【vol.49】カワムツをいただきま〜す

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また寒い季節がやってきた。栃木県で生活するようになって4回目の冬、寒いのが嫌いな私は全く慣れずよく4年も続いてるなと感心している。2019年もあと少しで終わってしまう。毎年同じことを言っているけど、振り返るとやり残したことが沢山あり、反省の年末になる。これといったものはあまりないのだが、自然全体が好きなので同じ時期に重なるものはどうしても片方がおろそかになる。

また、生き物に関しては、今年はダメな年だとか波が大きかったりと自然相手はほんとに難しい。しかし、出歩けている幸せは何よりも変えがたいものだ。この歳になると健康が本当に幸せで、動けなくなるまで遊び倒したく思う。

冬のネタはなかなか頭に浮かばない。なぜかというと寒さのせいだ。寒いのが苦手でそんなに遊んでいないからだ。そんなことを思いながら近所の川に出かけ川沿いを散歩していると、小さな川なのに魚がうじゃうじゃ泳いでいる。覗いてみただけで「あ〜カワムツか!」と判断。いつもならなんとも思わないが、今回のネタを探しながら歩いていたのでこれを使って何かできないかと頭をひねった。

淡水魚はほぼほぼ食べてきているが、この手のいわゆる雑魚はほとんど同じ味であまりお勧めできない。こんな雑魚でも美味しく食べる方法はないかと前から考えていた。琵琶湖周辺では、川魚の美味しい佃煮や甘露煮などがあり、ちゃんと生産されている。そこで、今回はこのカワムツを美味しく食べるために、また正月の料理にと、カワムツの甘露煮に挑戦することにした。今までも何回か雑魚で甘露煮を作ってきているが、甘露煮にしてしまえばどんな臭い魚でもそこそこ美味しく食べられる。これは間違いないと早速バガ長を取りに戻り、準備をした。

「とにかく寒い! ほんと苦手だ」独り言を言いながら川に入った。この時期は日の当たる場所には泳ぐ姿が見えるが、岸の茂みや深場に魚は集結している。台風のおかげで、川岸の土がえぐれるように流され魚の隠れる場所ができていた。冬のガサガサは場所さえ外さなければ大漁に獲物を捕まえることが可能だ。

岸が掘れて隠れ家になっているところに網を構えて足で探るようにガサガサ。最初の1網で沢山捕まえることができた。驚くことに全てカワムツ。オイカワが1匹ぐらい入っていてもいいのにと思いながら、バケツにキープした。甘露煮を作るといってもそんなたくさんいらないので、とりあえず遊ぶつもりで網を入れていった。たまにシマドジョウが入るものの、ほぼカワムツオンリー。川に降りて30分、あっという間に数が揃った。

カワムツはおそらく昔はこの辺りにいなかったんじゃないかと思う。アユの放流で近くの那珂川あたりから支流のこの川に入り込み増えていったと思われる。アユの放流はその昔、どんな川でも行われていた。アユのみならさほど問題はなかったのだが、他の雑魚なんかが混ざって色々な種類が入り込み、今までいなかった魚が徐々に増えていった。国内移入種だ。この川もおそらくオイカワの川でカワムツに押され違う場所へと移動したのではないかと思われる。

川の水は冷たいし、空気も風も冷たいけど、こうして出かけて動いていると楽しく寒さを忘れられる。さて、カワムツをさばきに帰るか。

装備

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とにかく冬は寒い。厚着をして、濡れることを想定し上着はレインウェアー。バカ長にバケツ・ガサガサ用の網。水に手を突っ込むこともあるのでグローブも忘れずに。寒さが限界になる前に上がって休むこと。冬は厚手のバカ長(ネオプレーン)がおすすめだ。

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あまり流れのない小川。岸にヨシやススキなどが生えていて、魚が隠れられるような場所を選ぶ。冬は特に深い場所・隠れられるようなところに密集する。

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岸に生えたヨシの根元が洞穴のようになっている場所はゆっくり攻める。奥の奥に魚が隠れている。足で探るように網へ追う。こんな場所にはカワムツだけじゃなく他の魚も隠れる。

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里山の小川なので色々な魚が見られると思いきや、網に入るのは全てカワムツ。たまにビッグサイズの20cm越えが入るのが嬉しい。

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ここだ! というところで一度にこんなに採れると「俺の勘は正しかった!」などとニンマリする。網の中には他にシマドジョウやツチガエルが入った。

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あっという間にバケツは大漁。食べる分だけをバケツに入れ持ち帰るので、大小様々なカワムツの中から、大体同じぐらいの大きさのものをピックアップする。

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蓋つきのバケツに電池式ブクブクを入れ持ち帰る。移動中でも泥吐きをさせ生かして持ち帰る。家についても最低1日は泥吐きさせる。

甘露煮を作ってみる

 

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1.カワムツを美味しく食べたいという理由で甘露煮を選んだ。正月料理の一品として使える。生きたまま泥吐きをさせたカワムツを、大きさを揃え選ぶ。

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2.甘露煮とはいえ苦みやえぐみが残らないように内臓は綺麗に取り除く。頭から尻尾の先まで食べられる甘露煮なのでエラも取り除く。

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3.中火で様子を見ながら裏表焦げ目がつくくらい焼く。

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4.鍋に水を600cc入れ、酒200cc、砂糖大さじ4~5、すりおろし生姜大さじ1を入れて沸騰させる。

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5.沸騰させた鍋に焼いたカワムツを入れ、落し蓋をして中火で20分ほどグツグツさせる。

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6.20分煮込んだら、醤油大さじ3~4杯入れて中火~とろ火で60分煮込む。醤油を入れすぎると辛みが増すので注意。

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7.鍋の中の様子を見ながら進める。醤油が入ると焦げやすくなり、蒸発も早い。

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8.水分がなくなりそうになったら仕上げにみりん大さじ2~3杯を入れ、1~2分煮込んで完成。柔らかく仕上げるには強火は禁物。じわじわと作る。

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雑魚の甘露煮は何度か作っているが、甘露煮ならやや骨の硬いカワムツを頭から食べられる。これを応用すればどんな雑魚でもいけるような気がする。味付けは自己流で何度か作り、感覚で覚えるといいだろう。大変美味しくできました。

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日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。