【vol.50】第18回 伝統保存食入門

ミンスミート

ミンスミートは日本では今ひとつ馴染みが薄く、食べたことがない、という人も多い。「ミート」と言いながら、実は肉を使っていないジャムの1種だが、スパイス好きな人なら、病みつきになってしまうに違いない。

大人のためのフルーツミックス

ミンスミートは直訳すると「挽き肉」のことなのだが、現在のミンスミートには肉は入っていない。簡単に言うと、スパイスのガッツリ効いたフルーツミックスである。昔は挽き肉をベースにして、果物と砂糖とスパイスを加えて作られていたらしい。砂糖とスパイスを加えて煮込むことで肉の保存効果を高める、日本で言うところの「佃煮」のようなものであったと思っていただきたい。

ミンスミートを使った料理で僕がオススメしたいのは、冬季のハンティングの際の携帯食料だ。トーストしたパンに、厚切りにして少しあぶったベーコンを乗せ、ミンスミートをたっぷり塗ってサンドイッチにする。ベーコンをあぶった際に出る脂もバター代わりに塗るといいだろう。トーストしたパンに挟むのはパンの水分をできるだけ抜きたいからだ。

その意味で、厳寒地の携帯食料にオニギリはオススメしない。水分の多いオニギリは凍って食べられなくなってしまう。

寒いところでは、そこに居るだけで体力を消耗するので、脂肪分と糖分はたっぷり取っても構わないが、ベーコン・ミンスミート・サンドイッチを家で食べるのはカロリー過多かもしれない。美味いのは保証するが、体重増加に関しては自己責任でどうぞ!

【材料】無塩バター50g、ブラウンシュガー100g、クローブパウダー小さじ2、シナモンパウダー小さじ2、ジンジャーパウダー小さじ2、ナツメグパウダー小さじ2、リンゴ200g(皮と種を除いたもの)、オレンジ200g(皮と種を除いたもの)、レーズン50g、サルタナレーズン100g、カレンツ100g、ドライクランベリー50g、オレンジピール50g、レモンピール50g、クルミ100g、ブランデーまたはラム酒150cc

【作り方】
1.無塩バター、ブラウンシュガー、スパイス類(クローブパウダー、シナモンパウダー、ジンジャーパウダー、ナツメグパウダー)を鍋に入れ、火にかけて全体をよく混ぜる。火を強くしてバターを焦がさないこと。
2.皮を剥き、細かく(5mm角以下)切ったリンゴ、皮を剥いて身にだけにしたオレンジを加えて、リンゴが透き通って柔らかくなるまで煮込む。
3.レーズン、サルタナレーズン、カレンツ、ドライクランベリー、オレンジピール、レモンピールを加えてさらに20~30分ほど煮込む。糖分が多いので焦げ付きやすい。鍋底をさらうようにしてかき混ぜ、決して焦がさないこと。
4.火から下ろす前に、細かく砕いたクルミを加えてよく混ぜる。
5.煮沸殺菌したビンに入れて、ラムかブランデーを注いでからフタをする。
6.すぐにでも食べられるが、スパイスが馴染むまでに2~3週間置くのがオススメだ。
7.冷蔵庫で1年持つと言われているらしいが、うちでは家内がアップルタルトなどに入れてガンガン使うので、たいてい3ヶ月以内に食べ切ってしまう。厚切りのハムやポークソテーとの相性も抜群にいい。

僕のレシピでは、ドライフルーツはレーズン(干しブドウ)が主になっているが、マンゴー、パイナップルなど好みのものを加えてもらっても全然構わないし、ナッツ類も、もっと種類が多くてもいい。

バターが溶けたら砂糖とスパイスを手早く混ぜる。バターを焦がさないことが肝心。僕はスパイス好きなのでタップリ使うが、最初は僕のレシピの半量から始めてもいいかも。

レーズン類の大きさに大差はないが、ドライマンゴーやドライパイナップルなども使うならば、あらかじめ細かく切って大きさを揃えておいた方がいいだろう。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。