片栗粉。

カタクリは群生して生えるので、株が多く集まっているところにシャベルを深く入れ、円を描くように深く土を掘り起こす。掘ったところはからなず埋めること。

丸く深く掘り起こした土を、軽く揉むようにほぐす。土の中から茶色の皮をつけた白く細長い球根が出てくる。切らないように注意。

カタクリは花から根まで食べられる。東北では人気の山菜だ。根には球根があり、そこから芽が伸び淡い紫色の花を一輪付ける。根は意外と深く折れやすい。

失敗すると球根がとれてしまう。球根はほんのり甘いので失敗しても球根も取っていく。採集は成長が遅いので味わう程度に。

花も食べるので花の咲いてる株を狙う。根から葉の付け根までが地中。地上部分から見ると簡単に掘れそうだが、折れやすく難しい。

他にもあるよ

 

ヤブレガサ

葉がやぶれた傘のようなのでヤブレガサだ。アクが強くほろ苦い。

ヤブカンゾウ

アクがなくキュッキュッとした歯ごたえがたまらない。

ニリンソウ

葉がトリカブトに似るので注意。味はあまりお勧めできない。

ワラビ

ファンが多くスーパーにも並ぶ。アクが強いのでアク抜きが必要。

ゼンマイ

ワラビ同様シダ類でアク抜きが必要。煮物などに入れて使う。

タラ

山菜の王様。アクはあるが天ぷらは絶品。栽培もされている。

カタクリ食べます!

 

とにかく食べてみてよって人に勧めたくなる味。癖がないので物足りないかもしれないが美味しい。おひたしでも美味いが、今回はタラに合わせてカタクリの天ぷらに挑戦だ。

1.流し水をし、ゴミ・泥を洗い流す。薄く茶色の皮が球根を覆っているので丁寧に取り除く。力を入れると球根が折れるので注意する。枯れた葉は取り除く。

2.カタクリの球根は白くとても綺麗。本来の片栗粉はこの球根から作られていた。水切りをし、キッチンペーパーなどで水分を取り除く。

3.天ぷら粉につける。本当なら半身をつけて色なども楽しむが、細く長いので根と葉と花にちょんちょんとつける。

4. 180度くらいの米油で数本ずつ揚げる。生でも食べられるが、サクサク感も味のうちなので葉をパリッと揚げる感覚で様子を見ながら。

5.球根と葉と花がパリッサクッと揚がれば上出来。一度にたくさん揚げないのがコツ。できれば1本ずつ丁寧に揚げる。

6.油を落とし完成。天ぷらを揚げるのって本当に難しい。料理屋さんのようにはなかなかいかない。今回はサクサク感が出てうまくいった感じだ。一気に揚げず、数本ずつをゆっくり揚げるのがコツなのだ。

タラの芽はライバルが多く、なかなか目をつけていた芽を採ることができないが、なぜか今年は採集できた。この場所はめちゃくちゃ多くタラがあり、今回は脇役なので一番大きな芽を6ついただきました。タラの芽やっぱ美味いわ。

普段山菜などの取ってきて食べるものは、素の味を食べたいのだが、今回は蕎麦をいただいたので蕎麦に合う天ぷらにした。カタクリの根はホクホクで葉と花がパリパリ。味もカタクリのほんのりした甘さがちゃんと出ていた。脇役もかなり美味い。あまりの美味しさにこの後また作りました。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。