【vol.49】にわとりのいる暮らし No.28

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10月の半ば、北海道を徒歩旅行中の文祥から、1枚しか持っていないはずの葉書が届いた。小さな字で5日分の日記が記されており、宗谷岬を出発して16日目、まもなく天塩ヒュッテに着く予定とある。おおむね旅は順調に進んでいるが、何かと上手くいかないこともあるようだ。テントの中でヘッドランプを付けて、鹿の脂が染み付いた手で文字を書きつけている様子がありありと浮かんだ。

それからひと月経って、思いがけず2枚目の葉書が来た。ナツが行方不明になって肝を冷やしたりしたが、まもなく日高の山小屋に入れそうだという。そのあと、ふたたびシーンとなった。もしかすると思ったよりも早く旅が終わるのではないかという期待と、このまま永遠に連絡が途絶えるのではという不安が、交互に心の中をよぎった。

北海道の旅の企画を聞いたとき、元気が有り余っている大学生でもあるまいし、と心底呆れたが、チャレンジできるのは今しかないんだろうと諦めた。しかし一家の大黒柱に世捨て人のようになってもらっては、家族は大変困るのである。帰ってきたら、小蕗の古民家の件も、もう一度よく話し合わなくてはならない。まったくもうあの人はと考えると腹が立ってくる。

11月の終わりが近づいた頃、襟裳岬付近を歩いていた服部を見つけた地元の方から連絡がきた。写真をみると、ナツもヒゲモジャの文祥も元気そうだ。ある日ポストに届くハガキもすばらしいが、やっぱりスマホっていうのはすごい文明の利器だなと思ってしまった。数日後、文祥とナツが羽田から横浜まで再び歩いて帰宅し、50日間の旅と留守番は終わった。

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服部家の鶏
「キング」 ♂ すっかり元気になりました。
「チビ」 ♀ 相変わらず美しく、いじわるです。

「プープ」 ♀ 換羽のあと、顔色が悪いです。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 北海道無銭徒歩旅行が終わり、食べまくっています。
「コユキ」 ♀ 『はっとりさんちの狩猟な毎日』の出版が新しい出会いを運んでくれました。

「ショウタロウ」♂ ひとり暮らしになって初めての冬です。
「ゲンジロウ」♂ 妹の家庭教師をやらされています。
「シュウ」♀ 念願の全国中学駅伝大会へ。高校受験は!?

「ナツ」♀ 北海道縦断を終えてたくましくなりましたが、勝手な性格はそのまま。
「ヤマト」♀ よそのお宅で牛乳もらって丸々太っています。